2024年04月19日( 金 )

人の手でのおもてなしがホテルの真価 「フルサービスホテル」の時代再び(前)

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(株)ニューオータニ九州 代表取締役社長 山本 圭介 氏

 急増するインバウンド客、逼迫する客室キャパシティ、そして相次ぐホテル建設計画。福岡市のホテルは大きな変動期にあるといっていい。そんななかで、老舗ホテルであるホテルニューオータニ博多はどう立ち向かっていくのか。宿泊機能に特化したホテルに注目が集まる一方で、クオリティの高いホテルマンによるフルサービスを提供するホテルニューオータニ博多の取り組みについて、山本圭介代表取締役社長に聞いた。

開業40年、節目を迎える2018年

 ――2017年は、ホテルニューオータニ博多にとってはどういう年だったでしょうか。

会員専用のニューオータニクラブラウンジで

 山本代表(以下、山本) 2016年は熊本地震があり、九州全体でインバウンドや国内旅行客が落ち込みました。しかしその後、「ふっこう割」の影響もあって徐々に回復基調にありました。17年は、16年を凌駕する実績を挙げることができました。客室稼働率も70%台を維持できましたしね。客室の単価も伸びました。宴会やレストランについても、非常に順調でした。年末のお節料理やクリスマスケーキ、ディナーショーについては過去最高でしたね。世の中の個人消費も上向いてきたのではないか、と思えるような1年でした。

 そして、2018年はホテルニューオータニ博多の開業40周年という節目の年です。つまり、17年はいわば助走の年として重要な1年と位置付けていました。

 ――では、18年に向けての助走は十分できたということでしょうか。

 山本 まあ、十分とはいかないですね。さらに磨きをかけなければいけません。お客さま1人ひとりにご満足いただくために、従業員1人ひとりのレベルアップをしていく。従業員の福利厚生にも力を入れています。ロッカー室やシャワー室、休憩室などを見直していきます。

 ――お客さまから見えないところもしっかりやっていくということですね。

 山本 今、全国的な傾向として業種を問わず人手不足が叫ばれています。なかでもサービス業はその最たるものです。そんななかですばらしいおもてなしを実現していくためにも、1人ひとりのお客さまにご満足いただくために、1人ひとりの従業員を大事にしていかなければいけません。そうでないと離職率も高くなっていくでしょうし、人材の確保もできないでしょう。そういう時代になったということでしょうね。

 ――サービスを提供する従業員が不満を抱えていたり、つらい思いをしていれば、お客さまによいサービスは提供できないですからね。

 山本 そうです。リッツ・カールトンのモットーのように、紳士淑女であるお客さまをおもてなしする私たちホテルマンも、また紳士淑女でなければいけません。

1室1台無料スマートフォン IT時代の宿泊客サービス

 ――17年、新たに行ったサービスや取り組みには、どういうものがありますか。

 山本 17年7月には、福岡県朝倉市を中心とした九州北部豪雨がありました。大きな被害を出した災害でしたね。社内一同で募金をお送りしましたし、お客さまからも義援金を募りました。また、レストランでは、復興支援のための地産地消のレストランイベントを行いました。春には、宗像の世界遺産応援ということでフェアも行いました。福岡はすばらしい食材の宝庫ですから、お客さまにも喜んでいただきながら、このような支援、応援を行うことができました。

 ――お客さま向けサービスには、どのようなものがありますか。

1室1台、無料貸し出しスマートフォン「handy」

 山本 お客さま向けのものとしては、無料客室スマートフォン「handy」の導入があります。

 ――以前シンガポールに旅行した際に、同様なサービスを目にしました。

 山本 そうです。シンガポールや香港など、6割以上のホテルで導入されています。国内通話と中国、台湾、香港、韓国、タイ、アメリカとの国際通話が無料・無制限。福岡県の観光スポット、グルメ、お土産など、旅先で役立つコンテンツをご覧いただけます。もちろんご自分でアプリをダウンロードしてお使いいただくこともできます。チェックアウト後はデータは完全に消去されます。お客さまにとって非常に利便性の高いサービスです。今後このようなサービスがホテルにとっては必須になってくるのではないでしょうか。ニューオータニのhandyを利用して、ホテル内のレストランのイベント案内なども行っていますから、インバウンドの宿泊客の喫食率向上にも役立っています。

 ――どれくらいのお客さまが利用しているのでしょうか。

 山本 その集計はもうすぐ出ると思いますが、今のところ韓国から来られているお客さまにご利用いただいている例が非常に多いようです。やはり韓国の方はITスキルが非常に高いですね。観光ツールとして非常に有用だと思います。

 福岡のまちなかで自撮りしている外国人観光客は、ほとんどが韓国からの方です。距離的にも一番近いですし、福岡は東京よりも韓国からの流入人口が多いんですよ。いわゆるB級グルメを楽しんでいる方も多いですが、入り口はスマートフォンが主流です。天神パルコの「Oichika」のようなレストラン街や、博多ラーメンのお店にも大勢行列していますね。それに、住吉神社など神社にも多くのほうが訪れます。韓国は儒教社会ですから、感覚的に近いものがあるのでしょうか。

(つづく)
【聞き手・文・構成:深水 央】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:山本 圭介
所在地:福岡市中央区渡辺通1-1-2
設 立:1976年9月
資本金:31億6,000万円
売上高:(17/3連結)60億6,700万円

<プロフィール>
山本 圭介(やまもと・けいすけ)
1954年生まれ。福岡大学卒。1978年にホテルニューオータニに入社し、宿泊部支配人、取締役人事・総務部長、取締役ホテルニューオータニ博多総支配人などを経て2003年6月に代表取締役社長に就任。

 
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