2024年03月29日( 金 )

外国人技能実習生 安価な労働力か、貴重な人材か(後)

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地場受入機関と受入企業の声

「職場の雰囲気が変わった」 嬉しい声が続々

外国人も日本人もない。同じチームメイトなのだ

 福岡市東区に活動拠点を置き、外国人技能実習生の受入事業を行っているグローバル協同組合(以下、グローバル)は、(株)大濱組を母体とする「おおはまグループ」の1社。同受入事業開始からわずか2年間で、受け入れた実習生は300人を超える。
 大濱組では、20年以上前からインドネシアから実習生を受け入れていた。当時はほかの受入機関から斡旋してもらっていたが、「実際に来日するまで、どのような人材が来るのかわからない」「自分の目で見て選んだ人材を受け入れたほうが実習生も安心感をもつのではないか」―という思いもあった。この思いが、事業開始の原点となった。受入企業としての経験があったからこそ、今の組合が存在するのだ。
 グローバルでは採用後に、現地の実習生の家庭にまで赴き、直接、家族や親族と会って「お子さんをお預かりします」と伝えるようにしている。日本に子どもを送り出す家族も安心だ。現在、組合員の企業経営者に対しても、ありのままを伝える。

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 「仕組みができ上がるまで、最初は大変です。文化も、言葉も違う。それでも、多くの企業で実習生がいきいきと活躍しています。その仕組みづくりまでお手伝いします。どれだけ愛情をもって接するか、それが成功の秘訣です。報道では、実習生の失踪や犯罪がクローズアップされることもありますが、しっかり心が通じ合っていれば、そのようなことは起こりません」(専務理事・福元伸一氏)。

 現在、受入希望をもらって、実際に実習生が来日するまで約半年かかる。企業側から年齢や性格などの要望を聞き、現地で募集をかけ、一次選考で絞り込む。現地での面接や実技試験、体力テスト、IQテストなどの二次選考を経て、採用を決定。その後、来日に向けて日本語学校で勉強。入管での審査が終わると、2週間でビザを発給し、来日の日時を決める。さらに来日後、日本語や文化、マナーのほか、労働法や入管法についての説明など、1カ月間は組合で講習を行う。

 実習制度上、監理する団体が必要となるため、月に最低一度は受入企業に出向き、実習生を巡回指導する。また、3カ月に一度監査を行い、入国管理局へ報告書を上げねばならない。これに加えて、問題が発生すれば、常にその対応に追われる。

 「安価な労働力なのか?」―そのような報道もあるが、実際のところ、日本人を雇用する場合とそれほど費用は変わらない。実習生への給与のほかに、組合費と監理費が月々かかるためだ。斡旋団体のなかには、安い監理費で運営しているところもあるが、それだけ監理は不十分だという。

 一番嬉しいことは、「実習生がきて、職場の雰囲気が変わった」という声が上がることだと福元理事は話す。実習生の家族と対面し、日本で親代わりとなることを約束すると、日本人の社員に対する接し方も変わるという。高齢化が進む現場ではあるが、元気良い挨拶を行う外国人の若者につられて、そっけなかった日本の若者も真面目に挨拶をするようになる。そして、経営者も変わる。「外国人だから特別」ではなく、社員全員を平等に大事にしていく社風が育まれたという声も多い。
 実習生の導入を機に、こうした好循環が生まれている企業も少なくないようだ。

発展的な関係を構築できれば、将来の財産になる

 現在、グローバルには地場企業を中心に、1カ月に2~3社から新規受入の相談がきているという。転機となったのは、熊本地震の発生。復興で人手不足の問題が改めて顕著になった熊本の組合員が多数いるという。
 それでも、建設需要の減少はいつか来る。グローバルでは建設業にとどまらず、実習生を斡旋する職種を、介護・食品加工・農業にも広げていく方針だ。
 「“人を増やさずに生産性の向上を”とはいいますが、それはどの企業も努力しています。これは“乾いたぞうきんを絞る”ようなもので、限界があります。外国人の力を借りるという意味では、実習制度が理想的。実習事業ではあくまで労働者として受け入れてもらえ、労働法に守られているのですから」(福元理事)。
 日本の人口減少と市場縮小は避けられない。誰もがわかってはいることだが、対応を考え先んじて手を打っている企業は多くはない。外国人技能実習生は、もはや安価な労働力ではない。相応の時間と資金をかけてでも育てるべき、貴重な戦力なのだ。

(了)
【東城 洋平/代 源太朗】

【受入企業の声】
(株)ネオテック 代表 安部 二郎 氏
 弊社でも、若い人材が集まらないことに不安を感じていました。そんなとき、大濱代表から声をかけていただき、外国人技能実習生の受け入れに踏み切りました。現在7名のベトナム人を受け入れています。受け入れに際して、不安はありましたが、大濱組には多くの実績があり、現場で実際に実習生が働く姿を見てきたので抵抗感はありませんでした。最初の受け入れで、社内が活気づいたのは今でも印象に残っています。定期的に受け入れることで、実習生には先輩が増えていくので、より一層職場の雰囲気が変わっていきます。今後も、年に3人ずつ受け入れていきたいと考えています。
 グローバルの事務所は近くにあり、問題が起きたときにはすぐに対応してくれて、非常に助かっています。弊社で経験を積んだ卒業生が大濱グループの海外拠点で戦力になってくれると、弊社の未来にもつながると考えています。今の弊社の事業において、間違いなく実習生の存在は不可欠なものです。

 
(後)

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