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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (145)
経済小説
2011年5月13日 07:00

研修制度についても... 研修制度についても、総務の社員が先導して新卒者の入社時研修を組み立ててくれたし、主任・係長に登用された社員については登用の都度、社外研修に派遣することも行なった。より上級の管理職に対しては、順次整備していくこととしていた。
 このように整備していくと、とたんに出てきたのが「まず取締役がきちんと研修を受けてほしい」という社員の声であった。しかし取締役クラスとなると集合研修をするのは容易ではないため、この層は外部コンサルを入れて社内プロジェクトを進捗させることを通じての研修、つまりOJTを実行した。サブリース契約の更改プロジェクトがその最大の事例である。

 またあるときは、黒田社長より「資格手当の充実を通じて、社員の教育を充実してはどうか」という諮問があったので、私は他社の資格手当事情や業務に役立つ各種の資格の難易度を調査した。いくつかの資格については、取得次第、資格手当を上積み支給することとした。
 なおこの際、社員の係長登用は宅建主任者または同など資格を保有していることを条件にしたい旨、私は提案した。しかしこの提案は、営業系の取締役からの時期尚早の声により、資格保有を昇格条件とするのではなく、昇格に当たっては資格取得を優先することを「強く推奨する」ことにとどまった。

 コンプライアンス面について何ら教育が行なわれていなかったため、私は年に1回の年賀朝礼と方針発表の機会を活用し、全員に対するコンプライアンス教育を行なった。
 また稟議制度の見直しも行なった。当社は上場準備に当たり稟議制度を導入し、稟議書と決済伺という書式の運用が定着していた。しかしその様式は、時として江戸時代の傘連判状のように大勢の印鑑が押され、誰が決裁者であり誰が決裁者に対して全面的に責任を負うのかがわかりにくいものだった。このため、稟議書の様式を全面的に見直した。
 この稟議書刷新は、当初混乱を招いた。しかし私は、若干の混乱を招いても社内にはびこる無責任体質を解消し、管理職に管理職らしい責任を持たせることが重要であると信じて実行した。

 以上のように、私は会社の人材育成のためにいろいろな取組みを行なった。
 なかには、成果を感じられたこともあり、逆に効果が感じられなかった施策もあった。しかし、何よりも私が反省しなければならないのは、このような蓄積のほとんどを民事再生により瓦解させてしまったことである......。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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