2024年04月26日( 金 )

老舗の意地で復活 多様な事業展開の道を拓く(前)~日新建設(株)

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 福岡県宗像市に本社を置き、創業93年という長い業歴を持つ日新建設(株)。厳しい建設業界の市場低迷に苦しんだ時期もあったが、近年では好調な受注をもとに業績は回復傾向にある。実際、市場の冷え込みの到来時に耐え得る事業基盤は構築できたのか。現状をもとに同社の今後を探る。

一族で経営の礎を築く

広い敷地を持つ本社

 日新建設(株)の創業は1924(大正13)年6月で、93年という長い業歴を持つ。49年10月に(有)日新建設として法人化され、代表取締役に中野良蔵氏が就任。同社の礎を築いた。その後、68年1月に中野良人氏が代表取締役に就任。中野一族による事業継承が行われ、経営を担ってきた。86年9月には株式会社として組織変更し、さらなる事業展開を図る。同社では、長らく中野一族による経営が続いていたが、96年4月に中野良人氏の妹婿で、JR九州で駅長を歴任した長尾榮次氏を専務取締役に迎え入れ、2003年4月に同氏が代表取締役社長に就任。現在では長尾榮次氏が経営の舵取りを担っている。
 同社役員は代表以下4名が在籍しているが、そのうち非常勤は1名のみ。株式は長尾榮次氏が285株を所有し、同社の筆頭株主。長尾禮子氏を含む3名が152株、中野政次氏が114株、中野和幸氏が95株を所有しており、同族会社の部類に入る。
 同社は、宗像地区を中心に建築工事を主体とした事業を展開。鉄筋、鉄骨、木造の新築、増改築、リフォームまで多くの実績を持つ。公共工事は以前から得意分野としており、学校関連の大規模改造工事や施設新築工事などを手がけている。

公共工事主体が仇となり低迷した過去

 直近3期の業績においては、4~5億円台の売上高で推移している同社。経常損益段階でも2,000~3,000万円の利益を確保しており、経常利益率も5~8%台で推移。収益面の好調さがうかがえる。
 ここで、16年前となる01年3月期の同社の業績を振り返ってみよう。当時の売上高は3億3,960万円だが、経常利益は131万円、同利益率は0.38%と、ずいぶん低い収益性に甘んじている。建築工事がほぼ100%という受注構成は現在と変わらないが、当時は官庁からの公共工事が約80%を占めていた。そしてこのころ、かつては8億円を超える受注高を誇っていた同社の受注高は年々減少傾向に陥っており、完工高は2億円台まで落ち込んだ。その原因は、主力としていた公共工事の抑制の影響や、リーマン・ショックの影響で冷え込んだ市況による競争の激化など。01年3月期は有利子負債も約2億5,000万円と月商換算で約8.5カ月分を抱えるなど、厳しい経営状況となっていた。

(つづく)
【道山 憲一】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:長尾 榮次
所在地:福岡県宗像市田熊4-13-6
設 立:1949年10月
資本金:4,750万円
売上高:(16/3)4億373万円

 

(後)

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