2024年04月26日( 金 )

【法律相談】労働時間管理の重要性~「名ばかり管理職」は通用しない

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岡本 成史 弁護士

 前回、「残業代未払」問題の対策として、時間管理の重要性についてお話をしました。今回は、残業代を請求される場面で問題となる項目の1つとして、「管理監督者」についてお話します。

 「管理監督者」とは、「監督もしくは管理の地位にある者」(労働基準法41条2号)であり、労働時間・休憩・休日に関する労働基準法上の規定の適用を受けません。そのため、事業者側で、「現場監督は現場の責任者であり『管理監督者』なので、残業代の支払対象にならない」とか、「部長、課長、店長は『管理職』であり、『管理監督者』なので、残業代は不要」と主張されるケースがあります。

 しかしながら、会社における管理職が必ずしも労働基準法で、残業代などを必要としない「管理監督者」であるとは限りません。「名ばかり管理職」という言葉を耳にされたことがあるかと思います。マクドナルドの店長が管理監督者か否かという事件などで話題になりましたが、十分な権限もなく、相応の待遇なども与えられていないのに、社員に「管理職」としての地位・肩書を与え、労働基準法の「管理監督者」を装い、残業代の支払いをしないという実態のない管理職のことをいいます。

 そもそも「管理監督者」は、労働条件の決定そのほか労務管理について、経営者と一体的な立場にある者とされており、役職名ではなく、(1)その職務内容、責任と権限、(2)勤務態様などの実態によって判断され、(3)賃金などにおいて一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否かなどについて留意する必要があります。

 具体的には、次のような点を総合的に判断することになります。

(1)「職務内容、責任と権限」について、従業員・アルバイトなどの採用・解雇に関する実質的権限・責任の有無・程度、部下の人事考査への関与の有無・程度、店舗の勤務割表作成や残業命令などの実質的権限・責任の有無

(2)「勤務態様」について、遅刻・早退に対する制裁等不利益取扱いの有無、実質的に労働時間の裁量の有無・程度、部下と同様の勤務態様か否か

(3)「賃金などの待遇」について、基本給・役職手当などによる優遇措置の有無・程度、一般従業員との賃金総額の差異の有無・程度、長時間労働をした場合の時間単価等

 「管理監督者」に該当しない場合には、時間外割増賃金や休日割増賃金の支払が必要となります。また、「管理監督者」に該当したとしても、深夜(22時から翌日5時まで)割増賃金は支払う必要がありますし、長時間労働は健康障害を引き起こす恐れがありますので、留意が必要です。

 労働関係の法律については、なかなか素人では理解しにくい点があります。就業規則の改訂などを通じた制度の導入だけではなく、制度が適正に運用されているかという点も重要ですので、継続的に弁護士に相談して、適正な体制を構築できるようにしてください。

<プロフィール>
岡本 成史(おかもと・しげふみ)弁護士
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。福岡県建築紛争審査会委員、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士 岡本綜合法律事務所

 

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