ホテル、百貨店、商業施設など、飲食を扱う業者で相次ぐ食品虚偽表示問題。
5日、JR九州ホテルズ(福岡市)では、運営する宮崎県と鹿児島県の2つのホテルで、最長6年にわたりメニュー表示と異なる食材を使っていたことが発覚。6日には、9月に九州初出店で話題にもなったコメダ珈琲店でも、実際はホイップクリームを使用していたにも関わらず、生クリームと表示するなどしていたと発表された。7日には、(株)ホテルオークラでも、13ホテルと関連3社において、使用食材とメニューの表示が異なっている事例があることが判明した。福岡ではバナメイエビを芝海老として料理提供が行なわれていた。
連日、どこかで食品偽装問題が発覚するような事態になっている。ここまで広がってしまったこの問題は、何故起きたのだろうか。
1つは、失われた20年間とも言われるバブル崩壊後からの長いデフレの影響。デフレで販売は伸びない、しかし、そのなかでも利益を残さないといけないという重圧はあったはず。そこで、コスト削減など正しく企業努力を行ない、時代の変化に対応したメニューをつくるといった商品開発などを行なえば、そのデフレは、企業として一皮むけるチャンスとなる。しかし、企業として正しい企業努力は楽な道ではない。その"コスト削減"も、高級食材を謳ったまま安い食材に変えたとしたら、たしかに材料費は大きく抑えられる。安易に単価的なメリットに飛びつき、その麻薬のような旨みを知った業者はやめられなくなってしまったのではないか。
加えて、消費者の心理。こだわりを求める消費者は、普段食べるものとは違う、高級でブランド力のある「特別な素材」を食すことに優越感を感じる。高級食材を謳ったメニューは、それだけでネームバリュー、ブランド価値が上がる。少々値が張ってでも食べたい特別な物だ。その消費者の心理に付け込み、安価な食材にも関わらず偽装表示を行なってしまったのではないか。
今回、偽装の多かった「エビ」。業務用海老の卸価格は、昨年価格が大暴騰したこともあり、今年の価格は昨年の約1.7倍程度と聞かれる。食材の値段は、生産量、水揚量といったそのときの流通量や品質で大きく差が出るため、価格が安定しない。そのために、安い食材に変えてしまったのではないか。
しかし、過去にも、2007年に船場吉兆やミートホープなどの賞味期限切れや産地偽装問題など、「食の安全」が揺らいだ自体は多々あった。ホテルオークラ福岡での表示偽装は1990年の開業当初から行なわれていた。では、なぜ今まで発覚しなかったのだろうか。担当者は表示の妥当性をチェックする体制が確立されていなかったこと、業界全体としてバナメイエビを芝海老とする通例を疑っていなかったことを理由に挙げた。
つまり、メニュー表示の重要性の認識の欠如ということになる。オークラだけでなく、偽装が発覚した会社は、他社の問題を受けて「実はうちも」というかたちで発覚した。
今まで時代の変化に対応せず何も疑っていなかったことや、これぐらい大丈夫だと高をくくっていたツケが回ってきたと言えるのではないだろうか。
今後、消費者の目は一層厳しくなる。そこできちんと信頼を取り戻すことができるかどうかは、今後の企業の対応と努力にかかっている。
<日刊マックス流通のご案内>
日刊マックス流通は沖縄を除く九州地区の食品スーパー、ドラッグストア、ディスカウントストアなどの小売業の情報を、土日祝日を除く毎日タイムリーに配信しています。現在、1カ月間に限り、無料で配信させていただきます。無料試読希望者は、下記のメールフォームでお申し込み下さい。
※記事へのご意見はこちら