2024年05月07日( 火 )

老舗の意地で復活 多様な事業展開の道を拓く(後)~日新建設(株)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

妹婿の代表取締役就任 徐々に立ち直りを見せる

 中野家だけが経営に携わっていた同社だが、96年4月に中野良人氏の妹婿の長尾榮次氏を専務として迎え入れ、経営を託した。

 長尾榮次氏は、建設業とは無縁の業種の出身。国鉄時代の新幹線博多車掌区、労務担当の助役から、久留米駅の首席助役を経験。JR九州となってからは赤間駅、門司駅、黒崎駅の駅長を歴任し、93年4月にJR九州グループ関連会社に移籍した後は、小倉事業所の所長を務めた。過去の職歴を見る限り、生粋の鉄道マンであり、建設業界への関わりや経営にタッチするようになったのは、同社に入社して専務取締役に就任して以降である。同社としても、新たに長尾榮次氏を迎え入れたからには、経営の環境も整えなければならない。収益性重視の経営方針へと転換を行った。

 経営陣の奮闘もあり、収益面は改善。過去の業績を記した資料を見ると、12年3月期の売上高は2億6,807万円に対し、経常利益は1,518万円と1,000万円台を確保している。以前から比べると低調ではあるものの、その後の業績を見る限りでは、利益が確保できる企業体質となっているのがわかる。

企業体質が改善され強固な財務内容に変貌

 同社の事業の柱は、官庁からの公共工事と民間受注。16年3月期の受注比率は公共工事32.4%、民間元請55.9%、下請11.7%となっている。公共工事は「岡垣町中学校トイレ改修工事7,616万円」「宗像市東郷駅南口駅前シャッター整備4,397万円」などを受注。民間受注では「学校法人信愛学園増築工事1億7,300万円」などがある。

 直近3期の受注傾向としては、3期連続で公共工事は減少傾向にあるが、民間受注は病院関連新築工事や学校法人などの増築工事などの受注を行っており、民間からの受注は2期連続の2億円台を確保している。

 さらに業績を詳しく見ると、同期の売上高は4億373万円と、15年3月期の5億1,056万円から約1億円の減収となったが、材料費の圧縮や外注費の見直しなどで売上総利益9,468万円(同率23.45%)を計上。前期比1,400万円増となった。4,070万円の営業利益を計上し、当期利益は2,489万円となった。直近3年間の営業利益率の平均は8.23%、当期利益率の平均は4.39%と健闘している。

 01年3月期前後には、有利子負債2億5,000万円を抱えていた同社だが、現在では一掃されており、無借金経営を行っている。自己資本比率は55.46%、流動比率204.74%、当座比率197.81%、固定長期適合率15.88%と、財務の安全面は保たれている。

好調なうちに建設業の廃業をお薦めする

 もともと公共工事依存型であった同社は、公共工事の抑制と市場の低迷影響を受け、業績が急速に落ち込んだ過去を持つ。近年では好調な設備投資の影響で民間受注も多く、収益面も好調である。そのおかげで強固な事業基盤を形成しているが、地場に特化した営業のため、過去と同じように市場の冷え込みにより、また落ち込む可能性がある。しかも代表をはじめ高齢化が進んでいることが、大きな懸念材料である。

 ここで1つの選択肢として、建設業の廃業という道はどうだろうか。他社では、建設業から駐車場経営を始めた例もある。好調な時期であるからこそ、次なる事業展開を視野に入れてみるのもいいだろう。

(了)
【道山 憲一】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:長尾 榮次
所在地:福岡県宗像市田熊4-13-6
設 立:1949年10月
資本金:4,750万円
売上高:(16/3)4億373万円

 

(前)

関連記事