2024年04月19日( 金 )

疲弊する地銀~生き残りを賭けて経営統合(後)

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3.島根銀行に業務改善命令発令を検討

 金融庁は島根銀行(松江市)に、業務改善命令を出すことを検討している。これは近隣の銀行と経営統合を求める布石と見られる。

(1)預貸金計数について
 【表1】を見ていただきたい。

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この表から見えるもの

・山陰地方では山陰合同銀行が寡占的な地位を占めており、島根銀行と経営統合することはなく、近隣地銀(3行)との経営統合が有力と見られている。

(2)経営成績について
 【表2】を見ていただきたい。島根銀行を含む近隣銀行を含む2018年3月期の経営成績の比較表である。

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◆日銀のマイナス金利政策の影響を受けて厳しい経営状況にある地銀ではあるが、全5行とも経常収益・経常利益・当期純利益ともプラスであり、表面的には問題がないように見える。

(3)コア業務純益
 【表3】を見ていただきたい。コア業務純益(単体)=業務純益-国債等債券損益(5勘定尻)であり、コア業務純益は貸し出し業務など銀行の本業のもうけを示す業務純益(営業利益)から、国債売買など一時的な変動要因を除いたものを指す。

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この表から見えるもの

・近隣地銀のコア業務純益はプラスとなっているものの、島根銀行のコア業務純は17年3月期▲103百万円。17年9月期(中間)▲2億5,300万円から18年3月期は▲2億8,100万円改と改善は見られないのがわかる。

~金融庁がなぜ島根銀行に対して業務改善命令を検討することになったのか~
 金融庁が業務改善命令の検討に入ったのは、【表3】の通り、地銀でコア業務純益が赤字の銀行はなく、しかも2期連続で赤字となっていることを重く受け止めたからだと見られる。

その要因を探る

◆島根銀行のコア業務純益が赤字に転落した最大の原因は、昨年1月に完成した本店ビルの建設といわれる。松江駅前近くに立つ地上13階、地下1階の本店ビルの総工事費は約58億円。その減価償却費や新本店での営業開始にともなうシステムコストなどの経費負担が重くのしかかっているという。

◆島根銀行は経営再建に向けて経営体制を見直すことになったが、旧大蔵省出身で頭取と会長をつとめた田頭基典・取締役相談役(77)の存在が大きいといわれる。【表4】を見ていただきたい。

この表から見えるもの

◆島根銀行の田頭基典取締役相談役はいわゆる大蔵省出身のノンキャリからトップに上り詰めた人物である。しかも代表取締役頭取就任から取締役相談役として15年間にわたり「院政」を敷き、頭取を意のままに操ったといわれる。

◆島根県の隣県である山口県の銀行も同様である。田中耕三氏は日立製作所から山口銀行に転籍し、頭取を10年間、相談役15年、計25年の間毎日出勤し、「院政」を敷いて君臨し続けたといわれる。昨年9月特別社友となってその影響力は薄くなったといわれる。田頭氏も今年6月26日の株主総会で非常勤相談役に就任することになっている。

 島根銀行は今こそ、企業統治の透明性を高めて“院政”との批判を招かないよう、店舗の統廃合などを実施し、マイナス金利政策で低下した収益力の立て直しを急げば、その後しかるべき近隣の銀行との生き残りを賭けた経営統合が待っているのではないだろうか。

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(了)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治

 
(中)

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