2024年05月04日( 土 )

トーレス移籍破談 悔やみきれない「アクシデント」

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 イニエスタに次ぐビッグネームが、九州・鳥栖にやってくる……。
 サッカーファンが期待に胸を躍らせていた、元スペイン代表FWフェルナンド・トーレスのサガン鳥栖入りは、残念ながら破談となった模様。トーレスはアメリカ・MLSでのプレーが濃厚だという。

 移籍交渉の詳細はもちろん明らかになるものではないが、破談の原因として考えられる要素が1つある。5月30日午後2時過ぎ、Jリーグ公式サイトが「フェルナンド・トーレスがアトレティコ・マドリード(スペイン)から完全移籍【鳥栖】」と題したニュースを配信したのだ。
 記事の内容をみると、「サガン鳥栖は●日……」や「トーレスも自身の公式●●でコメントを発表しています」など、いわゆる「ダミー」になっている部分がある。どこのニュースサイトでもやっていることだが、これは「予定稿」。つまり、まだ起きていない事象を報道する際に、変更する可能性がある部分をダミーにして記事をつくっておき、いざその事象が起きた際に素早くニュースを配信するためのものだ。
 なぜこの記事を準備していたのか、なぜその準備稿が配信されてしまったのかについて、Jリーグ側は「不明」とコメントしている。なお、当該記事はすぐに削除されたが、TwitterなどのSNSでは広く拡散された後だった。その後Jリーグは「事実と異なる記事が閲覧できるようになっていた」と謝罪記事を配信している。
 巨額の金銭が動き、選手やクラブ、代理人などさまざまなステークホルダーの利害が絡み合うサッカーの移籍交渉において、予想外のできごとが交渉決裂の原因になってしまうことは枚挙にいとまがない。サポーター集団の抗議、複数クラブとの交渉の露見、火山噴火による飛行機欠航などなど、思わぬことで移籍を阻まれる選手は多い。今回のトーレス移籍交渉にJリーグの「情報リーク」がどのような影響をおよぼしたのかを知るすべはないが、サガン鳥栖としては恨んでも恨みきれない「オフサイド」となった。

 日本サッカー協会には、以前から悪質な「漏洩グセ」がある。古くは川淵三郎キャプテン(当時)の「オシムって言っちゃったね」騒動(発言の時点ではイビチャ・オシム監督はジェフ千葉の指揮を執っていた)、近くはロシアW杯・ポーランド戦のスターティングメンバー漏洩騒ぎ。後者は協会関係者によるものかどうかは不明だが、「リップサービス」のつもりが重大な「舌禍」を招く、ということを、いい加減学習した方がいいのではないか。

【深水 央】

 

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