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これが行ってみたくなる、都市の面白さの真髄!(4)~千葉大学大学院教授・柘植喜冶氏
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2013年9月 9日 07:00

 日本の都市デザインの第一人者であり、"キャナルシティ博多"のデザイナー、プロデューサー的役割を担った、千葉大学大学院教授の柘植喜冶氏。同氏は、世界各地の都市計画や施設計画にも参画しているが、「都市」の専門家から見た都市の面白さの真髄とは何か―。日本における都市づくりから、今後の福岡についてまで、同氏に有識者の立場からの話を聞いた。

 ――「都市環境システム」をデザインし、実践していくうえで、重要なことは何ですか。

 柘植喜治氏(以下、柘植) 私は最近、国外での講演やコンペの機会が急激に増えています。都市づくりで言うと、外国の勢いがすごいのです。新興国に限った話ではありません。たとえばカリフォルニアでは、ロサンゼルスとサクラメントを結ぶ高速鉄道計画があります。韓国では、龍山プロジェクト(YIBD)が総工費3兆円で稼働、さらにインチョン空港の周りで、総面積30k2におよぶ巨大な外国企業誘致、特区建設のプロジェクトが動きつつあります。これらは経済状況や投資環境に左右され破綻するケースもありますが、世界中からデザイナー、建築家が集まり私たち日本人も参画しています。

千葉大学大学院 教授 柘植喜冶 氏 しかし、都市環境システムを考える立場で言いますと、忘れて欲しくない重要なことがあります。それは、いわゆる理想としているハード、ソフトのビル、インフラ、都市環境をつくったとしても、人が幸せになれるかどうかは疑問ということです。先進国は、「物質文明」の行きつく先を経験し、充分そのことはわかっているはずです。その反省を踏まえて、後から来るものに、その知恵を伝えてあげる必要があります。
 韓国では、建築系、デザイン系、環境系等の大学生や精鋭による設計競技が開かれています。大学間競争や教授陣の競争が激しく、国外から審査員を呼ぶのですが、私も大会のテーマ設定と審査をする役目を承りました。学生は皆優秀で素晴らしい作品が多いのですが、先進国として何を満たさなければならないのかの意識に欠け、理解もできていません。

 そこで私は、(1)「低炭素」、(2)「公益性」、(3)「新産業(創出)」、(4)「実空間(ワクワク、ドキドキ体験)」の4つを満たす都市計画の設計をテーマにしました。このなかでCSRやソーシャルビジネスなどの社会性や公益性は、これからの街づくりにはとくに大事です。
 学生たちは"environment friendly"など先端理論を掲げますが、具体策に欠けます。そこで、1つのキーワード「見える化」が出てきます。「どこで電気をつくっているかが見える」(小型風力発電とか、太陽光発電が自宅とかコミュニティにある等)ならば、無駄に使用することなく節約するものです。自分の家も利用する近所の川の水を汚す人はいません。しかし現在、原子力発電所、火力や水力発電所の場所を知っている人はほとんどいないと思います。この自覚を促す「見える化」が大事なのです。

 ――最後に、今回の特集の大きなテーマとして「都市・福岡」があります。この観点から少しコメントをいただけますか。

 柘植 日本の都市は、中央と地方とか、日本と外国とかの境がなくなっていく傾向にあると思います。福岡に限りませんが、日本の都市は外国人にとって、日常活動、ビジネス等のどれをとっても、必ずしも便利ではありません。
 福岡は玄界灘の壱岐や対馬をはさんで大韓民国があり、釜山まで200km、中国の上海市までは850kmで東京より近いのです。その他、東南アジアの近隣主要都市の多くは1,000km圏内にあります。
 福岡は歴史的に見ても、地理的に見ても外国人を受け入れ、相互発展していける土壌は充分あるのです。実は、キャナルシティ博多の企画段階では、外国人にとっても仕事や生活がしやすい都市のシナリオを書いていました。人口減少が進む日本の未来に産業競争力やクオリティ・オブ・ライフの向上を目指すならば、外国との関係を進化させなくてはなりません。福岡にはその実行力があると考えています。

 ――本日はありがとうございました。

(了)
【金木 亮憲】

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<プロフィール>
tuge_pr.jpg柘植 喜冶(つげ・きはる)
 1977年多摩美術大学美術学部卒業、カリフォルニア大学(UCLA)大学院修士課程修了、ザ・ジャーディー・パートナーシップ 主任デザイナー、カリフォルニア大学(UCLA)客員教授を経て1996年から現職。主な設計にFashion Island(米国)、キャナルシティ博多(福岡)他。主な受賞にUIA 国際建築学会主催国際設計競技・最優秀賞、米PA誌・プランニング部門・年間最優秀賞、(社)DDA協会主催研究賞'95 大賞・朝日新聞社賞、通商産業省選定「グッドデザイン賞」他。主な著書に「環境をデザインする」(朝倉書店、共著)他。千葉大学大学院工学研究科都市環境システム学科教授。公益社団法人商業施設技術者・団体連合会会長。


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