2024年04月27日( 土 )

劇団わらび座が育む「あきた芸術村」は滞在型リゾート(前)

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(株)わらび座

 東京からやってきた劇団わらび座が、秋田に根を下ろして63年。劇場を中心に温泉ホテル、地ビール工場を併設した飲食施設、農園や木工体験施設まで備えた総合リゾート「あきた芸術村」(2016年4月、「たざわこ芸術村」から改称)が誕生して20年目を迎えた。劇団としては確固たる評価を得ていたわらび座が展開した、滞在型リゾートビジネス。地域に深く根づいたわらび座ならではのビジネスのあり方に触れた。

山深い秋田にある「劇団運営」総合リゾート

warabiza5 秋田空港から車で80分ほど。林や田畑の間を抜けるドライブを楽しむと、「あきた芸術村」が見えてくる。近隣には国の重要伝統的建造物群保存地区に指定され、全国的に有名な武家屋敷群がある角館や、日本で最も深く、その湖水の美しさで知られる田沢湖がある。冬の寒さは厳しいが、遅い春がやってくれば風光明媚な土地である。

 あきた芸術村は、わらび座の常設劇場「わらび劇場」を中心に据えた総合リゾートである。芸術村では、秋田県内外から老若男女が観光バスで乗り付け、演劇を楽しみ、地元の食材をふんだんに使った料理に舌鼓を打ち、温泉に浸かって最高の休日を過ごしている姿を見ることができる。

 では、村内の施設を紹介しよう。
 まずは芸術村の中心、わらび劇場。客席数は710席、竣工は1974年。全国のわらび座ファンの力を集めて建設された、わらび座の常打ち小屋である。舞台は観客席よりも広く、天井も非常に高い。花道や合唱隊ステージなどの設備も充実しており、さまざまな形態の演劇に対応できる。上演する劇に合わせてステージの床面を塗り替えるなど、ダイナミックな対応ができるのも劇団が自前で持っている劇場ならではの利点だ。

 このほか、定員150名で、演劇やワークショップなども行う小劇場、稽古場、伝統芸能の研究・保存活動を行うデジタルアートファクトリー、(一財)民族芸術研究所がある。また若い俳優やスタッフが暮らす寮や、大道具・小道具・衣装担当スタッフが作業を行う作業棟、企業内保育所など、芸術村の敷地内で演劇に必要なほぼすべての要素を自給自足できる体制になっている。

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 次に目を引くのが、わらび劇場のすぐ隣にある「田沢湖ビールレストラン」。併設のビールブルワリーで作られる「田沢湖ビール」は、数々の国際的なビールコンペティションで世界一の評価を獲得している名品ぞろいだ。現在秋田市と仙台市に直営店を経営し、さらなる販路拡大を模索している。

 観劇を楽しみ、食事とビールを満喫した旅行客を迎えるのが温泉ホテル「温泉ゆぽぽ」(92年開業。定員250名、客室数62室)だ。一番の売り物は、やはり温泉。敷地内で温泉が出たことが、芸術村構想の原動力になったという。大浴場には、摂氏36度で湧出するぬるめの源泉にそのまま浸かることができる浴槽も用意されている。

 また、「エコニコ農園」は農薬不使用、微生物発酵肥料のブルーベリー栽培を行っている。特徴は通常では考えられないほど大きな果実を、手作業で徹底した選果を行うことで高品質なブルーベリーを出荷していること。また近隣の農家とも協業している。収穫したブルーベリー、ラズベリーを使った手作りジャムも好評だ。

 「森林工芸館」では、ナラ材を使ったオーダーメイド家具の製造販売のほか、家族連れを対象に手作り木工体験教室も開催している。

(つづく)
【深水 央】

※本記事は2017年1月6日にNetIB-Newsで掲載したものです。

<COMPANY INFORMATION>
代 表:山川 龍巳
所在地:秋田県仙北市田沢湖卒田字早稲田430
設 立:1971年3月
資本金:4,900万円
売上高:(16/3)18億7,000万円

 
(後)

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