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自立する地域社会

【飯塚特集】自主性の高い学生を育む先進的な知の拠点~九州工業大学情報工学部長・仁川純一氏
自立する地域社会
2011年8月17日 07:00

 国立大学法人のなかで唯一「情報工学」を冠する学部である、国立大学法人九州工業大学情報工学部。創設から今年10月で25周年を迎えようとしている同学だが、高い水準の教育プログラムを有し、多くのIT系ベンチャー企業を輩出していることでも有名である。地元・飯塚市の活性化においても重要な役割の一端を担っている同学について、同学情報工学部長の仁川純一氏および同学教授の小田部荘司氏をインタビューした。

(聞き手:IB編集長・大根田 康介)

<多数のベンチャーを輩出、自主性にあふれた気風>
 ――九州工業大学(以下、九工大)情報工学部は、ずいぶんとベンチャー企業を輩出されているようですね。

仁川純一氏(左)と小田部荘司氏(右) 仁川 九工大には、もともと学生が自主的にいろいろと活動するような雰囲気があります。やはり、そういうところが、ベンチャー活動の多さに影響しているのではないでしょうか。

 小田部 福岡のような都市であれば、まちに出ればいろいろと楽しみはあります。ですが、ここ飯塚ですと、学生は自分たちで楽しみをつくり出さないといけません。そうすると、学生たちはいろいろなことを考えてくれます。たとえば、普通の大学ですとオープンキャンパスをするにあたっても、教員の側から学生の代表を選んで指示をしなければなりません。ですが、ここでは学生が自分たちで「オープンキャンパス実行委員会」を組織して、「教員主催のオープンキャンパスだとすごく固いものになってしまうから、僕たちで高校生を迎えてあげよう」と自主的にいろいろとやってくれます。ほかにも自治会や委員会活動などは、主に学生主導です。さらに意識のある学生は、小学校で出前講義を行なったり、公民館と連携してみたりと、いろいろやっているようです。
 そして、そういうことやっている学生は、飯塚市の経済関係の方々とやりとりして、「飯塚に残ってそのまま企業を立ち上げてやろう」とか、「飯塚から何か発信してやろう」と、だんだんとそういう意識になってくるみたいです。ベンチャーが多い要因はこのあたりかもしれません。
 飯塚という土地は学生にとって少し寂しいところかもしれませんが、「自分たちで何か興していかないと楽しめないから、がんばろう」という意識のようです。

 仁川 学校の方では、インターンシップにも随分と力を入れています。インターンシップで現場を学び、そこで得た知識・経験を大学に持ち帰って、自分たちのさらなるレベルアップにつなげるのです。また、最近は学生向けに「考えさせる授業」というのをやっています。今年から大学院の授業で始めた「需要創発コース」というものですが、これは自分たちで「何が求められているか」というのを考えるところからやるものです。普通ならば、要求があってそれに応えるというという「PBL(プロブレムベースラーニング)学習」というのが多いのですが、そうではなく、「何が問題かを、まずそこから考えましょう」という考え方の授業形式です。
 インターンシップにしろ、こういった実践的な授業にしろ、学生は積極的に取り組んでくれています。これらを通じて得た知識や経験が、ベンチャーを興す土壌にもつながっているようです。

 小田部 知識をただ単に座学で学ぶのではなく、自ら動いて「自分たちの持っている技術がどのくらい使えるのか」を学ぶというのが、新しい教育の方法になっていますね。
 飯塚は、そういう面では良いところだと思います。飯塚市の方でも、九工大の学生というと信頼度が高いですし、「何かやってくれるんじゃないか」という期待もあるようです。

<地域活性化の力に...、学生の地元残留が課題>
 ――自主性・自発性を持った学生が多くいらっしゃるようですね。では逆に、貴学が抱えていらっしゃる問題点や課題などはありますか。

 仁川 大学でも話が出ていますし、飯塚市の方からも言われていますが、学生たちにもっと地元に残ってほしいという想いはあります。もちろん、学生たちが大企業や東京、大阪などに興味があるのはわかりますが、もっと地元企業に残ってもらって地元を活性化してほしいとは思っています。
 ただ、先ほどから話がありますように、ベンチャーを立ち上げるという意味で、飯塚に残ってくれる学生もいます。また、留学生なども地元に多く残ってくれています。地元の企業でも海外展開を考えておられるところはありますから、企業側も留学生を非常に歓迎してくれているようです。

