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2017年04月18日 10:39

トランプ・習近平首脳会談の裏で加熱する種子争奪戦争(前)

国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 日本では全く報道されていないが、4月26日は「国際種子の日(International Seeds Day、略してISD)」と言われている。世界的に異常気象や人口増加の流れが加速しており、食糧問題が深刻化するようになった。この食糧危機を克服する上で最も有効な手立てとして注目を集めているのが、生産量が飛躍的に伸び、病害虫にも強く、少ない水でも収穫が期待できる遺伝子組換え(GM)種子である。こうした新しい種子への関心を高めようとして設立されたのが、この記念日に他ならない。4月22日は「地球の日(Earth Day)」として定着しているが、2004年から始まった「種子の日」はまだまだ認知度は低いままだ。

 この種の遺伝子組換え種子を長年に渡り研究開発し市場に投入してきた会社は欧米に多い。中でもモンサントはアメリカを代表するアグリビジネス企業であるが、現在も戦闘状況が継続しているイラクやアフガニスタンを舞台にし、新たな種子戦争に参戦しているのである。もっと直截に言えば、イラクやアフガニスタンの農民が育ててきた穀物や野菜の種子を使えないようにし、モンサントが開発した種子に全て置き換えさせようとする試みを進めているのである。

 実はアメリカ軍は軍事戦略の一環として、これら諸国の農業の在り方を根底から変えようとしている。イラクでもアフガニスタンでも法律を変えさせ、アメリカが提供する種子を使わざるを得ない状況に追いやっているほどだ。言い換えれば、伝統的な土着の種子を一掃し、アメリカの種子メーカーが開発した遺伝子組換え作物を全面的に導入しようとする計画が静かに広がっているのである。
 結果的にイラクでもアフガニスタンでも農民たちはアメリカから提供を受けた遺伝子組換えの種子を採用するようになっている。当初は無償だが、一定期間を過ぎれば貧しい農民たちは高いお金を払い、時には借金をしてまでアメリカ産の種子を買わざるを得なくなる。なぜなら、これらF1と呼ばれる遺伝子組換えの種子は一回限りしか実を結ばないように遺伝子の操作が行われているからである。

 例えば、アフガニスタンのケースを取り上げてみよう。アメリカ軍の特殊部隊は民生部門を立ち上げ、アフガニスタンの市民や農民に対する職業訓練や雇用の機会を提供している。アフガニスタンの農民の間では芥子の実の栽培が盛んであった。いわゆる麻薬の原料である。しかし、これはまわりまわってアメリカに持ち込まれ、アメリカ社会を内部から腐らせる原因にもなっている。そこでアメリカの占領軍は、アフガニスタンにおける芥子の実の栽培をやめさせるためにも、穀物栽培に転換するように教育や必要な援助を行うことになったのである。

 アメリカ軍はそうした目的のために各地に農業訓練センターを立ち上げた。実際には国際援助庁(USAID)がこうした施設の運営にあたっている。とは言え、日常的な業務はアメリカのコンサル会社ケモニクスが担当。同社は1975年にアメリカの首都ワシントンで設立された。それ以来、USAIDを主たる顧客としてアメリカが海外援助を行っている国々に相次いで進出し、インフラ整備や農業関連プロジェクトをビジネスとしてきた。同社のドゥレイマン社長は「我々はアフガニスタンにおいて、農業ルネッサンスをもたらしつつある」と胸を張る。

 あまり知られていないが、アフガニスタンは30年前には農業の輸出国であった。アメリカ軍はアフガニスタンへの侵攻に際し、「2007年までには同国が再び食糧に関して自給自足のできる体制に引き上げる」とうたっていた。しかし、今日の状況を見る限り、食糧の自給自足は「絵にかいた餅」に終わっている。
 その背景には戦争後の復興計画が進んではいるものの、実際にその恩恵を被っているのは地元の農民や市民ではなくケモニクスに代表されるようなアメリカの援助ビジネスに携わっている企業が中心となっているからだ。いずれにせよアフガニスタンの農業を復興させるために最も重要な資源は種子である。

 2002年、アメリカとオーストラリア政府が資金を提供し、34の組織が協力し「国際農業リサーチ研究グループ」が誕生した。そしてこのグループの指導を受ける形で「アフガニスタンの農業復興のための未来の収穫コンソーシアム」と呼ばれる組織も旗揚げした。何と、その主たる活動はアフガニスタンの農民たちが長年にわたり育ててきた穀物の種子を捨てさせ新たにアメリカが開発した種子を広めることであった。

(つづく)

<プロフィール>
hamada_prf浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。

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