2024年05月06日( 月 )

顧客支援の総合的なメディアとして販売促進ツールの充実化、多様化を(中)

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アド印刷(株)
代表取締役社長 古賀 照也 氏

 印刷市場は近年進行するマルチメディア化、ペーパーレス化に加え、新型コロナウイルス感染症による会議・商談のオンライン化により、縮小が加速化している。国内印刷市場はピーク時の約9兆円から約4兆円にまで縮小している。一方で情報を何らかの媒体で発信することの需要は減っていない。来年設立45周年を迎えるアド印刷(株)は顧客の販売促進を支援する総合メディア業として、安定した受注を獲得し続けている。今夏に2代目社長に就任した古賀照也代表取締役社長に業界の展望、今後の抱負などを聞いた。

(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役 児玉 直)

新しいことへのチャレンジ

    ──印刷会社の一般的なビジネスモデルは大量のチラシを受注し、機械を高回転で回すことによって利益を上げ、成長していくというパターンですが、御社はそれにとどまらずチャレンジしてきたという印象があります。

 古賀照也氏(以下、古賀) 田平会長は、大型印刷機械の導入により売上高を約45億円に増やした後、次の発展を目指すにあたって、既存事業の規模を膨らませることではなく、DM事業に着手しました。DMの成長には透ける封筒の存在が寄与しています。DMの成長のおかげで福岡工場も発展させることができました。現在、売上高の約7割を通信販売に関わる事業が生み出しています。

福岡工場(博多区半道橋)
福岡工場(博多区半道橋)

    ──Web事業が売上高の1割と大きく育っていますね。

 古賀 当社は今年からYahoo!広告のセールスパートナー(星1つ)になりました。名だたる広告代理店が並ぶなか、印刷と名の付く会社でパートナーになっているのは当社くらいです(22年10月時点)。情報もその分入ってくるようになり、売上の伸びに貢献してくれています。同業他社にはない強みとなっています。Web事業を通して、印刷の受注も入ってきます。DMで通販の顧客の支援を積み重ねてきたからこそだと思っています。

 ──ネットの販促など人材の採用はどのようにしているのでしょうか。

 古賀 Web部門は、当初はウェブデザインなどの人材を中途採用で集めていましたが、現在は新卒で入社した生え抜き社員が育ち、広告を運用しています。採用は新卒中心へと徐々にシフトしています。印刷の営業についても毎年新卒を採用しています。なお、社員数は約200人で、今年採用した新卒は約10人です。

 ──会長に退いた田平氏についてお聞きします。もともと福岡の出身者ではありませんが、1978年に創業したとき、業界の経営者からはどう見られていたのでしょうか。

 古賀 当初は同業他社の上の世代の経営者からは理解されなかったこともあったようです。ただ、それらの企業の経営陣が会長と同世代の人に移るころには、すごい人だと評価され始めたと聞いています。今でも業界では異端児と見られているところがあり、私と同年代の同業の経営者からは田平会長に会うと緊張すると言っています。

 印刷業界では、経営者には機械に触れてきた人が多いのですが、田平会長は営業出身です。営業が弱ければ事業は続けられないという意識を強くもっていました。また、チャレンジすることを強く訴え、一貫して人がやらないことを行い、どこよりも早く、誰もやらないことを早くということをずっと言ってきました。「いま、もっと新しいこと」というコーポレートメッセージは会長によるもので、新しい顧客を常に探してきました。現在では東京に進出している同業者は少なくないですが、当社は約30年前と比較的早く進出しており、売上高の約6割を東京と大阪で占めるようになっています。

アド印刷(株) 代表取締役社長 古賀 照也 氏
アド印刷(株)
代表取締役社長 古賀 照也 氏

    田平会長は経営判断力にも優れていたと思います。売上高が20億円のころに、その半分以上に相当する12~13億円規模の投資を社内で強い反対に遭いながらも実施、大型印刷機械の導入により、その後4年くらいで45億円にまで倍増させました。この後、もう1台導入していたら売上高は早い時期に60億円に達していたかもしれませんが、そのとき、今後はチラシの時代ではなくなるとして、封筒事業にチャレンジしました。この時も周囲から強く反対されながらも決断したといいます。

 もちろん新規事業への挑戦や投資などで失敗もその分少なくなかったようですが、チャレンジするスピード感と判断力に長けたカリスマ経営者だと思います。過去はあくまで過去でしかないという認識であり、苦い経験も味わったことから、変わり目が早く、失敗は失敗と考え、撤退を決断するのも早いです。

 また、部下に最良を委ねる人です。創業者として自身が権限を保持し続けても不思議ではないですが、私や工場のトップにも判断を委ねてくれていました。ある程度枠を決め大事な点については自身で決めていましたが、細かい事業判断はそれぞれ責任者に委ね自由にさせようとしていました。その結果、任された人たちが手腕を発揮します。採用に関してもこの10年は一切関与しなくなりました。

(つづく)

【茅野 雅弘】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:古賀 照也
所在地:福岡市博多区榎田1-3-23
設 立:1978年7月
資本金:4,000万円
売上高:(22/2)66億1,600万円
TEL:092-472-9871
URL:https://www.ad-printing.co.jp/


<プロフィール>
古賀 照也
(こが・てるなり)
1979年生まれ、福岡県筑後市出身。久留米工業高等専門学校卒業。2008年アド印刷(株)入社、Web事業部長、取締役を経て22年8月、代表取締役社長に就任。

(前)
(後)

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