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北九州市が掲げる新成長戦略、市制100周年に向けて挑む(前)~北九州市長 北橋健治氏
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2014年2月 7日 12:10

 2013年2月に市制50周年を迎えた北九州市。北橋健治市長の下、「環境先進都市」を掲げて歩みを進め、10月には「OECD(経済協力開発機構)グリーンシティ・プログラム北九州レポート(日本語版)」によって、その取り組みが世界に紹介された。次の50年を臨む最初の年に、北橋市長はいかなる指針を示すのか。

(聞き手:田口 芳州)

<2013年を振り返る 高まる「シビックプライド」>
 ――まずは、昨年(2013年)を振り返り、北九州市にとって印象的な出来事や総括といったものからお聞きしたいと思います。

 北橋健治氏(以下、北橋) やはり、市制50周年という節目の年を迎えたことが、何よりも大きな出来事でした。約7万5,000人が参加した「誕生祭」に始まり、市民の環境力の象徴であり将来を担う子どもたちの夢や希望へとつながる「市民太陽光発電所」、さらにはスポーツ・文化・芸術の各種イベントなど、多彩な記念事業で北九州市が盛り上がった1年だったと思います。

 ――行政ばかりでなく、市民の間でも気運の盛り上がりが見られました。

 北橋 市民の皆さまが自ら企画・実施する50周年記念イベントに対し、公募によって経費の補助を行なったのですが、充実した内容の企画が非常に多かったように思います。市としても、急遽、採択数を増やしたほどです。さまざまな記念事業の実施を通じて、多くの市民が北九州市の歴史や文化に改めて感銘を受けたのではないでしょうか。こうした「シビックプライド」の高まりこそが、次の100周年に向けて、人や企業の集まる元気なまちづくりの原動力になってくれるはずです。

 ――歴史という意味では、近代日本の「ものづくり」は、このまちから始まったと言っても過言ではありません。世界遺産の登録に向けて再び脚光を浴びつつありますし、感慨もひとしおですね。

北九州市長 北橋健治氏 北橋 先月末に政府がユネスコに推薦した「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」には、日本がものづくり大国となる礎を築いた遺産群が並んでいます。これは、幕末から明治期の重工業分野、とりわけ「製鉄・鉄鋼」「造船」「石炭」の急速な産業化の道程を表したもので、北九州市からは、旧官営八幡製鐵所関連施設がリストに挙がりました。登録までに多くの壁があることは承知していますが、登録されれば観光資源のみならず市民の誇りともなります。2015年度の登録を目指して、関係自治体とも連携しているところです。

<「課題先進国」日本 北九州市の現状とは>
 ――次の100周年に向けた最初の年です。北九州市の未来を語る前提として、我が国のおかれた現状をどのように捉えていますか。

 北橋 国連が2010年に推計したところ、世界の人口はアジア・アフリカを中心に大幅に増加し、2050年には90億人を超えるとされています。なかでも、インド、インドネシア、ベトナムなどのアジア諸国の人口増加は非常に大きく、アジア開発銀行の調査では、2050年には、世界総生産の52%をアジア諸国が占める見通しです。こうした人口増加は、資源、食糧、環境問題といった諸問題を生み出すでしょうが、これらの分野における新たなビジネスの拡大も予想されます。もちろん発展で先んじた我が国は、そうした人口増加は見込めません。むしろ、いずれ世界の国々が直面することになる少子高齢化、資源・エネルギー問題などに真っ先に取り組まざるを得ない「課題先進国」の立場に置かれていると言えるでしょう。

 ――他方で、北九州市の現状をどのように把握・分析されますか。

 北橋 大きく分けて、経済、少子・高齢化、安心安全なまちづくりという3つの課題を抱えています。まず経済状況に関しては、昨年から円高の修正など経済情勢に明るい兆しが見えてきましたが、リーマン・ショックによる08年秋以降の急激な景気後退に加えて、11年10月に1ドル=75円32銭の戦後最高値を更新するような歴史的な円高により、製造業をはじめとした本市産業は長らく苦境に立たされてきました。こうしたなかで、アジアをはじめとするグローバル需要を積極的に取り組み、地域経済の活性化を図ることが、喫緊の課題です。
 また、超高齢・少子化が急速に進行しています。本市においても出生数がピークの1970年の2万1,003人から、13年には8,133人へと減少する一方で、死亡数は70年の6,416人から13年には1万714人と増加しているのが現状です。13年度市民意識調査における「市政要望」のなかでも「高齢化社会対策」が第1位、「子育て支援の推進」が第3位、「学校教育の充実」が第6位と高い順位を占めており、少子・高齢化社会へ対応した施策の充実が市政の最重要課題の1つとなっています。
 最後に「安全・安心なまちづくり」ですが、市民の心豊かで快適な暮らしはもとより、都市のイメ―ジ、賑わいづくり、企業立地、投資拡大など、産業振興にも影響を与え、ひいては定住人口にも影響をおよぼします。あらゆる課題を包括する極めて重要な課題であるとの認識です。

<北九州市の新成長戦略 担うべき責任と役割>
 ――世界と日本、そして北九州市を取り巻く環境のなかで、このまちの未来をどのように位置付けるのかが問われています。

kitakyu_siyakusyo.jpg 北橋 我が国が抱える諸課題に向き合い、世界に先駆けて解決策を示すことが、新たな成長分野を切り開くことにつながると考えています。本市には、産業都市として培った「ものづくり」の技術、公害の克服を通じて得た環境関連技術や豊かな人材、エコタウンやスマートコミュニティなどの環境分野での最先端の取り組みがあります。海外との関係でも、アジア諸都市における環境国際協力の実績や、KITA(北九州国際技術協力協会)による人材育成などを通じて、諸外国と緊密な信頼関係を築いてきました。こうした強みを活かして我が国が向き合う諸課題の解決策を示すことが、北九州市が負うべき責任と役割ではないでしょうか。

 ――そうした理念を元に策定されたのが北九州市の「新成長戦略」ですね。

 北橋 昨年の市制50周年という記念すべき年に、今後の産業振興や雇用創出のあり方を示した「北九州市新成長戦略」をスタートさせました。産業面での主な目標として、3年間で新規雇用8,000人の創出、2020年における市内総生産の4兆円への拡大、市民所得について政令指定都市の下位から中位への引き上げを掲げ、アジアの中核産業都市を目指す方針を掲げています。目標を達成するために、行政の縦割りの弊害をなくし、地元企業の課題に対応するための地元企業支援本部をつくるなど、5つの方向性と18のリーディングプロジェクトを明記しました。

 ――多岐にわたる内容でしょうが、産業育成に関する具体策をいくつかご説明ください。

 北橋 たとえば、東九州自動車道の整備に合わせ、北九州空港を西日本地域における航空物流の拠点化とし、14年度には滑走路延長を含めた機能拡充に向けた戦略を策定する予定です。着々と進む東九州道の沿線には、さまざまな工業製品やすばらしい農産物などがありますので、北九州空港の航空貨物拠点化には大きな可能性を感じています。
 さらには、ロボットテクノロジーを活用した地元中小企業のものづくり力の強化に取り組むため、ロボットの普及を目指した「産業用ロボット導入支援センター」を発足させています。今年4月からは、工業用水道料金が政令市で一番安い料金に値下げされますし、こうした諸策によって地元企業の活性化を支援し、新規企業誘致の促進を図る方針です。

(つづく)
【田口 芳州】

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2014年2月 7日 14:20
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