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2014年の日本はこうなる(後)~スリーネーションズリサーチ(株)代表取締役・植草一秀氏
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2014年2月 6日 07:00

<為替と株価のデカップリング>
 他方、2013年の日本経済においては米国発のドル高・円安が大きな影響を与えた。当然のことながら、米国経済を軸とする海外動向の影響を考慮する必要がある。

 米国では1月までにバーナンキFRB議長が退任し、イエレン副議長が議長に就任する。13年5月以降、米国金融緩和政策の縮小が大きな関心事になってきたが、ついに、12年12月、FRBは金融緩和縮小に着手した。
 しかし、その規模が極めて軽微であったために、株式市場はこれを好感して高値を更新した。為替市場ではドル高が維持された。このまま14年、ドル高、米株高が持続するならば、日本においても、円安・株高傾向が維持される可能性が浮上することになる。

 しかし、手放しの楽観は禁物である。NYダウのPER=株価収益率は15倍程度で、現在の米株価にバブルのリスクは乏しい。株価大暴落のリスクは限定的であると思われる。しかし、09年3月以降の株価上昇波動のリズムを考えると、近い将来に、ある程度の調整局面を迎える確率は低くないと思われる。

スリーネーションズリサーチ(株)代表取締役・植草一秀氏 また、金融政策が緩和縮小に転じる場合、株価が調整局面を迎えない確率も低い。日本では89年5月に公定歩合引き上げが実施されたが、株価下落が始動したのは90年初だった。株価下落始動までに一定のタイムラグがあった。米国株価の調整が始動するまでに、ある程度のタイムラグが生じるのかも知れないが、早晩、ある程度の調整が生じる可能性は高いと考えておくべきだ。
 米国金利の上昇傾向が維持される場合、円ドルレートは円安・ドル高傾向を維持しやすいことになる。その場合、問題になるのは日本の株価だ。近年の関係では、円安は株高であるから、円安持続なら日本株価上昇ということになる。
 しかし、橋本政権が消費税増税を決定、実施した96~98年にかけては、円安持続のなかで日本株価が下落した。為替と株価のデカップリング(分離)が生じたのである。14年は、円安なのに株価下落という関係が再現される可能性がある点に留意すべきだ。 

 また、すでに世界第2位の経済大国の地位に上り詰めた中国だが、ドル高は中国経済にとっての大きな障害になる。中国人民元は基本的に米ドルにリンクしており、米ドルが対円で上昇する局面では、中国人民元が対円で上昇する。13年に中国経済が底入れできなかった大きな要因は中国人民元の対日本円での上昇だった。同じリスクが14年にも生まれる可能性が存在する。

<驕れる安倍政権の行く末>
 安倍政権与党は衆参両院で多数議席を確保しているが、推進する政策が主権者国民の賛意を得ているとは言い難い。国政選挙の際に、意図的に重要争点についての論議が封印された。アベノミクスだの、ねじれだのという、本筋から外れた論点がクローズアップされて選挙が行なわれ、安倍政権与党が多数議席を確保したに過ぎないのである。
 麻生太郎元首相が「ナチスの手口に学ぶべきだ」と口をすべらせたが、安倍政権の手法は、国会での多数議席を獲得したことを大義名分に、主権者国民多数の賛同を得ていない重要決定を押し通してしまおうとするものであるように思われる。その片鱗は、すでに特定秘密保護法制定にはっきりと表れた。

 2016年の参院選まで、衆参両院の大規模な国政選挙が行なわれない可能性が高まっている。この2年半の空白期に、安倍政権が「数の論理」を振りかざして、さまざまな重要問題について、主権者の賛同を得ない路線を確定していってしまうリスクが増大している。私が「アベノリスク」だとして警告してきた事象が、現実のものになる可能性が高まっている。原発再稼働、TPP参加、消費税大増税大不況、沖縄基地建設強行などの問題がなし崩しで推進されるリスクは大きい。
 こうした政治の暴走にブレーキがかかることが日本政治、日本経済にとって望ましいことだと思われるが、その契機になり得るのが、4月の消費税増税後の経済変調である。
 沖縄では、普天間の県外移設という県民の総意を無視して辺野古基地建設を強行しようとすれば、文字通り流血の惨事も生じかねない。原発再稼働に反対する国民の数は、依然として膨大である。選挙公約を踏みにじってのTPP参加は、多くの国民の怒りを招く。特定秘密保護法を現代版治安維持法であると糾弾する有識者の警告には、極めて重い意味が含まれている。

 安倍首相は平清盛同様の我が世の春を謳歌しているように見えるが、『平家物語』には、「驕れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし」とある。主権者の意思を踏まえぬ政権の暴走は長続きしない。2014年の日本は大きな紆余曲折が見込まれるが、その紆余曲折を経て、新しい希望の光が差し込むことを期待したい。

(了)

≪ (中) | 

<プロフィール>
uekusa_pr.jpg植草 一秀(うえくさ・かずひで)
1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)=TRI代表取締役。金融市場の最前線でエコノミストとして活躍後、金融論・経済政策論および政治経済学の研究に移行。現在は会員制のTRIレポート『金利・為替・株価特報』を発行し、内外政治経済金融市場分析を提示。予測制度の高さで高い評価を得ている。また、政治ブログおよびメルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。


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