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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (60)
経済小説
2011年2月16日 11:29

これだけたくさんのビジネスマンがいても、これから自分の会社をつぶそうとしている人は私くらいであろう... 朝9時半の全日空に乗り、東京に向かう。羽田から京急・都営で東銀座に向かう。そこで日比谷線に乗り換え、目指す先は六本木ヒルズである。
 アポイントは13時だったが、20分くらい前にヒルズについた。広場のベンチにしばらく腰を下ろして時間まで待つことにした。その頃、ヒルズタワーのテナントのひとつにリーマンがあり、つい最近倒産したという時期であったが、しかし、まだまだ活気のある企業も多く、昼休みの時間帯でもありパリッとしたスーツを着こなしたビジネスマンや、いきいきとしたキャリアウーマンが大勢行きかっている。これだけたくさんのビジネスマンがいても、これから自分の会社をつぶそうとしている人は私くらいであろう、と感慨深かった。

 東京の弁護士とは、最近の不動産会社の法的整理の状況について聞いた。最近の不動産業界に対する状況はまったくひどいものである、とのことであった。そして、不動産会社の業態のなかでも、開発業オンリーの会社は、物件を売らない限り収入が入らないため、民事再生を出したとしても、その後の資金繰りをつなぎようがなく、しばらくすると社員を全員解雇した、というような例ばかりだそうであった。
 私が特に相談したかったのは、私的整理の可能性であった。10月をもって当社への融資残高トップが、メガバンクから地銀に移っていたので、最後の希望を託して私的整理の相談をしようと考えていたのである。これについては、弁護士のコメントとしては、「メガバンクよりはるかに実現可能性が高いはずだ」というものであった。
 そのほか、とりうる手法としては、「事業再生ADR」という制度がまもなく導入されるため、間に合えば第一号で申請するようにしてはどうか、という話があった。第一号の話であれば、関係者も遮二無二まとめにかかるのではないかとのことであった。民事再生法か、会社更生法かについては、法制度上は担保権のついた債権の扱い等が両者の最大の違いであるが、その点は運用上の実態としては大差がないとのことであった。現実的な最大の違いは現役員が再建を仕切るか否かであるが、それも今は、DIP型会社更生が導入され、東京地裁等はその申請を待っている状態である、とのことであった。
 残念ながら、当社の場合は時間的にADRの導入には間に合わなかった。その後半年して、大手のマンション分譲会社スペースイニシャルがADRによって上場を維持しながら事業再生を行うことが報じられた。現実問題として、法的整理の準備を進めざるを得ないが、並行して私的整理には取り組むことを決めた。

 その後、私は、春以来資本増強の話を進めているM&Aエージェントのところに立ち寄った。依然として検討を続けている先があったため、その進捗確認および、さらに打診可能な先があれば検討するためである。しかし、秋に入るとすでに多くの不動産会社が当社と同じように苦境に立たされ、さらに最近はJ-REIT(上場不動産投資信託)の経営破たんもあって、新たに不動産会社への出資を検討している先は皆無、ということであった。不動産業界だけでなく、日本経済全体が底なしの奈落に沈んでいくかのような状況であった。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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