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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (128)
経済小説
2011年4月26日 16:04

 裁判官は債権者集会の進行を進めた。
「それでは再生計画案の質疑に移ります。再生債務者は、議決権額については、本日までの認否どおりということでよろしいですね?」
「はい」
 森永先生が答えてくれた。
「査定申立を出されている債権者番号○番の□□建設については、債権認否表のとおり異議を述べるということでよろしいですね?」
 と裁判官が質問を続けた。これも、森永先生が
「はい」
 と答えた。裁判官は、出席債権者に対しても
「議決権について何かご質問はありませんか?」
 と確認するように述べた。とくに質問は出なかった。

「それでは、査定申立を出されている債権者番号○番の□□建設の議決権については、それぞれの主張する額の中間額を、他の届出債権者の皆様には、再生債務者に異議のない議決権額について議決権を行使していただくこととします。議決権について質問はありませんか?」
 裁判官は、こうして、まず議決権について固めた。

議決票をパソコンに入力して修正し... 債権額について異議を唱えている□□建設は、当社がビルの建築工事を発注していた先であったが、基礎掘削工事まで進んでいたものの当社はまったく工事代金を支払っていなかった。そのうえ当社が民事再生を出したあとも、現場の管理をし続けねばならず迷惑をかけている先であった。そのようなことから□□建設は、再生債権(工事請負代金)の査定について異議を述べていた。しかし、再生計画案を議決するためには議決権額を確定することが不可欠であり、1社の議決権が未定で採決ができないのでは全体の進行に支障があるため、裁判官は□□建設の議決権額について「双方の主張の中間の額」と裁いたのである。
 これで、議決権額が固まり、再生計画案の議決ができるようになった。

「それでは、届出債権者の皆様には、再生債務者に異議のない議決権額について議決権を行使していただくこととします。再生債権者の皆様には、あらかじめ再生計画案とともに議決票を送付させていただいております。議決票には議決票送付時点までの議決権額が書かれていますが、議決票送付後に議決権額に変動があった場合は、変動後の議決権額で議決権を行使していただきます。変動後の議決権額については、議決票の記載に係らず裁判所において職権で修正します。それでは、議決票をお持ちの方は必要事項を記入の上、議決票を書記官にお渡しください」
 裁判官がそう言うと、2名の書記官が議場を回り当日議決票を持参した債権者から議決票を集めていった。書面で投票している人の分は、ある弁護士が集約して持参してきていた。

「それでは、議決票の集計のために10分間休憩します」
 票の回収が終わると裁判官は休憩を宣言した。この10分間で書記官が当日回収した議決票をパソコンに入力して修正し、議決結果を計算するのである。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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