2024年03月28日( 木 )

事業拡大のため踏み切るM&A すべての住宅需要を引き受けられる会社へ(後)

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(株)アイケンジャパン
代表取締役 中島 厚己 氏

 (株)アイケンジャパンは4月12日、イオスコーポレーションの全株式取得によるM&Aを発表した。今回のM&Aの目的は事業拡大。現在、全国主要8エリアで投資用アパートの企画・販売を手がけるアイケンジャパンは、住宅に関するすべてのことを一手に引き受けられる企業を目標に、事業の拡大を図っている。
(聞き手:(株)データ・マックス 専務取締役 緒方 克美)

原価上昇は今後も続く 「待っていても下がらない」

 ──建設業界では原材料費を中心に原価が上昇しており、「下がるのを待つ」という選択肢を取られている方が多いですが、これについて中島社長はどのように思われますか。

 中島 原価が下がるのを待っていても、下がらないだろうというのが私の見立てで、今後は物価が上がるのだと思います。これまで日本経済では十分に物価が上がり切らず、物価が30年間変わらないという異常事態に陥っています。今後は人件費も高くなるでしょうし、資材も高止まりしたままでしょう。原価率が高い商売である不動産・建設関係はとくに打撃を受けつつあり、家賃の上昇も予想されます。業界全体で、上げたくなくても上げざるを得ない状況となってしまうのではないでしょうか。

売上を落とさない要因は社員のモチベーション

──営業社員は常に数字(売上)に追われており、上司から日々の結果を求められるのが一般的です。そのようななか、貴社は数字ありきではない考え方をされているのですね。

 中島 数字を追いかけてしまうと、手を出してはいけないことに手を出す人が100人に1人や2人は出てきてしまいます。してはいけないことをしますし、言ってはいけないことを言ってしまう。これらのたった1つで会社は足をすくわれるのです。

 入居者が喜ぶモノやサービスを提供することが、オーナーの皆さまに利益をもたらします。その両者が喜んでくださることが、結果的に我々の喜びにつながります。まずは入居者が喜んでくれる物件をつくる。そのために魅力的な土地を探しますし、企画もつくります。入居者が喜ぶ物件づくりを徹底していけば、ちゃんと入居者が決まります。この実績の積み重ねが、オーナーの皆さまが当社に期待を寄せてくださる理由になります。「アイケンジャパンなら良い物件をつくってくれる」と思ってくださるので、オーナーの皆さまからの支持が厚く、売れ残るどころか、むしろ供給が追い付かずにお客さまをお待たせしている状況です。このような良い循環があるため、売上を追わずとも1年前倒しで予算を達成しているのです。

 当社の支店のなかには予算を達成しているところもあれば、達成していないところもあります。しかし、未達成の支店があったとしても、「残念でしたね。次頑張りましょう」という程度で済ませてしまいます。一切追及しない。一般的な会社だと「なんでだ!努力が足りない!」と支店長が激怒され、責め立てられることがあるのではないでしょうか。しかし、それでは何も解決しません。社員たちはすでに努力しているのですから。

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──その言葉から、中島社長の社員に対する厚い信頼が感じられます。

 中島 本気で探してこなければ、「良い土地」は見つかりません。当社の社員は本当に仕事と会社が好きで、「うちでやっている内容なら絶対に間違いがない」という自信をもっています。そのため、「他社に土地を買われる前にうちが買って、そのアパートを売ってさしあげなければ!(自社のアパートでなければ入居者もオーナーさまも幸せになれない!)」というくらいに思っているようです。

 私をはじめ、会社全体でリモートワークを実施しており、現在も全社員のうち50%は在宅勤務です。しかし、それでも売上は変わっていません。それは各社員がもつ熱量のおかげです。

 また、仕事において「待つ」という方法を私がためらいなく選ぶことができることも奏功しているのかもしれません。個人においては、私は非常にせっかちです。しかし、仕事では「待つ」。成長のために2~3年という長い時間は必要なものだと思っているので、成果を即座に出すことに固執していません。

 私は社員を信用していますので、ストレスがたまりません。そして、社員たちは私からの信用を実感し、「期待を裏切れない」と思って仕事に取り組んでくれています。ノルマは当社には必要がないのです。

 この社員に対する態度においても、当社とイオスコーポレーションは近い感覚にあります。伊藤社長は温厚な方で、怒ったところを見たことがありません。さらに、気が長いのだと思います。「失敗は自分の責任、成功は部下の功績」というタイプで、社員がついていきたいと思うことに納得がいきます。

 前述の通り、当社も同じ教育方針をもっていますので、この価値観が共有でき、お互いにわかり合えるのだと思います。イオスコーポレーションのノウハウを学び、住居の需要を一手に引き受けられる企業になるよう、今後も邁進してまいります。

(了)

【文・構成:杉町 彩紗】

(株)イオスコーポレーション 伊藤治社長のコメント

「福岡都市圏を網羅する事業拠点設置を終え、次の成長戦略を練るタイミングでアイケンジャパンさんとのご縁をいただきました。業種は異なりますが、お客様第一主義で住環境を提供する情熱、想いは共通しております。お互いの強みを掛け合わせ、一層の飛躍を目指します」。

左:(株)アイケンジャパン 代表取締役 中島 厚己 氏
右:(株)イオスコーポレーション 代表取締役 伊藤 治 氏

アイケンジャパングループ

(了)

【文・構成:杉町 彩紗】


<プロフィール>
中島 厚己
(なかしま・あつみ)
1965年生まれ、大分県出身。長年、不動産業界に身を置き活躍するなかで理想のアパート像と経営像が生まれ、これを実現するために会社を興す。その当時、人の大切さを学び、現在の社風づくりに生かしている。とくに家庭を大切にするのが信条。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:中島 厚己
所在地:福岡市中央区天神2-7-21
    天神プライム12F
設 立:2006年8月
資本金:1億円
売上高:(21/6)約92億円
URL:https://aikenjapan.jp/

(前)

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