2024年05月10日( 金 )

コストコ&スマートIC「衣食住が完結する小郡へ」(後)

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小郡市長 加地 良光 氏

新たなランドマーク、コストコが新規開業(つづき)

 ──コストコ誕生をきっかけに、小郡に注目する人も増えていきそうです。

 加地 これまで福岡市や久留米市のベッドタウンとして認知されてきましたが、コストコ誕生を契機に、衣・食・住が小郡市内で完結する、コンパクトシティとしての再評価が進めばと思います。コストコの時給はすでにご存知のように1,500円~です。働き方も多様化していくでしょう。

 ただコストコは、進行中のまちづくり構想における、1つの要素であるということを忘れてはいけません。コストコありきではなく、コストコの誕生がもう一度小郡の強みは何か、課題はどこにあるのかを見直すきっかけを与えてくれたと考えるべきではないでしょうか。3月には小郡鳥栖南スマートICアクセス道路が開通し、6~7月にはスマートICも開通予定です。西日本鉄道、甘木鉄道もあります。福岡市にも近く、九州他県への移動にも便利、それでいて小郡市内で不便を感じることなく日常生活を送ることができる、そんな“小拠点都市化”が、小郡市の目指す姿だと考えています。

開通迫る県道鳥栖朝倉線(資料:福岡県)
開通迫る県道鳥栖朝倉線(資料:福岡県)

 ──市長が考える小郡の強みとは。

 加地 住民同士がつながりやすく、温かみのあるまちだと感じています。移住者の皆さんが持つ都会的なノウハウが、昔からこのまちで暮らしてきた皆さんの知見と混じり合うことで、地域課題を解決していける。そのポテンシャルを大いに秘めているのが、小郡市というまちです。人口減少など、将来に対して悲観的な言葉が並びますが、まだまだ頑張れることは多いと思います。市として、人が集まり、交流を深めることで新しいことを生み出せる、そんな場所をこれからも提供していきたいと思います。

(了)

【聞き手:内山 義之/文・構成:代 源太朗】

福岡・小郡にコストコ&スマートIC誕生

コストコ小郡倉庫店建設現場
コストコ小郡倉庫店建設現場

 コストコ小郡倉庫店(以下、コストコ小郡)が、九州を横断する大分自動車道・筑後小郡ICの出入口近くに今秋開業する。敷地面積は約6万8,800m2で、ガソリンスタンドや900台以上の駐車場も整備される。もともと小郡は、大分自動車道と九州を南北に縦断する九州自動車道が交差する“クロスロード地域”でもあり、福岡だけでなく、九州他県のコストコファンを呼び込むのに適した立地だった。

 コストコ小郡の誕生に目が向きがちだが、クロスロード地域である小郡は、交渉の要衝として交流人口は多い。西鉄・天神大牟田線と甘木鉄道の2つの鉄道が走っており、西鉄を利用すれば福岡市の中心部・天神まで30分程度で移動可能だ。

 歴史的に交通利便性が高かった小郡市内の光行~乙隈では、今でも江戸期に参勤交代の道として利用された薩摩街道が残されている。ほかにも、霊山・英彦山に参拝する人々が利用した彦山道、筑後国久留米藩と豊前国小倉藩を結んでいた秋月街道などが通る小郡は、宿場町として栄えていた。現存する旧松崎旅籠油屋や南北の構口(かまえぐち)からも、当時の名残を感じ取ることができる。

 通りを介して域外からお金を獲得し、域内で消費する。地域経済循環が機能していたと考えられるが、小郡は観光地ではない。筑後川系水系・宝満川によって形成された肥沃な土地を生かし、同じく江戸期に宝満川沿岸一帯が水田化され、広範囲にわたり新田開発が進められた。筑紫平野に臨む緑豊かな穀倉地帯として、米作・野菜類の栽培が盛んであり、古き良き田園風景は今も息づいている。

 小郡に現在の住宅都市としての側面が付与されたのは、1977年の「小郡・筑紫野ニュータウン計画」策定によるところが大きい。小郡近郊の都市部に人口が集中するなか、その受け皿となる快適な住宅都市の創出を目標に策定された同計画が遂行されることで、西鉄沿線エリアの市街地化が加速。自然豊かなベッドタウンとして発展していった。

 今年3月には県道鳥栖朝倉線が開通するほか、6月には小郡鳥栖南スマートICが開通予定と、交通利便性のさらなる向上が見込まれ、市内では物流施設の開発も目立ってきた。アクセス向上およびコストコ誕生が、今後の小郡にどのような変化をもたらすのか注目したい。

【代 源太朗】

鳥栖市長 向門 慶人 氏

鳥栖市長 向門慶人 氏    鳥栖市は鳥栖JCTが通る陸路交通の要衝です。その地理的優位性を背景に数多くの企業が進出し、雇用の場が生まれることで市内へ人を呼び込む好循環を確立し、今日の発展につながっています。

 新たに小郡鳥栖南スマートICや小郡市へつながる県道鳥栖朝倉線が開通することは、強みである地理的優位性が一層高まることになり、新たな企業誘致や雇用の創出をはじめ、地域産業のさらなる飛躍につながるものと期待しています。

 市では現在、小郡鳥栖南スマートIC周辺の約34haの区域を新たな産業用地として開発する計画を進めています。高い事業者ニーズに迅速に応えるべく、スピード感をもって産業用地の創出に臨んでおり、このほど市と連携して産業用地の整備や企業誘致を行う民間事業者の募集・選定を行ったところです。

 また、大規模な倉庫で幅広い商品を販売するコストコは、ショッピング自体を楽しむことができ、遠方からの集客力も高いと聞いています。コストコでしか購入できない人気商品も多数あるそうなので、買い物が便利になると喜んでいる鳥栖市民も少なくないと思います。コストコ小郡倉庫店の開業が、地域に新たな人の流れを生み出し、さまざまな波及効果がもたらされる契機になることを期待しています。


<プロフィール>
加地 良光
(かじ・りょうこう)
加地良光1964年11月生まれ。埼玉大学経済学部卒業後、(株)NBC長崎放送に入社。同社退職後は、(株)TVQ九州放送へ入社し、アナウンス部長や報道部長などを歴任し、地域に根差した情報発信に努め、2017年、小郡市長に就任。現在2期目。

(前)

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