2024年05月06日( 月 )

「立憲主義を世に示す!」~川内博史衆議院議員 独占インタビュー(後)

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 「憲法を守る」「安保法制は違憲」「原発再稼働には反対」――。主張は明快である。
 浪人時代の苦労を乗り越え、国政の場に復帰したこの人の顔は「政治家」と呼ぶに相応しいものになっていた。
 昨年の総選挙で立憲民主党から出馬し、保守王国といわれる鹿児島1区を勝ち抜いた川内博史衆議院議員に話を聞いた。

憲法、安保法制について

 ――民進党に国民の支持が集まらなかったのは、憲法や安保法制、原発といった国の根幹にかかわる政治課題に、明確な方向性を示せなかったからだ。この点について、川内氏はどう考えているのか?

川内 博史 衆議院議員

 川内 戦後72年間、日本は日本国憲法のもとで発展してきました。日本国憲法は国民主権、基本的人権の尊重、平和主義に集約されますが、なかでも9条というのはとても大事な条文だと考えています。広島や長崎を始めとする悲惨な経験、体験を踏まえて、二度と戦争はしないということを憲法9条は言っています。改正論者は現行憲法が「わかりにくい」といいますが、そんなことはありません。

 9条には「戦争はしてはいけない」ということが書いているだけです。ある人は銃撃されて、ある人は爆撃されて、ある人は死の行進で、ある人は餓死して、ある人は守ってくれると信じていた自国の軍隊に銃を向けられて殺された。これが戦争です。

 8月15日の終戦日に我々が戦没者に手を合わせるのは「二度と戦争はしません」と誓うためでしょう。安倍総理は、戦没者慰霊祭や広島あるいは長崎で何を思いながら手を合わせているのでしょうか。過去の経験を基に反省し、手を合わせているのであれば、憲法を変えるという発想はでてこないと思います。

 憲法の理想を実現することこそが、日本の政治に求められています。このように、憲法の理想の実現こそが私の憲法観です。ですから、安保法制は廃止すべきだと考えています。憲法に違反する法律は無効だからです。また、緊急事態条項は戦前の国家総動員法よりも悪質です。国家総動員法の発動条件は限定列挙でした。自民党の緊急事態条項は、政府が「緊急事態だ」といえば、なんでもやれるということになっています。こんなものが認められるはずがない。

 我々は改めて「立憲主義」というものを世の中に示していきたい。そもそも権力者が憲法を変えるのは間違っています。憲法は権力者を監視するものでなければならない。そうした意味でも、憲法を行政の長である総理大臣が改正しようとすることがおかしいのです。憲法99条は公務員の憲法尊重擁護義務を謳っています。安倍総理はかつて、日本国憲法は恥ずかしい憲法だとおっしゃったが、憲法改正を唱えるのであれば総理大臣だけでなく議員も辞職し、私人として国民運動していただきたい。

 権威、権力、国家のお金を使って憲法改正運動をされるのは邪道中の邪道。禁じ手だと思います。天皇陛下も憲法を大変大事にされています。安倍総理はこれが気に入らないのでしょう。弓削道鏡になりたいのではないかと思ってしまいます。

原発再稼働には「明確に反対」

 川内 原発の稼働については明確に反対の立場です。エネルギー調査会副会長としても、原発ゼロ法案のとりまとめをしているところです。2月18日には、立憲民主党の原発ゼロ法案に関して鹿児島の皆さまの意見をいただきたくタウンミーティングを開催します。その法案のなかにも再稼働は認めない旨を記載しています。

 安倍総理はノーベル平和賞を受賞したICAN事務局長との面会を拒否したようですが、それは政治リーダーとしての立場を誤解しているとしか思えません。私は政治リーダーとはみんなのいうことに耳を傾けることが役目であって、安倍総理は決めることを政治リーダーの役割だと思っているようです。だからこそ、反対者の意見は聞かないのです。本来、決めるのは国会の役目です。行政の長である総理大臣は決まったことをすすめることが役目なのです。民主主義は1人の意見の大切さ、怖さをわかっているからこそ、国会という合議体で話し合って決めることを選んだのです。そういった意味でも、安倍総理は日本国憲法をもう一度よく読まれたほうがいい。今年は安倍先生に内閣総理大臣をご退陣いただく年にしてまいります。


 初めて川内氏と会って8年。落選してからの浪人生活が“糧”になったのはたしかだろうが、その顔は、久しぶりに見る「本物の政治家」のものだった。立憲主義を掲げる川内代議士の今後に、大いに期待したい。

(了)

<プロフィール>
川内 博史(かわうち・ひろし)
1961年11月2日生まれ。鹿児島市出身。80年ラ・サール高校、86年早稲田大学政治経済学部を卒業し、大和銀行に入行。96年の衆議院議員総選挙では、民主党公認で鹿児島1区から出馬。比例九州ブロックで初当選した。2017年の総選挙では、立憲民主党から出馬し6選をはたした。その間、衆議院国土交通委員長、文部科学委員長、沖縄北方特別委員長、科学技術特別委員長、政治倫理審査会長などを歴任。

 
(中)

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