2024年04月18日( 木 )

御注進!閉鎖を勧告します!!~福岡証券取引所(後)

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 福岡証券取引所は、全国4カ所(札幌、東京、名古屋、福岡)ある証券取引所の1つ。1949年の設立以来、地域経済の発展とともにあったが、株取引の電子化により地方証券取引所の取引量は激減。地方市場への単独上場の意味合いが薄れ、東証との重複上場がもはや当たり前となっている。株取引がない証券取引所に存在意義はあるのか。

東証マザーズ1日分>福証1年分

 東証と福証の取引量の差は歴然としている。12月22日における東証一部の出来高は14億8,922万株で売買代金は2兆4,038億400万円。東証二部で出来高3億525万株、売買代金529億1,600万円。東証マザーズで出来高8,764万株、売買代金1,120億8,800万円。JASDAQスタンダードで出来高1億2,458万株、売買代金729億1,900万円。JASDAQグロースで出来高2,225万株、売買代金237億100万円となっている。

 一方の福証は、本則市場とQ-Boardを合せて出来高9万1,800株、売買代金9,868万円。まさに桁違いである。2016年における福証の年間出来高は3,254万株で売買代金172億1,000万円。なんと、福証1年分は、東証マザーズの1日分にもおよばないのだ。

 17年11月の福証重複上場企業114社の取引業況を見てみると、1カ月間まったく取引されていない銘柄は69社にのぼった。半分以上が“動いてない”ということになる。

無力化する肩書

 株式上場のメリットは市場における直接金融で資金調達能力を向上させる点が第一にある。この点において、取引が少ない福証に単独上場することのメリットは乏しい。

 流動性が低い福証における一般株主の多くは株主優待特典が目当て。株式は所有するためもので、売り買いするものではない。流動性の低い株式は、購入して短期で売ると買い手がおらず、損をする可能性が高い。

 以上のことから、福証上場の目的は、「地元経済へのお付き合い」とか「上場企業という肩書を得るため」ともいわれる。後者では、「上場企業と付いていれば、社会的信用力が増し、求人でも就活生への訴求効果が期待できる」という声もある。

 ただし、上場の負担は、取引所の会費といった金銭的なものだけではない。福証単独上場の某企業のIR担当者は、「四半期ごと書類を作成しなければならないため、たいへん苦労しています」とボヤいていた。株取引によって、自社が活性化していれば、IR担当者のモチベーションも上がるだろうが、現状のままでは「何のためにやっているのか」と嘆くのも致し方ない。

 ビッグネームであるトヨタの福証の上場廃止は、そうした名ばかりの上場に疑問符を突き付け、株取引に関心が低い層にも考えさせる契機となる。ブランド効果が期待できなければ、いよいよ福証上場のメリットはなくなってしまう。株式市場としての形骸化による、さらなる銘柄数の減少で惨めな姿をさらす前に、取引所の閉鎖を勧告する。

(了)
【道山 憲一】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:小田原 智一
所在地:福岡市中央区天神2-14-2
設 立:1949年6月
資本金:1億6,800万円
業 種:金融商品取引所
売上高:(17/3)2億4,692万円

 
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