2024年05月18日( 土 )

一級建築士免許裁判、残された「構造設計一級建築士」の疑問(後)~仲盛昭二氏

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同じ国家資格で官民に待遇などの格差

 ――設計変更の扱いは、非常に重大な問題ですね。さっそく、調査をしてみます。ところで、仲盛さんは、構造設計一級建築士更新の講習は受けられるのですか?

 仲盛 もちろん、有効な資格ですから受講するつもりです。3年ごとに受講することが、一応義務付けられていますので法に従って受講するだけです。構造設計一級建築士だけでなく、設備設計一級建築士の定期講習、管理建築士の定期講習、一級建築士の定期講習など、いくつもの講習があります。これらの講習は建築士事務所に属する者に限られています(建築士法第22条の2)。

 国土交通省や地方の特定行政庁の職員のなかには、一級建築士の資格を持っている方が大勢います。これら建築士事務所に属していない一級建築士の方たちは定期講習を免除されているのです。しかし、公務員の一級建築士こそ、設計の実務を知らないので、必ず、定期講習を受けるべきだと思います。このような珍現象は建築士だけであり、大いに矛盾を感じています。講習を受講するためには、講習を実施する国の天下り機関に受講料を納めなければなりません。どう見ても、天下り機関の資金稼ぎとしか思えません。民間の建築士のなかには、私と同じ憤りを感じている方もいらっしゃると思います。憤りを感じている一級建築士、構造設計一級建築士、設備設計一級建築士の方は、講習会の受講を控えてみてはどうかと思っています。現に、私の知人で、これを実践されている方がいますが、法的に何らお咎めを受けていません。

 少し過激な意見を述べましたが、講習そのものを否定している訳ではありません。同じ国家資格でありながら、民間人と公務員では、その待遇とスキルに、あまりにも大きな差があることに憤りを感じているのであり、公務員である建築士にも、実務に即した専門知識を身に付けていただきたいと思っています。

 ――仲盛さんの一級建築士と構造設計一級建築士の、いびつな状態は解消されることは、永遠にないのですか?現在、有効である構造設計一級建築士を更新する意義は薄いのではないでしょうか?

 仲盛 2000年当時の建築士法第7条第3項は、一級建築士、二級建築士または木造建築士の絶対的欠格事由について、「第十条第一項の規定により免許を取り消され、その取消の日から起算して2年を経過しない者」と規定しています。

 私の事例のように、建築士法第十条第一項の規定により免許を取り消された者は、取消の日から起算して2年を経過すれば、一級建築士免許の交付を申請することができるのです。国は、私に対して09年6月に免許取消処分を行い、その後、私が処分の撤回を求めた裁判の最中である11年7月、国側が一方的に処分を撤回し、13年9月に再び免許取消処分を行いました。最初の免許取消処分から今日に至るまで、免許が手元に有った期間となかった期間があり、実質的に免許を返納している期間を通算で計算すると、18年1月20日には満2年となります。この日を迎えれば、再試験を受けることなく、一級建築士免許の交付を申請することができます。しかし私の個人的な意見としては、構造設計を含めて、建築設計に関する直接の作業そのものは、奴隷的な作業の最たるものであると感じており、まったく魅力を感じていません。今の「元・一級建築士」から奴隷的な位置付けである「現・一級建築士」に戻るのか、悩んでいるところです。

(了)

 
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