<ジャパネットたかたはオムニチャンネル戦略を強化>
今や通販企業の代表格となったジャパネットたかた。この春からは通販カタログで「AR」を採用した。これはあらかじめ専用アプリをダウンロードしたスマートフォンやタブレットPCで、チラシやカタログを撮影すると、動画や詳細情報が視聴できるというものだ。
チラシやカタログでは商品スペックを詳細に伝えることはできるが、実際の使用法や効果まで伝えるにはテレビに適わない。そこでARを使うことで、お客に動画を見せて実際に商品を使うときの状況をよりはっきり認知させていくのである。
8月に同社を取材した時、髙田明社長は「テレビにしてもチラシにしても、見ている人にその商品がどんなものか、どう使うかが伝わらなかったら、決して商品は買っていただけません」と語ったが、その意味でARは、お客に商品を購入してもらうためのさらなる精度アップと言えるだろう。
それは販売チャンネルを別個に使うのではなく、統合するオムニチャンネル・リテイリングに踏み出したことでもある。
これからは百貨店やデベロッパーにもオムニチャンネル戦略は不可欠だ。まずお客に来店してもらうこと。ただ、それでは「実店舗で見て、ネットで購入する」という購買行動になるかもしれない。
<ネットで見て、お店で買ってもらう大切さ>
しかし、今年50周年を迎えたファッション専門店「フカヤ」の林宏社長は、「ネットで見て、お店で買ってもらう」手法に手応えをもつ。通販とブランドが競合しても、店舗での「見せ方や接客で差別化できているから」との自信の表れからだ。
どちらにしても、眠ってる顧客を呼び覚まし、新規顧客も開拓する。そのツールとしてならショールーミングアプリは有効である。
二つ目は、来店客数に対する買い上げ客数率を上げること。それには購入した客とそうでない客、商品を手にしても棚に戻す客、客が滞留するホットスポット、滞留しないクールスポット、そのための販促手法(POPなどの掲示)など、検討すべき項目は多大にある。
米国ではビルインにWebカメラを設置し、その映像からお客の行動や買い物のパターンを分析。さらにそれをもとに売場のレイアウト変更や品揃えの改変が行われる。日本でもブランドの入れ替え前に、ディーラーヘルプとして検討することも重要だろう。
三つ目は、来店して商品を購入したお客をその店の「支持者」にまで上げること。重要なのは「あの店で買い物するのが楽しい」「あのスタッフと会話するとなぜか買ってしまう」という体験を提供できるかである。
実店舗でスタッフを通じての楽しい体験がリピーターを生み、それがSNSを通して広げることが重要なのだ。フカヤの林社長が語る「上品で上質な商品を、社員がきちんと接客して販売する」は、裏を返せばブランド頼みに走ると、競争激化の波に飲み込まれるという意味にも解釈できる。
そのために百貨店やデベロッパーは、何をすべきか。まずはテナントの販売力向上や接客のレベルアップを進めるのが先決だ。時代は実店舗で売り切れるところが、Eコマースでも勝つという構造に移っている。百貨店やデベロッパーにはそのための戦略が求められるのである。オムニチャンネル・リテイリングは、販路が幾重にも広がる時代において、流通業界が立ち返るべき「顧客創造」とも言えるのである。
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