2024年11月01日( 金 )

本格成長期に入った2次電池産業(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 これまで中国政府は自国企業に有利になるように外国企業には補助金を出さなかったので、韓国企業にとっては忍耐の歳月であった。また、電気自動車分野で一番影響力のあるテスラは、パナソニック社から独占で2次電池を供給してもらっていたので、パナソニックは市場でのシェアを伸ばすことができた。ところが、昨年8月、テスラとパナソニックの独占契約関係が解消され、韓国のLG化学がテスラに2次電池を供給できる道が開かれた。

 いずれにしても、韓国の電池会社3社の世界市場でのシェアは20%にも満たない。昨年1月~9月の市場占有率はLG化学が11%、サムスンSDIが3.5%、SKイノベーションが1.8%で合計16.3%である。中国の最大手CATLのシェアは26.6%、日本のパナソニックは24.6%なので、比較すると、まだまだ「取るに足りない」と言わざるを得ない。しかし、中国の場合、中国政府の支援で、パナソニックの場合、テスラとの独占契約で成長してきたが、その状況も少しずつ変わりつつあるので、今後は予断を許さない。韓国企業の場合、世界各地に生産工場をもっているだけでなく、グローバル自動車メーカーと幅広く契約を結んでいるので、将来の展望は明るい。

 韓国企業の将来展望が明るいという兆しはすでに表れている。韓国電池会社3社の電池の受注残高は200兆ウォンを上回っている。LG化学は19年12月6日、米国GM社と合計2兆7,000億ウォンを投資して電池を生産する合弁会社の設立に合意している。将来GMの電気自動車に電池を供給することにもなり、受注残高は150兆ウォンを超えるようになった。

 サムスンSDIは昨年末の基準で約52兆ウォンの受注残高を計上している。最近BMW社と2021年から10年間4兆ウォンほどの電池を供給する契約も締結し、現在の受注残高は56兆~60兆ウォンではないかと予想される。SKイノベーションも昨年の第一四半期基準で50兆ウォンの受注残高を計上した。SKイノベーションは最近中国EVエナジーと合弁で約10GWh規模の電池生産工場を建設することに合意したので、受注残高はもっと増加すると予想される。

 しかし、韓国企業にとって、明るい展望だけがあるわけではない。市場にはリスク要因も同時にある。今までは完成車メーカーは電池会社から電池の供給を受けてきたが、これからは完成車メーカーが電池の開発に乗り出すという噂もある。電池は電気自動車の全体の30%~40%を占めているコア部品なので、そうなる可能性は十分ある。

 完成車メーカーを圧倒するような技術力がない場合、電池を納品するのは難しくなるだろう。もう1つのリスクは、現在はリチウムイオン電池で競争しているが、全固体電池などのまったく新しい電池が出現することである。

 業界の専門家によると、全固体電池の本格的な普及は2025年あたりになるという。リチウムイオン電池とはまったく違う高性能の次世代電池が登場すると、ゲームのルールが変わり、既存の電池メーカーは競争力を失いかねない。とくに、日本はトヨタなどを中心に全固体電池にかなり力を入れている。市場をもっている中国企業、技術と世界各地に生産拠点を構えている韓国企業、まったく新しい電池技術で次の覇権を狙う日本企業。メモリ半導体市場よりも大きくなることが予想される2次電池市場をめぐって、また日中韓の企業がしのぎを削ることになりそうだ。

(了)

(前)

関連キーワード

関連記事