2024年05月10日( 金 )

レベルアップした姿を見てほしい 念願の新病院開業

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(医)輝栄会 福岡輝栄会病院 理事長 中村 吉孝 氏

 ――移転開業おめでとうございます。地域の期待は大きいですね。

中村吉孝理事長

 中村 当病院は父の代から数えて57年間、香椎宮前で診療を行ってきました。このたび大きなチャンスを得て、千早4丁目に移転新築することができました。これもひとえに皆さま方のお力添えがあったからだと感謝しております。

 新病院は、機能的な部分とアメニティにも配慮してつくりました。病室は4床室が多いですが、個室的な雰囲気、プライバシーに配慮した設えを目指しました。外来の動線や費用計算の短縮など、全体的に使い勝手の良い、利用者にとって快適に診療を受けられる場所になっていることを願っています。

 ――先代が開業して50数年経過しますが、病院を引き継いで、どれぐらいになりますか。

 中村 私が病院を引き継いで12年になりますが、引き継いだのがまだ昨日のことのように感じられます。本当にあっという間でした。それだけ医療に没頭してきたということだと思います。

 引き継いでからは、現場医療、そして病院経営を行う、いわばプレーイングマネージャーです。病院経営は病気や傷病を治療することはもちろん、地域の雇用を支えるという意味で、医療機関のはたす役割は大きいと感じています。介護はロボットではできません。人が人の手でお世話をせざるを得ません。50年、100年先でも事業としては必要とされる領域です。

 ――民間病院はそれぞれ特長を打ち出しながら、地域住民に医療を提供しています。

 中村 現在、民間病院は岐路に立っています。公的病院はほとんど建替えが終わっています。補助金のない民間病院でも、地域の医療ニーズに対応するためには、どうしても一定の設備投資は避けられません。父が創業したこの地で仕事をするのであれば、厳しい道を選ぶべきではないかと思いました。

 ――病院経営の現状は以前と比べると、どのような変化がありますか。

スタッフステーション

 中村 先代、父の時代は経営のことをあまり考えなくても利益が残せていたころもあったと思いますが、今は違います。医療費の問題もありますが、総じて世間の見る目が厳しくなったと感じます。施設の充実や細やかなサービスも求められます。民間病院で大きく成長しているところは、経営者の気概が違います。私も病院を運営する意義や責任といったものを意識しながら、取り組んでいきたいと思います。

 ――新病院開業に向けた新たな取り組みはありますか。

 中村 地域包括ケアシステムの構築を掲げます。これまで二次救急病院として、救急車で運ばれてきた患者さん、特別養護老人ホームで急変した患者さんを中心に受け入れてやってきました。今後は、地域のクリニック、訪問看護ステーション、介護事業者に何かあったときに、ファーストチョイスで当病院に連絡をいただけるような位置づけにもっていきたいと考えています。「検査や入院が必要な際は、輝栄会へ!」と言っていただけるようにしていきたいのです。

 そのためにも、輝栄会の日ごろの活動状況の報告や新しく入職した医師の紹介など、積極的に外に働きかけていきます。地域の方のなかには、「何かあれば、○○病院へ」という有事の際の選択肢が存在します。その選択順位を上げていきたいという考えです。すでにたくさんの方に当病院を利用していただいておりますが、いつでも頼れる医療機関にしていかないといけません。

 ――選ばれる病院になるために必要なことは?

 中村 療養環境を整えることと、医療水準を上げること。この2つを、同時並行して進めていくのが目標です。新病院の設計に関しては、日当たりや病院周辺の環境も考慮しました。部屋の広さもできる限り、大きくとりました。最新のMRIなども購入しました。快適な療養環境と高い医療水準。この大きな2つがあるうえで、対応する医師や職員のサービスも改善していかないといけません。新病院となれば、療養環境のレベルアップは可能です。

 いくら地域と連携を進めても、利用者の満足度が低ければ、次にはつながりません。「輝栄会にきてよかった」といわれるようになるためには、やはり診療での満足度を上げていくしか方法はありません。地域連携を強化してきた今、新病院開業と同時にトップギアで駆け抜けたいという想いです。

2016.12地鎮祭

2018.6内覧会

【東城 洋平】

福岡市の副都心「千早」に医療拠点完成

 建設予定地に、新病院建設の標識が設置されたのが2015年7月。着工は同年12月予定となっていたが、熊本地震の発生で補助金の交付決定が遅れた。16年8月中旬にようやくその決定通知が届き、着工へと一歩前進。9月、病院新築ともなう建築元請業者選定の説明会が開催された。入札説明会には6社ほどが参加。最終的に応札したのは大和ハウス工業(株)と(株)安藤・間の2社。10月に2社によるプレゼンが実施された後、総合評価方式で施工者は安藤・間に決定。当初は2期工事まで想定した段階的な移転計画だったが、最終的には一度に全移転する方向性で固まった。12月に地鎮祭を開催。医療法人を始め、新病院建設の設計・監理の(株)伊藤喜三郎建築研究所、同施工の(株)安藤・間のほか、金融機関ら30名を超える関係者が参列した。病院関係者は節目を迎えた安堵の表情を見せた。工期は約17カ月間で、開業は18年6月を見込み、工事はスタートした。

 病院側の要望、それに応える設計施工、関係者の思いの詰まった17カ月はあっという間に過ぎていった。計画通り18年5月末、竣工引き渡しが実施。6月初めに新・福岡輝栄会病院で内覧会が開催された。内覧会には建設関連会社や従前の取引業者など多数が来場した。内覧の際にも、オープンに向けて、院内では慌ただしく医療機器の搬入などが行われていた。開業を待つ施設を見学すると、まず目に飛び込んできたのは病院とは思えない、ホテルのような雰囲気のエントランス。通常、1階受付では精算と診察を待つことが多いが、新病院では受付そばに階段があり、受付を済ませると2階に上がる。1階で待つのは精算の方のみとなり、機能的な動線が配置されている。病室はおもてなしを重視したつくりで、4床室でもゆったりとした空間が設けられている。スタッフステーションがガラス張りとなっており、患者が声をかけやすい環境になっている。
 新病院は6月18日に移転開業し、外来診察は6月20日から始まった。

<Information>
(医)輝栄会
理事長・院長:中村 吉孝
所在地:福岡市東区千早4-14-40
設 立:2007年4月

 (医)輝栄会は1961年1月、中村孝秀氏が中村小児科診療所を個人創業したのが始まり。その後、病院名を中村病院へと改称し、診療科目を増やしながら、増床を行ってきた。そして、現院長が事業を引き継いだ後、2007年4月に(医)輝栄会を設立し、病院名を「福岡輝栄会病院」に改称した。現理事長で院長としては2代目となる中村吉孝氏は、福岡大学医学部卒後、福岡大学病院で外科医として入局。その後、九州大学附属生体防御医学研究所病院、国立病院がんセンター、㈶天理よろず相談所病院を経て、現法人の設立に至る。

<新病院の概要>
診療科目:17科目
敷地面積:5,421.53m2
延床面積:1万5,237.20m2
建築面積:3,997.22m2
階数:7階建て
駐車場:4階建て90台
病床数:259床
外来診察室:20室

 

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