2024年04月28日( 日 )

朝鮮半島の非核化交渉の裏で動き出した統一朝鮮囲い込み戦略:主役は中国とロシア(前編)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、2018年5月25日付の記事を紹介する。


 アジアを始め、世界各地でパワーバランスが大きく変貌を遂げ始めている。6月12日にシンガポールで開催されることになっていた米朝首脳会談の雲行きが怪しくなってきたのも、その影響であろう。「世界の警察官」を豪語したアメリカが国際舞台から徐々に距離を置き、「アメリカ・ファースト」に傾く中、中国による国際的な影響力の拡大が目覚ましい。今回の米朝首脳会談をめぐるドタバタ劇の舞台裏にも中国の影が見え隠れする。トランプ大統領は今夏に予定する環太平洋合同演習(リムパック)への中国海軍の招待を取り消すと言い出した。これは2014年以降初めてのこと。

 その決定と時を同じくするように、ホワイトハウスを訪れた韓国の文在寅大統領との記者会見で飛び出したのがトランプ大統領による次の発言であった。初の米朝首脳会談の行方について、記者団の質問を受け、「どうなるか分からないね。今回ダメでも、次がある。交渉(ディール)なんて、そういうものさ。ダメ元で臨んだらうまくいったことも多々あったしね。こちらの条件が満たされなければ、とりあえず首脳会談はありえない」と答えた。

 突然の方向転換発言に困惑した文大統領は必死で、トランプ大統領をもち上げ、「米朝首脳会談を成功させ、世界の歴史に名を遺す偉大な功績を上げていただけるものと確信している」と、自らがお膳立てをしてきた米朝首脳会談の実現に望みを託した。先に平壌で金正恩と面談した鄭義溶国家安全保障室長も「99.9%の確率で予定通り米朝首脳会談は開かれるものと思う」と記者団に語った。

 同じく、2度も金正恩委員長と会談し「核廃棄に関する本気度」を確認してきたポンペオ国務長官も「シンガポールでの首脳会談に向けて万全の態勢で準備を進めている」と援護射撃に努めていた。何しろ、ホワイトハウスではトランプ大統領と金正恩委員長が向き合う横顔をデザインした記念コインまで製造し、実現すれば歴史上初となる米朝首脳会談を盛り上げようと動いてきた。

 とはいえ、この「チャレンジ・コイン」には金正恩の肩書を「最高指導者」と刻印してあるため、国内の反体制派と目される12万人を強制収容所に押し込んでいる人物をトランプ大統領と同等に扱うのはおかしい、との指摘も出ている。すでに500枚ほどが準備されているが、お蔵入りになるかもしれない。しかし、逆にコレクターにとっては貴重な珍品として高値で取引が行われる可能性も高くなるだろう。

 いずれにせよ、水面下を含め、さまざまな努力と準備が重ねられてきたにもかかわらず、なぜ直前になり「延期」あるいは「中止」という話になってきたのだろうか。北朝鮮に言わせれば、「米韓合同軍事演習に核搭載可能な戦略爆撃機B-52を投入したのは、わが祖国に対する先制攻撃の意図がありありで、先の板門店宣言の南北和平合意の精神を踏みにじるもの」。北朝鮮の得意とする揺さぶり交渉である。なかなかの交渉上手と言わざるを得ない。

 実は、その板門店での南北首脳会談の席上、文大統領は金委員長に密かにUSBを渡していた。その中身は「朝鮮半島における新たな経済発展の見取り図」。3正面における南北の経済協力の未来が描かれていた。第1正面は中国、第2正面はロシア、そして第3正面が韓国という構想である。将来の南北統一に備え、これら3正面に各々経済発展特区を建設し、アジアと中央アジア、ヨーロッパを結ぶ物流拠点にしようという計画だ。

※続きは5月25日のメルマガ版「朝鮮半島の非核化交渉の裏で動き出した統一朝鮮囲い込み戦略:主役は中国とロシア(前編)」で。


著者:浜田和幸
【Blog】http://ameblo.jp/hamada-kazuyuki
【Homepage】http://www.hamadakazuyuki.com
【Facebook】https://www.facebook.com/Dr.hamadakazuyuki
【Twitter】https://twitter.com/hamada_kazuyuki

 
(後)

関連記事