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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (121)
経済小説
2011年4月19日 11:55

<免責への途>

 私は事業譲渡を実行するまでは、本音をいえば、"事業譲渡さえ達成すれば、その後は、債権者の同意が得られない場合は、破産手続きに移行してしまってもやむを得ない"と考えていた。もちろん弁済率を少しでも高めることが債権者に対する責務ではあるが、心情的には残った社員の雇用の確保が私の最大の戦略目標であった。それゆえに事業譲渡の実行によって肩の荷が下りたわけだが、ここまでたどり着いた今となっては"あとはきちんと再生計画認可までたどり着きたい"という欲も出てきた。やはり「DKホールディングスの役員は最後まで責任を持って取リ組んだ」といわれるところまでやり通すことが事業を継承したセントラルレジデンスの風評のためにも、私を含め、これから残務処理に当たっていく役員の将来のためにも必要と思われた。

私自身の就職活動を開始することも決めた... 再生計画案は、6月10日に裁判所に提出することを予定しており、私はすでにその作業に着手していた。そのなかで私は、もう一度残った資産の換金可能性をひとつずつ評価していった。5月以降のDKホールディングスの経費についても見直しを行なった。これらの結果、4%以上の配当率は確実に達成可能であると考えられた。
 6月に再生計画案を提出すると、9月に債権者集会が召集される。そこで債権者の総議決権の2分の1以上および出席者の過半数の賛成が得られれば、晴れて再生計画が認可される。認可されれば再生債権額の96%の額が免除される。その後、11月に4%強を弁済し、その後、DKホールディングスは清算する、というのが今後の流れの骨子である。

 岩倉社長、中井常務で対応していた物件売却も、この頃にはどんどん動き出していた。私は裁判所への提出に向け、再生計画案の内容を詰めるとともに当社が保有する非上場の投資有価証券に関して、発行会社と売却先などの交渉に当たった。5月1日付の事業譲渡は3月末日基準で行なったため、今後4月末の締めが出来次第、4月末日基準の資産負債継承目録を作成しセントラルレジデンスとの精算を済ませることも課題のひとつだった。

 いずれにせよ今後、現業がなくなり残務処理だけになるため、各役員とも待ち時間が増え手持ち無沙汰になることも予想された。かといって、大方の作業を終えるまでは退任することもできない。このような悶々とした状況におかれることは辛い。私自身がこれまでの多忙と打って変わって時間の余裕が出てしまい、慣れるまで非常に辛かった。このため残る役員のあいだでは励ましあいながら、最後まで緊張感を失わずに行こうと話し合い、一方で、人生にはこういう時期もある、ということで「支障のない範囲で、お互いにある程度は余裕時間を自分のためにも使いましょう」ということも申し合わせた。またこれまでは社員の目もあるので、今後の進路のことは表立って考えていなかったが、すでに事務所を移り社員の目もなく残務処理のみの状態なので、私自身の就職活動を開始することも決めた。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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