2024年05月04日( 土 )

「期待を超える感動を」小口工事の積み重ねで生き残る地方企業(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

島根電工(株)

 公共事業から一般家庭の小口工事へ。島根No.1の島根電工(株)は、小泉政権下の公共工事削減の方針に素早く対応し、業態変更に取り組んだ。一般家庭の電気工事など、小口でもニーズに応える「住まいのおたすけ隊」を手がけてバブル期の2倍の売上を上げるまでになった。どのような発想で有為転変の時代に立ち向かうのか。

安泰な時だからこそ業態変更を決断 ノウハウの商品化でFC展開も

 島根県の人口は68万人。同社が「住まいのおたすけ隊」で手がける一般消費者向け工事は単価1,000円の場合もある。工事の8割は5万円以下、年間4万件の小口工事を手がけなければ売上高150億円を確保できない。しかも、同社が業態変更に着手したのは公共工事だけで内部留保40~50億円を積み上げた時期。公共工事なら単価3~4億円の物件も少なくない。普通に考えれば公共工事削減の方針が出た時期とはいえ、単価が大幅に下がる事業への進出する必要は感じられない。しかし「大きい動物ほどエサがなくなったときに生き延びられなくなる」と、荒木社長の危機感は凄まじかった。

 「住まいのおたすけ隊」は照明のスイッチ1つの設置でも積極的に行っている。島根電工の強みについて「圧倒的な信頼感」を上げる関係者は少なくない。「島根で知らない人はいない。利益を出す代償に嫌われている会社もあるが、小さな町でも地域の誇りとなっている」。小口工事への注力を、いち営業所の取り組みから全社に落とし込んで成功を収めてきた。

 緻密な分析も行っている。島根電工では業態変更以前からいかなる小口工事でも1件ごとの収支と内容を蓄積していた。大口工事が50億円まで減収となっても、小口で50億を稼げれば十分利益が出ると判断したのだ。自社展開に止まらず現在ではFC展開も行い「島根電工方式」を県外にも広げている。人材育成から小口工事、提案工事のやり方など同社の仕組み、ノウハウを商品化できるほどのビジネスモデルを構築している。

 同社が高い信頼感を得る背景に、従業員や取引先など利害関係者を重要視している。「働く人が幸せにならなければならい」という信念のもとステークホルダーを大事にする考え方がある。月、水、金をノー残業デーに設定。誕生日や子どもが生まれた日に休暇を取る制度もある。新入社員から経験や職種、職能に応じた生涯教育や技能コンクールを実施している。

 取引先に対しても同様の考えだ。日本を代表する優良企業について「下請企業で単価を叩かれて苦労している会社をたくさん知っている」と問題提起する。島根電工は「企業努力は必要」としながらも取引先への値引き要請は行わない。適正利益は必要と判断しているからだ。施工業からサービス業への転換に際し人材こそが資産であると見抜いたところも不況業種での躍進につながっている。

(了)
【鹿島 譲二】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:荒木 恭司
所在地:島根県松江市東本町5-63
設 立:1956年4月
資本金:2億6,000万円
売上高:(17/6)165億円(島根電工グループ)

 
(中)

関連キーワード

関連記事