2024年03月30日( 土 )

人の手でのおもてなしがホテルの真価 「フルサービスホテル」の時代再び(後)

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(株)ニューオータニ九州 代表取締役社長 山本 圭介 氏

 急増するインバウンド客、逼迫する客室キャパシティ、そして相次ぐホテル建設計画。福岡市のホテルは大きな変動期にあるといっていい。そんななかで、老舗ホテルであるホテルニューオータニ博多はどう立ち向かっていくのか。宿泊機能に特化したホテルに注目が集まる一方で、クオリティの高いホテルマンによるフルサービスを提供するホテルニューオータニ博多の取り組みについて、山本圭介代表取締役社長に聞いた。

ホテルの原点は安全とプライバシーを守ること

 ――地域経済の活性化に、どのようなかたちで貢献できると考えておられますか。

(株)ニューオータニ九州 山本 圭介 代表取締役社長

 山本 もともと、ニューオータニ博多は地域の要請で誕生したホテルです。40年前、福岡市と地元財界の要請に基づいて、渡辺通再開発計画に参画したものですから。以来40年、福岡の発展とともにニューオータニ博多はありました。

 今後のお話をすると、19年にはラグビーワールドカップがあります。同じく19年4月には、フィギュアスケートの国別対抗戦。そして東京オリンピック後の21年には世界水泳と、国際的なスポーツイベントが目白押しです。01年の世界水泳では、イアン・ソープ擁するオーストラリア代表チームがニューオータニに宿泊され、大変満足していただきましたが、ここでもニューオータニが過去40年積み重ねてきた経験で、国内外のお客さまをもてなし、地域経済に貢献したいと考えています。

 ――近年、福岡のホテル事情が逼迫しているという話題がよく出ます。実際、市内各所にビジネスホテルの建設計画が進んでいます。福岡市における宿泊の需給について、どう考えておられますか。

 山本 福岡市内では、19年までにホテルの客室数が約3,000室増加するという予測があります。これが実現すると、札幌を抜き、東京・大阪についで全国で3位の客室保有数となります。宿泊需要については、たしかに最近も大規模イベントや大学受験などのたびに市内のホテル不足が指摘されますが、直近の指標を見ると従来のような右肩上がりのトレンドは終わり、踊り場に差しかかっているのではないかと考えています。

 ――ハウステンボスの「変なホテル」も、福岡に進出します。ロボットを使って極力マンパワーを減らそうという考え方のようですね。

 山本 面白い試みだとは思います。ですが、人によるフルサービスをセールスポイントにしているニューオータニとは対極にあるホテルですね。一番気になるのがお客さまの安全確保をどうするのかということです。いざ地震や火災が起こった場合に、ロボットのホテルマンでは適切な避難誘導ができるのでしょうか。ホテルはお客さまの安全とプライバシーを守ることを目的にした施設ですから。

 05年に発生した福岡県西方沖地震は、それが試されました。ニューオータニ博多は宿泊客の皆さまの安全確認と避難誘導を滞りなく行った後、ロビーを開放してありったけの椅子をならべ、毛布を運ばせました。3月でしたから、非常に寒かったんですね。その日の夜は、1階にあるカフェ「グリーンハウス」を夜通し開放していました。近隣の皆さまが、不安な夜を過ごさないでいいようにするためです。これは、ニューヨーク大停電でウォルドルフ・アストリアホテルの総支配人が採った対策です。宿泊客の避難誘導はもちろん、近隣の住民や一般の観光客の不安を解消するのがホテルの役割です。

 ――東日本大震災では、東京で「帰宅困難者」が話題となりました。すでに05年にこのような対策をとっておられたんですね。

MICEとインバウンドの時代こそフルサービスホテルの強みが生きる

 ――客室数やホテル数が増えると、やはり過当競争の時代になるということでしょうか。

 山本 ニューオータニ博多は、他のホテルにはない機能を備えたホテルだと考えています。開業以来2つの大宴会場に400室の客室などのハードウェアはもちろんですが、天皇皇后両陛下を始め各国国家元首のおもてなし、大規模な国際コンベンションの開催などの機会をいただいたのは、高いレベルでの接客を実現してきたことを評価していただいたからだと思います。近年は宿泊特化型のホテルが増加していますが、ニューオータニ博多にはこのような宿泊プラスアルファの要望に応えてきた実績があります。福岡市が力を入れるMICEの需要、インバウンド需要、そして多様化する個人のニーズに対応するためにも、今こそ私たちフルサービスのホテルがお客さまの役に立てる時代がきたのだと考えています。

(了)
【聞き手・文・構成:深水 央】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:山本 圭介
所在地:福岡市中央区渡辺通1-1-2
設 立:1976年9月
資本金:31億6,000万円
売上高:(17/3連結)60億6,700万円

<プロフィール>
山本 圭介(やまもと・けいすけ)
1954年生まれ。福岡大学卒。1978年にホテルニューオータニに入社し、宿泊部支配人、取締役人事・総務部長、取締役ホテルニューオータニ博多総支配人などを経て2003年6月に代表取締役社長に就任。

 
(中)

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