2024年05月12日( 日 )

電気自動車の普及で期待される次世代パワー半導体(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

パワー半導体とは

    半導体という用語が毎日マスコミを賑わす時代となった。デジタル化が進むなか、私たちが半導体を意識していなくても、半導体は日常生活に欠かせない各種サービスや機能が実現できるようにしてくれている。その半導体の材料は何かというとシリコンである。

 シリコンは地球上に豊富に存在していて、価格が安く、制御がしやすい。シリコンは普段は電気を通さない不導体であるが、シリコンに不純物を加えた後、外部から少しの外圧を加えると、電気を通す導体となる。それで導体と不導体の中間的な性質をもっているという意味で、半導体と呼ばれるようになった。

 ところが、半導体をめぐる競争が激しくなっているなか、半導体のなかでも今後市場が大きく成長することが予想される「パワー半導体」に世界各国から熱い視線が注がれている。「パワー半導体」とは電気自動車や電化製品において電流を変換したり、制御したりするのに使われる半導体のことをいう。

 人間なら1秒間にせいぜい2,3回くらいしかスイッチをオンオフできないが、半導体なら1秒に1,000回以上スイッチのオンオフできるので、細かい制御には半導体が向いているわけだ。ところが、既存のシリコンの半導体は、温度が150度を上回ると、高温に耐えられず、半導体としての機能を失ってしまうという限界があった。

 電気自動車や再生エネルギーがますます普及していくにつれて、高温、高電圧に耐えられる素材が求められるようになった。そのような状況下で、次世代パワー半導体の新素材として、化合物であるSiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)に注目が集まっている。

 SiCは炭素とケイ素を高温で結合させた化合物で、炭化ケイ素とも呼ばれている。普通のシリコンに比べて、高熱と高電圧に耐えられる素材である。新素材のパワー半導体は既存素材の半導体に比べて、約10倍の電圧と数百度の高温に耐えると同時に、厚さは10分の1ほどになるという。

 SiC半導体はどうしても環境的に高温や高電圧にならざるを得ない電気自動車や再生エネルギー市場で主に利用されると予想されている。とくに電気自動車にはシリコンカーバイドが求められるきっかけがあった。それは車載電池システムの変化である。以前は400Vであったが、最近800Vに変わり高電圧となっている。

 システムを高電圧にすると、充電時間が短くなるので、自動車メーカーは一斉に高電圧にシフトしている。そうなると、新素材の需要が増えていくことになる。電気自動車の直流電流を交流に変換してくれるインバータのコア部品も実はパワー半導体である。とくに、SiC基板のパワー半導体は車両の高温に耐えられ、電力損失が少ないことで知られている。

(つづく)

(後)

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