2024年04月16日( 火 )

低炭素で楽しく暮らせるまちづくり~BONJONO(5)

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 2017年、国土交通省が開催した「第1回先進的まちづくりシティコンペ」で、国土交通大臣賞を受賞した北九州市の「みんなの未来区BONJONO(ボン・ジョーノ)」。自衛隊分屯地の跡地開発として始まった城野地区の再開発は、低炭素社会実現のための取り組みや、住民・事業者が自らの手でまちづくりを進めていくというユニークな手法が採られている。BONJONOの取り組みをレポートする。

タウンマネジメントの3つの視点

エコフロントからの眺望。これからも開発が進められていく

 ゼロ・カーボンを基本的なコンセプトとして生まれたまち・BONJONO。その特徴は、ほかにもある。まちを住民や事業者が自らの手で育てる「タウンマネジメント」の手法が採られている点である。

 まちづくりの主役は、言うまでもなく住民だ。住民が暮らしをより良くするために、まちを自らつくりあげていく。そのために、住民は住むと同時に㈳城野ひとまちネットに社員として加入することとなる。城野まちひとネットでは、多世代が将来にわたって安心して住み続けられる持続可能なまちづくりを目標として、「タウンセキュリティ」「グリーンマネジメント」「エネルギーマネジメント」の3つの視点で、仕組みやまちの整備に取り組んでいく。住民や事業者がまちとしての価値観を共有し、まちの魅力の維持・向上させるためには個別に活動するのではなく、まちを束ねる組織が必要という考え方を具現化したものである。

 タウンセキュリティの面では専門家のアドバイスのもと、犯罪発生を抑制するまちのデザインを採用、防犯カメラを設置するなどしている。また、1つの組織でまとめることで、住民や事業者が通学中や放課後の子どもたちを自然と見守ったり、互いに声をかけやすくしたりしやすくなる土壌づくりも考えられている。

 グリーンマネジメントとは、公園の草花や並木道の植栽など、歩いて楽しくなるようなまちづくりの促進を指す。公園の芝生張りや各種のイベントを通じてまちの彩を自ら決め、維持向上させていく取り組みだ。

 エネルギーを賢く使うための取り組みは、前述した通り。エネルギーマネジメントシステムを導入することで、省エネルギー化を目指している。

 このようなまちづくりの基本的な部分を、法人化された組織で取り組むのである。まちを持続的に改善していくための仕組みが採られているのは、大きな特徴といえよう。

 ゼロ・カーボンのまちづくりを基幹コンセプトに、ハード、ソフト両面で住民・事業者が自らの手で維持・改善できる取り組みをするBONJONOは国土交通省が主催した「第1回先進的まちづくりシティコンペ」で国土交通大臣賞を受賞することとなった。住民、事業者、周辺地域が一緒になって環境配慮型のまちづくりを持続的に行う仕組みや、共同編集型のまちづくりというユニークな発想が評価されたものだ。

 都市は、ハードがあるだけでは魅力を維持することはできない。そこに住まう人たちや事業者が協力し合って、持続的に改善できる仕組みをつくったのがBONJONOなのである。暮らしを快適に、楽しくしたい。BONJONOは、その1つの解決策を提示している。将来、この城野地区がどのようなまちになっていくのか、期待を込めて注目していきたい。

(了)
【柳 茂嘉】

 
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