スターフライヤークオリティを北九州全域へ
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(株)スターフライヤー
代表取締役会長執行役員 横江 友則 氏北九州空港に本拠を置く日本の航空会社・(株)スターフライヤー。コロナ禍で業績低迷が続くなか、2023年3月期の売上高は322億7,500万円を計上し、前期から52.7%の大幅増収をはたしていた。経営再建を加速すべく、昨年6月29日に町田修・代表取締役社長執行役員とともに就任した、代表取締役会長執行役員・横江友則氏に、今後のビジョンについて話を聞いた。
顧客ファーストが結果を生む
──会長に就任されて約1年が経ちますが、当時はどのようなお気持ちで引き受けられたのでしょうか。
横江 この1年はあっという間でした。振り返ると、コロナ禍の2021年3月期は約100億円、22年3月期は約50億円の赤字という厳しい状況での会長職の打診でした。ただ、私のなかには、それほどの悲壮感はありませんでした。
というのも、私が阪急電鉄に勤務していた当時、阪神淡路大震災(1995年1月17日)の経験が大きく影響しています。震災で大阪―神戸を走る鉄道は、線路も列車もほとんど壊滅してしまい、会社の存続も危ぶまれる状況でしたが、再起をかけたチャレンジをした経験があったからです。
大阪―神戸を併走する3線(阪神電気鉄道(株)、以下阪神/西日本旅客鉄道(株)、以下JR/阪急電鉄(株)、以下阪急) は例外なく地震で崩壊してしまいましたが、いち早く復旧したのがJRで、阪急・阪神は2カ月遅れでの再開でした。いち早く復旧したJRに、ほとんどの乗客が流れてしまったのです。
そこから乗客を取り戻すため、私がいた阪急とライバル関係にあった阪神が協力し、実現したのが「定期券の共通化」でした。これにより、利用者の利便性が向上したことで、乗客が戻ってきました。このチャレンジで、ライバルとの「競争」を「共創」に転換することが、顧客満足度を高め、ひいては企業価値も高めることを実感しました。
全員参加の経営
──会長就任後に取り組まれたことは、何でしょうか。
横江 就任後、一番初めに私は社員に向けて「みんなの給料を元に戻す」ことを伝えました。コロナ禍ではやむを得なかった従業員の給料カットは、昨年10月に戻すことができました。それは経営者だけが頑張っても実現できません。この時期に、全社員から販売促進などに関するアイデアを募集したところ、短期間で120件もの提案を受けました。このことで社員のやる気や勢いを感じ、「この会社は大丈夫だ」という確信をもちました。経営にとって、きれいなビジネスモデルを描くことも大事なのですが、それよりも社員のやる気を引き出させて一緒にやるということが、一番大事だと思います。
──社員とのコミュニケーションで、工夫されたことはございますか。
横江 まずマンツーマンの面談を行いました。一気に約700名の全社員は無理なので、マネージャー以上約120名に対して1人1時間対話を行いました。面談では、本人の意見や考え方、私の思いなどを伝えました。おかげでコミュニケーションも取りやすくなりましたし、直接提案してくれる人も増えましたので、効果を実感しています。また、当社には会長室や社長室はありません。いつもフリーに話ができる環境で仕事をしています。
北九州空港本拠地の航空会社
──北九州市のまちの印象は、いかがでしょうか。
横江 北九州市は都会と田舎が混在していて、住みやすく良いまちだと思います。食べものがおいしいし、何より人が良いですよ。人の良さは「また訪れたいまち」になる非常に大事な要素です。
これまで、当社のお客さまは東京出張でご利用いただく地元のビジネスパーソンが中心でした。北九州―羽田は、始発で行き最終便で帰ると、曜日によっては日帰りでも14時間以上東京に滞在できます。しかし、コロナ禍でリモートワークが定着してから、出張需要は減ったままで今度の戻りも期待できないと思います。ですから、東京からの観光のお客さまを増やしていかなければという思いで、航空会社以外も含めたシームレスなサービスづくりに取り組んでいます。
今年7月からは、西鉄バス北九州(株)と連携して、北九州空港エアポートバスのダイヤ改定を行います。これまでは、空港から小倉駅へ出るのにバスの出発を待たないといけない状況でした。これを、降機から25~30分後に出発するような飛行機の到着時刻表に合わせたダイヤ設定へ、改定していただきます。さらに、小倉だけにとどまらず、門司港レトロや下関の唐戸市場、皿倉山の夜景など、広域の観光スポットを、土地勘のない方にも距離感が伝わるような打ち出し方など、他社と共創した顧客視点のサービスをつくっていきたいです。
唯一無二のブランドを確立
──航空会社としての貴社の位置付けは、どのあたりですか。
横江 スターフライヤーは、料金は大手より少し安めのミドルコストですが、サービスレベルは大手並みかそれ以上だと自負しています。全便・全席黒のレザーシートでシートピッチも広く、フットレスト付きでゆったりとくつろげる空間です。機内サービスのコーヒーはタリーズ(TULLY'S COFFEE)のオリジナルブレンドを、 チョコレートと一緒に提供するなど、搭乗されたお客さまに“スマートラグジュアリーなひと時を”過ごしてもらう工夫を凝らしています。
当社CAのサービスも従来から高いレベルで、21年度にはJCSI (日本版顧客満足度指数)調査の国内航空部門において、顧客満足度「第1位」の評価をいただいており、19年度までは11年連続でこの顧客満足度調査で「第1位」を獲得してきています。また、全社員が当社のモットーである「考動」(個々が考えて行動すること)を意識し、マニュアルにはないサービスを心がけています。サービスレベルは大手以上でありながら値段は少し安い、唯一無二のユニークな航空会社といえると思います。
北九州空港島のブランディング
──5月29日に武内市長とお会いされています。
横江 短い時間でしたが、いろいろと意見交換をさせていただきました。空港島を今後どうしていくかという話も出ました。今はまだ空き地が多く、まだまだ可能性を秘めていますし、隔離された場所だからこそ有効に使えると思います。武内市長も「尖った空港施設」を一緒につくっていきたいとおっしゃっていました。まさしくその通りで、市民の人たちも集まれる場所にしないといけないと考えています。観光やアクセスの強化も含め、北九州市と意見交換しながら良いものができたらなと思っています。
北九州空港は、九州唯一の24時間空港であることが強みです。これを生かしたインバウンド施策では、北九州行の最終便が到着し終えた後も、飛行機を整備して再びアジア各地へ往復させることもできると考えています。機体を増やさなくても有効活用することで、夜間便を飛ばし、たくさんの方に海外からきていただきたいと考えています。
あと数パーセントの顧客価値の追求が、感動を呼ぶサービスにつながります。航空会社の守備範囲は、空港から空港だけではないと思っていますので、当社の強みである顧客視点のサービスを生かした「スターフライヤークオリティ」を北九州全域へ広げ、人が輝くまちづくりに貢献してまいりたいと考えています。
【松本 悠子】
<プロフィール>
横江 友則 (よこえ・とものり)
1956年、京都生まれ。京都大学法学部を卒業後、80年4月に阪急電鉄(株)入社。2000年、(株)スルッとKANSAI代表取締役に就任。08年、観光庁Visit Japan大使(現任)。大阪府特別参与。18年9月(一社)グローカル交流推進機構設立、専務理事に就任(現任)。
<COMPANY INFORMATION>
(株)スターフライヤー
所在地:北九州市小倉南区空港北町6 北九州空港スターフライヤー本社ビル
設 立:2002年12月
U R L:https://www.starflyer.jp/月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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