 ――先ほどお話にあったような自主性の高い学生ならば、商店街の活性化など、もっと地元・飯塚市の力になれるのではないか、と思います。

 仁川 地元中学校の生徒向けに自発的にパソコン教室を行なったり、地域の子どもたちの面倒を見るような活動はやっているようなのですが、現状として、商店街の方まではなかなか手が回っていないようです。ただ、以前には無線LANを使った実証実験を兼ねたようなかたちで、商店街でスタンプラリーのような「宝探しイベント」などを行なっていたこともあるようです。

 ――学生は現在、何人ほどいらっしゃいますか。

 仁川 2,400人ほどです。25年前の創設時より定員を少し増やしておりますので、わずかながら学生数は増えています。

 ――25年前と比べて、学生の質はいかがですか。

 仁川 やはり全国的なものだとは思いますが、「ゆとり教育」の影響か、学生のやる気というか積極性が少しずつ下がってきているように思います。もちろん、先ほどのお話にもありましたように、自主性を持っている学生はたくさんいます。ですが、やはり学力を含め、全体的には下がってきているように思います。これについては現在、「何とか変えないといけない」ということで議論しているところではあります。

 小田部 以前なら、「チャンスさえあれば海外へ留学しよう」という学生も多かったのですが、今はあまり行こうとしないですね。

<常に新しいものを取り込む、高い先進性を武器に>
  ――ここ九工大情報工学部はIT系のベンチャー企業を多数輩出されていることもあって、非常に先進的なイメージです。

 小田部 たしかに、ここは新しいもの好きが多いので、先進的なものはいろいろと取り入れています。たとえば、無線LANなども、まだ世間では知られていなかった頃に、学内の誰かが提案して入れたんですね。ただ、まだ早すぎて誰も使えませんでしたが(笑)。

 仁川 学部の創設当時は、学内の自販機もすべてカード式でした。「キャンパスネットワーク」といって、全部ネットワークで決算ができるようなシステムがあったのですが、やはりこれも早すぎてやめてしまいました(笑)。学内ネットワークも、インターネットが流行るさらに前の90年代前半には、すでに電子メールでやりとりしていましたし、今ですと500人講義室のところに世界に数台しかないような3Dの映写機があります。昨年、映画館で「3Dだ」といろいろと話題になりましたが、ウチではもっと前から授業で3Dの映写機が使われていたのです。

 小田部 何か面白いことがあれば、すぐに「ちょっと試してみようよ」という気風はあります。学生たちにも「面白ければやってみよう」「やりたいと言ってみれば、やらせてもらえるかもしれない」というような意識もあるようです。

 仁川 ウチはやはり、情報系の技術が多いわけですからね。教員評価も全部Webで入力して評価したり、学生も「自己評価システム」といって自分で自分の単位履修状況などを全部Web上で入力して自己評価をするようなシステムが全部ありまして、結構、ほかの大学からも問い合わせがあったりします。そういうところは、さすがにウチはトップクラスですね。

 小田部 ただ、いろいろと先進的な技術を取り入れたり、新しいことに取り組んだりもしているのですが、やはり私大の方々の情報のまとめ方や宣伝の仕方に比べると、ウチは情報の打ち出し方が下手ですね。たとえば、ある私大で書いてあることを「スゴイ」と思ってよくよく内容を見てみると、すでに全部ウチにあったり(笑)。

 仁川 たしかに、宣伝は下手ですね。国立大学ですから、仕方ないと言えば仕方ないのかもしれませんけれど。私立ほど派手には宣伝しませんから(笑)。

 ――では、今度の25周年を機会に、何か打ち出しをされたりするご予定などは。

 仁川 それについては、今まとめているところで、何かメッセージは出していきたいと思っています。
 ここ情報工学部は、北九州市・戸畑にある工学部に比べてまだ歴史は浅いですが、その分学生のなかに「歴史は自分たちでつくっていく」という意識があります。ある意味で伝統がないことをプラス方向にとらえ、25周年の節目を迎えてさらに躍進していきたいですね。

【文・構成:坂田 憲治】


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