2024年05月15日( 水 )

事業拡大のため踏み切るM&A すべての住宅需要を引き受けられる会社へ(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

(株)アイケンジャパン
代表取締役 中島 厚己 氏

 (株)アイケンジャパンは4月12日、イオスコーポレーションの全株式取得によるM&Aを発表した。今回のM&Aの目的は事業拡大。現在、全国主要8エリアで投資用アパートの企画・販売を手がけるアイケンジャパンは、住宅に関するすべてのことを一手に引き受けられる企業を目標に、事業の拡大を図っている。
(聞き手:(株)データ・マックス 専務取締役 緒方 克美)

M&Aの選定基準は業績と企業文化

 ──貴社は4月12日、イオスコーポレーションの全株式取得によるM&Aを発表されました。この買収にはどのような意図があったのでしょうか。

 中島厚己氏(以下、中島) 当社は2006年8月の設立から昨年で15周年という節目を迎え、会社の次なる展開として「住宅に関するすべてのことを、当社およびグループのなかで完結できる」という姿を目標に進み始めていました。「アパートを買いたい」「家を買いたい」「リノベーションをしたい」「仲介してほしい」…。そのすべての需要に応えられる会社にしたい。そのために必要だと思ったのが戸建事業だったのです。戸建とアパートにはシナジー(相乗効果)があります。アパート事業者も戸建事業者も、それぞれが異なる基準をもち、常に土地を探している状況です。蓄積した土地情報の交換はもちろん、工務店などの業者情報を共有することもできますし、戸建事業は当社の成長に欠かせないものだと感じていました。

左:(株)アイケンジャパン 代表取締役 中島 厚己 氏
右:(株)イオスコーポレーション 代表取締役 伊藤 治 氏

 ──M&Aを行う際、さまざまな会社が候補に挙がります。その候補のなかでイオスコーポレーションを選んだ理由は何でしょうか。

 中島 決め手は、当社とイオスコーポレーションが「似た者同士」であったことにあります。

 創業の地が同じ(福岡市中央区六本松)だったこと、創業時期が1年違いだったこと(イオスコーポレーションは2007年10月設立)、社風や経営指針が似ていたこと…。さまざまな共通点からご縁を感じました。M&Aはいうなれば「結婚」ですから、業績や事業内容の観点も必要ですが、会社の雰囲気が合わなければうまく行きません。そのため、企業選定の際には社風や経営指針の部分を重視しました。この観点を失っていると、「M&Aできたはいいものの、社員同士のそりが合わない」という事態が発生する可能性が否めません。

 両社の社風に共通するのは、優しく、まじめであること。イオスコーポレーションの社員の皆さんにこれまで何度もお会いしてきましたが、まるで、長年付き合ってきた社員同士のようでした。また、伊藤治社長自身も優しい方で、社員が失敗しても、それを怒らないと思います。私もこれまで社員教育において「失敗しても責めない」という手法をとってきました。そのスタンスが同じであることはとても大きかったのです。

 当社のM&Aはイオスコーポレーションで3社目。まだまだ経験が浅いですし、手探りで進めているところです。

 これまで数回、交流会を開催しました。その様子を見ていると、社員同士の相性の良さを感じます。やはり社風が似ていると、自ずと似た考えの社員が集まってくるのです。先日、イオスコーポレーションの新入社員(新卒~入社3年目)の皆さんと話す機会がありましたが、ネガティブ思考の人はいませんでした。「M&Aについては、正直不安はありましたが、中島社長を見て安心しました!」と声をかけてくれました。若手社員にとってM&Aは未知の存在でしょうから、せっかく入った会社がなくなってしまうのではないかという不安に駆られていたのだと思います。

 ──今後もM&Aは続けていかれるのでしょうか。

 中島 継続予定です。どの事業においても時間をかければ成長することはできますが、悠長に待っていることはできません。私は独立して15年かけ、100億円近くの売上高まで到達することができましたが、200億円を目指そうとするならばさらに10年ほどかかることになるでしょう。M&Aは「時間をお金で買う」行為なのです。

 たとえば、当社のなかでイチから戸建事業を始め、売上高40億円を目指そうと考えると、伊藤社長でさえ15年かかっていますから、当社でも同等あるいはそれ以上かかってしまうかもしれません。今回のM&Aは、この15年という時間を買ったのと同義であると考えています。

(つづく)

【文・構成:杉町 彩紗】


<プロフィール>
中島 厚己
(なかしま・あつみ)
1965年生まれ、大分県出身。長年、不動産業界に身を置き活躍するなかで理想のアパート像と経営像が生まれ、これを実現するために会社を興す。その当時、人の大切さを学び、現在の社風づくりに生かしている。とくに家庭を大切にするのが信条。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:中島 厚己
所在地:福岡市中央区天神2-7-21
    天神プライム12F
設 立:2006年8月
資本金:1億円
売上高:(21/6)約92億円
URL:https://aikenjapan.jp/

(後)

関連記事