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これが行ってみたくなる、都市の面白さの真髄!(1)~千葉大学大学院教授・柘植喜冶氏
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2013年8月30日 13:49

 日本の都市デザインの第一人者であり、"キャナルシティ博多"のデザイナー、プロデューサー的役割を担った、千葉大学大学院教授の柘植喜冶氏。同氏は、世界各地の都市計画や施設計画にも参画しているが、「都市」の専門家から見た都市の面白さの真髄とは何か―。日本における都市づくりから、今後の福岡についてまで、同氏に有識者の立場からの話を聞いた。

 ――世界各地の都市計画や施設計画に参画されていますが、先生にとって「都市」とは何でしょうか。

 柘植喜治氏(以下、柘植) 一言で言えば、「複合体」とか「多様性」という概念でしょうか。現在、私はさまざまな都市のプロジェクトに参画しており、大学でも教えています。大学には工学系だけでも、機械やエネルギー、情報、建築などの専門化した分野がたくさんあります。しかし、今「日本、世界の都市問題をどう解決するか」という命題を前にした場合、既存のどの専門分野でも答えを出すことができないのです。いわゆる"学際的"に専門知識を融合して考えていく必要があります。

 都市環境システム学科には、さまざまな専門の先生がいます。そのなかで私は、専門家を集めてチームをつくり、環境とか空間をプロデュースして、都市問題を解決していく教育や研究を行なっています。

 ――都市に、「複合体」とか「多様性」はとても重要ですね。ところで、都市環境システム学科という言葉を初めて知りました。学科は、いつ頃できたのですか。

千葉大学大学院 教授 柘植喜冶 氏 柘植 千葉大学の「都市環境システム学科」はできて約10年になります。都市環境システムの観点から「都市問題」に取り組んでいる大学は、まだ余り多くありません。東大、東工大には都市工学、社会工学系の学科があります。一方、「環境」という冠がつく学科は増えてきました。しかし、その多くは土木系の域を出ていません。
 今、起きている問題、「中心市街地の空洞化」や「駅前シャッター商店街」などでも、建築の問題でないことはもちろん、商業だけの問題でもありません。制度設計そのものを変えていく必要さえあるのです。いろいろな専門家が、知識や知恵を結集し、解決のシナリオ、ストーリーを作成しなければなりません。

 ――先生は、世界の都市計画、施設計画に参画されています。外国の現場ではいかがですか。

 柘植 私はUCLA(カルフォルニア大学)時代を含め、米国に長くおりましたが、米国では、プランニング部門とかプランナーという役職があって、まさに都市環境システム全体に関わる仕事をしています。ときには、ゴミ問題やエネルギー問題が大きな比重を占めることもあります。
 ところが日本では、都市計画の企画・立案の多くを行政が担い、民間からの参加ができていません。
 しかし、米国の私がいたジャーディ・パートナーシップ社では、都市計画、ライフスタイルの創造、空間の創出とか、かなり深く入り込んでデザインをしており、すでにその経験があったことが、私たちのチームが福岡に呼ばれた理由の1つだと思っています。

 ――すでに、かなり進んでいたのですね。ここ10年ぐらいの世界の都市計画の大きな傾向はいかがですか。

 柘植 これまでたしかに、建築や土木などのエキスパートはいましたが、都市計画全体を考えられる人、経験者は多くはありませんでした。しかし、最近は大きな変化が起きています。新興国において大規模な都市開発のニーズがあり、その際には国土開発までやるケースが増えています。

 先日LAで、キャナルシティ博多のランドスケープを担当していただいた会社の人間に会いました。当時も、最先端のランドスケープ(宇宙衛星を使いリモートセンシングをして環境を評価、土地利用を含めた国土計画まで担う)をしていた会社でした。ところが、驚いたことに、エネルギー、情報通信、土木や建築設計、ゼネコン等の会社を吸収合併や企業統合を繰り返して、はるかに巨大化していました。発展途上国の大規模開発を受注するためです。彼らは、2016年のリオデジャネイロのオリンピックの仕事を受注していました。世界の趨勢としては、都市プロジェクトは、より大規模化しています。

 さらに、今、世界中で新幹線(仏TGV、独ICE等)、高速鉄道を中心に、交通系のインフラ整備が進んでいます。これは鉄道を通すだけでなく、都市インフラなど社会基盤整備によって産業を創出し、都市をつくるという考えです。「コンパクトシティ」とか「ニューアーバニズム」と言われているものです。

(つづく)
【金木 亮憲】

| (2) ≫

<プロフィール>
tuge_pr.jpg柘植 喜冶(つげ・きはる)
 1977年多摩美術大学美術学部卒業、カリフォルニア大学(UCLA)大学院修士課程修了、ザ・ジャーディー・パートナーシップ 主任デザイナー、カリフォルニア大学(UCLA)客員教授を経て1996年から現職。主な設計にFashion Island(米国)、キャナルシティ博多(福岡)他。主な受賞にUIA 国際建築学会主催国際設計競技・最優秀賞、米PA誌・プランニング部門・年間最優秀賞、(社)DDA協会主催研究賞'95 大賞・朝日新聞社賞、通商産業省選定「グッドデザイン賞」他。主な著書に「環境をデザインする」(朝倉書店、共著)他。千葉大学大学院工学研究科都市環境システム学科教授。公益社団法人商業施設技術者・団体連合会会長。


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