2024年04月25日( 木 )

教育環境の充実により高水準の学研都市へ、優秀な人材の循環がつくり出す飯塚の未来(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

飯塚市長 片峯 誠 氏

 全国や県の平均値(小学校:NRT標準学力検査、中学校:標準学力分析検査の数値をそれぞれ参照)を上回り続伸する飯塚市の小中学校の学力。その実績から「教育先進地域」として注目を浴びるなか、九州屈指の理工系大学である九州工業大学(九工大)や地場企業との協力体制を加速させ、新たな魅力づくりに取り組んでいる。今回、2017年2月に市長に就任した片峯誠氏に話を聞いた。

グローバルに活躍できる人材育成を

 ――まずは飯塚市長ご就任おめでとうございます。就任から3カ月経ちますが、率直な感想をお聞かせください。

飯塚市長 片峯 誠 氏

 片峯 率直な感想としましては、「想像以上に多忙である」ということに尽きます。教育長時代の私の仕事に対する考え方は「目標をいかに素早く達成するか」の「時短」に重きを置いたものでした。市長になってからも同様にトップセールスで早さに重点を置いて動き回ろうと考えておりましたが、市民の皆さまに満足いただけるサービスを提供しようとすれば、サービスの提供速度に加えてサービス内容の充実も必要不可欠です。そのために関係各所でさまざまな意見をうかがいながら計画を進めていきますので、時間はいくらあっても足りない状況です。

 ――より良い市政実現に向け多忙を極める片峯市長が抱負として掲げられたのが「すべては飯塚市民と、その未来のために」です。

 片峯 教育長時代、私は飯塚市における教育に対する価値観を変えたいと強く思いました。飯塚市は炭鉱で栄えた筑豊三都の1つ。炭鉱閉山後はかつてのような盛況は失われ、市の雰囲気は落ち込んでいました。その雰囲気に保護者や教員、子どもたちも引きずられてしまっていたと思います。こうした雰囲気を明るいものへ変えたいと考え、市長就任後、飯塚市共通の目標として認知してもらえればと考え打ち出したのが、「すべては飯塚市民と、その未来のために」です。
 教育長時代にはとくに子どもたちのためにという思いで同様の目標を掲げ、これまでの固定観念に捕われず、子どもたちの未来に向けた取り組みにチャレンジしました。新しい教育が根付くまで長い目で見守ってほしかったので、教職員を始め、保護者や地域の方々にも全面協力をお願いしていました。

 ――教育長時代からの教育に対する思いや姿勢が、今まさに花開こうとしています。

 片峯 飯塚市では「本物志向の教育」をテーマの1つとして学校授業に取り組んでいただいております。「読みの力」をつけるための多層指導モデルMIM(注1)、基本・基礎力を養う「徹底反復学習」、思考・応用力を鍛える「協調学習(注2)」を、市内全小中学校で実施しています(MIMは小学校のみ)。協調学習に関しては東京大学と連携して、飯塚市では6年前から取り組んできましたので、全国的に見ても飯塚市は先進地域と言えるのではないでしょうか。グローバル社会への対応の一環として、各児童(6年生。平成30年度からは5、6年生)に専用のPCを利用して実際に英語を話してもらう、マンツーマン方式のオンライン英会話授業も導入済です。こちらも、全国的に見て進んだ事例と自負しています。

 また、民間企業の力もお借りして、バラエティ豊かな学習内容を実現させています。一例として、今年度からスタートした、ソフトバンクの人型ロボット「Pepper(ペッパー)」を使って論理性や問題解決能力を養うプログラミング教育の導入です。市内14校に95台が導入済です。ロボットとのコミュニケーションを通じて、どういった仕組みで反応しているのかといった、プログラミングに対する理解を深めてもらいたいというのが導入のきっかけです。他にも、ライフイズテック提供によるキャンプ方式のプログラミング教育(以下、ITキャンプ)も取り入れています。

(つづく)
【代 源太朗】

(注1)多層指導モデルMIM
Multilayer Instruction Model(多層指導モデル)の略。通常の学級における「読み」の指導において、個々の子どものニーズに対して指導・支援を3つの段階に分けて行う指導方法。

(注2)協調学習
ある学習課題に対し1人ひとりが自分の考えをもち、学習者同士の対話をとおして新たな気づきを導き出し、理解を深める学習。

<プロフィール>
片峯 誠(かたみね・まこと)
 1956年3月30生まれ。第一薬科大学薬剤学科卒業。飯塚市立飯塚第一中学校教諭、福岡県筑豊教育事務所指導主事、飯塚市立鎮西中学校教頭、穂波町立穂波西中学校校長などを歴任し、2000年5月飯塚市教育委員会教育長就任。17年2月、飯塚市長に就任し、現在に至る。

 
(中)

関連記事