2024年03月29日( 金 )

朝鮮半島の非核化交渉の裏で動き出した統一朝鮮囲い込み戦略:主役は中国とロシア(後編)

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2018年6月1日付の記事を紹介する。


 ところで、金正恩と2度にわたる事前交渉を行ったポンぺオ国務長官は「核を放棄すれば、経済的発展を支援する」と約束。北朝鮮の求める経済発展に欠かせないのが、未開発の地下資源であるが、そこに熱い目を向けているのも中国である。

 中国は2030年にはアメリカを経済面で凌駕するという国家目標を掲げる。その象徴的な原動力が「一帯一路計画」であろう。中国には「要想富、先修路」ということわざがある。「豊かになりたければ、先ず道路を整備せよ」という意味だ。インフラ整備を通じて、自国内に限らず、世界に覇を唱えようとする「中国の夢」とも合致する。これまでのアメリカ主導の国際秩序を中国式に塗り替えようとする大胆な試みにほかならない。

 その背景には1970年代まで貧しい国だったのに30年でアメリカと肩を並べるまでに経済発展を成し遂げたという自信と野心が感じられる。日本では中国の台頭を「新たな脅威」と受け止め、警戒する向きもあるが、朝鮮半島の非核化や安定化に関しても中国の関与は無視できない。いうまでもなく、日本にとって中国は今や最大の通商貿易相手国となった。ここは冷静に中国の動きと、その意図を分析し、Win-Winの関係を目指す時であろう。

 中国政府は本年5月にはフィリピンからだけで50万人の労働者を受け入れると発表したが、国内経済の拡大にともなう労働力不足を補うためでもある。それほど大きな国内市場を抱えているわけだ。しかも、「エコロジー文明」を標榜し、その趣旨を憲法にも明記した。この分野では日中の協力の可能性が高い。実際、日本から学んだ新幹線技術を応用し、中国全土に高速鉄道網を整備した中国。今では、その流れを進化させ、風力自家発電で時速500キロの高速移動を可能にしつつある。翼を付けた高速鉄道であり、日本の協力の下、実験が加速している。

 そして、先の19回党大会において、習近平は憲法を改正し、終身国家主席の座を維持することを可能にした。要は、西側諸国で見られる「レームダック化」から無縁な絶対的権力を手中に収めたといっても過言ではない。そうした国内の政治基盤を固めたうえで、今や「一帯一路計画」を通じて、アジアとヨーロッパを結ぶ新たな物流インフラの建設に余念がない。実現すれば、世界人口の60%、そして世界経済の45%をカバーすることになる。この計画には国連始め、100を越える政府や国際機関が協力文書にすでに署名をしている。

 また、中国の目指す「一帯一路」経済圏には中東やアフリカも含まれる。昨年、1,500人のお供を連れて日本を訪問したサウジアラビアのサルマン国王だが、東京から北京に移動すると、中国との間で日本以上に経済、軍事の両面にわたる協力関係の強化に努めた。


※続きは6月1日のメルマガ版「朝鮮半島の非核化交渉の裏で動き出した統一朝鮮囲い込み戦略:主役は中国とロシア(後編)」で。


著者:浜田和幸
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