2024年04月24日( 水 )

疲弊する地銀~生き残りを賭けて経営統合(中)

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2.福島銀行に業務改善命令

(1)福島県3地銀の経営成績について
 金融再編が進むなか、東日本大震災や人口減少の影響を受けて厳しい経営を余儀なくされていた第二地銀の福島銀行(福島市)は、日銀のマイナス金利政策が追い打ちをかけ、18年3月期決算で7年ぶりに赤字転落したため、金融庁が業務改善命令を出していたことがわかった。
 福島県下には、同行のほかに第一地銀の東邦銀行(福島市)と第二地銀の大東銀行(福島県郡山市)の3行があり、いわゆるオーバーバンキングの地域である。金融庁の業務改善命令には、「経営統合を進めさせるため」の意図が透けて見える。【表1】を見ていただきたい。

この表から見えるもの

◆経常収益(一般企業の売上高)
・福島県地銀3行の経常収益は、前期比▲9億4,600万円の977億9,900万円。東邦銀行が+3億500万円の706億500万円(+0.4%)に対し、福島銀行は▲8億7,900万円の136億1,800万円(▲6.1%)。大東銀行は▲3億7,200万円の135億7,600万円(▲2.7%)となっている。日銀のマイナス金利政策は第二地銀の経常収益に大きな影響を与えているのがわかる。

◆コア業務純益(銀行の本来業務)
・東邦銀行のコア業務純益は前期比+14億円の99億円。福島銀行のコア業務純益は前期比6億5,300万円の11億8,800万円。大東銀行は5億3,100万円の13億1,000万円。3行とも前期を上回っている。

◆経常利益
・東邦銀行および大東銀行は黒字を確保しているものの、福島銀行は前期比▲30億3,200万円の▲13億5,500万円と大幅な赤字を計上している。

◆当期純利益
・東邦銀行は前期比+2億6,200万円の73億3,900万円。大東銀行は前期比▲1億6,400万円の12億9,800万円と黒字を確保。
・一方福島銀行は前期比▲43億8,400万円の▲31億2,000万円となり、経常利益の2倍強の赤字を計上。純資産は前期比▲21億8,100万円の296億100万円となっており、マイナス金利政策がこのまま続くと大きく減損する可能性が高く、厳しい経営状況に陥っていることが読み取れる。

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(2)問われるトップの責任
◆福島銀行は、この赤字の責任を取って日銀出身の森川英治社長は辞任し、後任に同じ福島県の東邦銀行出身で同行子会社である「とうほう証券」の加藤容啓社長が就任することになった。
 赤字の銀行を黒字転換した森川社長の功績は大きいが、日銀出身者でありゼロ金利政策の厳しさは良く知る立場にあるがゆえに、再び赤字転落となったその責任は重いものがある。

◆東邦銀行の北村清士頭取は、決算発表の記者会見で福島銀の頭取人事を「びっくりしたが、組織と組織の話ではない」と経営統合については否定的だったが、「加藤氏の経営手腕は高く評価している」と述べている。はたして金融庁の思惑通りにことは進むことになるのだろうか。

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(つづく)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

 
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