2024年05月05日( 日 )

カードローンに規制~九州地銀(18行)にも大きな影響が(前)

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 都銀や地銀など国内の銀行が個人に無担保でお金を貸すカードローンが、再び大きな社会問題となっている。

 かつて消費者金融が派手なテレビコマーシャルを大々的に流して安易な借り入れをあおった結果、多重債務者問題を引き起こし大きな社会問題となった。
 そのため2006年12月13日、国会で改正貸金業法が全会一致で成立し、10年6月18日に完全施行された。改正法では貸金業からの借入を年収の3分の1までに制限する総量規制を導入したため、消費者金融会社の貸出は激減し、業者の経営破綻も相次いだ。今も法律事務所は消費者金融への過払金の相談会開催をテレビコマーシャルで流しており、その傷跡が深いのが分かる。
 この過程で、銀行は消費者金融と比べて顧客の立場に立った審査体制が整っているということで総量規制の対象から外されていたことが幸いし、金利の取れるカードローンを積極的に取り組むことができたのだ。

 日銀による一連の金融緩和策で、銀行はこれまで主力だった法人融資や住宅ローンの金利水準は1%以下まで低下し、利ザヤを稼げなくなってきた。
 そこで銀行は個人ローン市場を重点分野と位置づけ積極的に融資を推進。日銀の統計では、銀行カードローンの残高は今年6月末時点で5兆6,793億円となり、改正貸金業法が完全施行された10年6月の2倍近くに膨らんでいるといわれる。
 銀行にとっては「総量規制の対象外」であることから、「年収証明書不要」「即日融資」などと借り入れ意欲を過度に刺激する宣伝。カードローンは貸出が小口ながらも2桁の金利で、魅力的な収益源となったからだ。

 日銀の低金利政策にあえぐ金融機関の現状を静観していた金融庁だったが、ここにきて銀行が債務保証をする消費者金融に審査を依存していることなどを問題視。過剰な融資が横行すれば、多重債務者の増加を招きかねないとして改善を求める姿勢に方針転換。

 そのため全国銀行協会(全銀協)の会員行は、10月から毎月末の融資残高をウェブサイトで公表し、来年1月からは個人向けカードローンなどの新規貸出の即日融資を取りやめる方針を打ち出している。また家族からの申し出で、新規貸出ができないようにする「貸付自粛制度」の導入も検討するとしている。銀行の一連の取り組みは、事前に自主規制を打ち出して批判をかわす狙いもあるとみられているが、銀行にとっては大きな収益源を失うことになるのも事実だ。

 その矛先は、いつまでも実現不可能な「2%の物価目標」を掲げる黒田日銀総裁の低金利政策に向けられるのではないだろうか。銀行業界全体が『もううんざり』と大合唱する日は、そんなに遠くないのかもしれない。

(つづく)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

 
(後)

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