2024年05月17日( 金 )

ライフデザイン・カバヤが推進する新建材・CLT

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難燃性と耐震性

 「日本CLT協会の試験に加えて当社でも独自に試験を行い45分準耐火の認定を取得しています。耐火試験では毎分1mmの速度で燃え進むことがわかりました。それを踏まえて90mmのCLTに30mmのCLTを1層分プラスしプラスした30mmは『燃え代』として構造計算から外して設計することで、1層目が燃える30分の間に人の避難が終わることができれば、構造にかかわる部分は火災により損なわれないので建物も崩れない計算になります」(02)というように、懸念される燃えにくさについても説明する。

(02)燃焼実験
(02)燃焼実験

 耐震性については、「ライフデザイン・カバヤのCLTを使った住宅では従来『耐震等級3級相当』と説明してきましたが、今年5月に発売を開始した新たな木造軸組工法『CLTハイブリッド構法』を採用した、新築住宅商品『カバヤホーム』ブランドにて耐震等級3を確保。全棟構造計算を実施し、安全性の見える化を図っています」(丹原氏)という。(03)

(03)つくば振動台実験
(03)つくば振動台実験

 耐震等級3とは最も高いレベルで、震度6強~7レベルの1.5倍に耐えられるという耐震性の指標。災害時の救護活動の拠点となる消防署・警察署などの建物の基準となっている(「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」(2000年施行)より)。

 CLTと鉄の強度について調べてみると、べいまつ36.0、ひのき33.6、すぎ26.4(いずれも一等級、単位:N/㎟)と国土交通省の「構造計算に用いるCLTパネルの基準強度の拡充(強度区分の追加)」(19年3月施行)に記載がある。これは鉄(SS400)の235(単位:N/mm2)に比べて数値上では劣るものの自重比強度(自重に対する強度)では、CLT2,250に対し、鉄509(いずれも単位:kgf/cm2)とCLTのほうが鉄の約4.4倍強いということだ。地震の際の水平力は重さに比例するので軽い方が有利だ。つまり、地震に対して鉄よりも約4.4倍強いという計算になる。

課題は認知度と価格

 「まだまだCLT自体の認知度が低いことと価格が高いこと」をCLTが現在抱える課題として丹原氏は挙げる。丹原氏は、「社内団体である『日本CLT技術研究所』を立ち上げ、全国にフランチャイズチェーンを展開しオリジナルCLT構法である『LC-core構法』を提供。難解な構造計算は加盟すれば無償で使用できる構造計算ソフトを用い、リアルタイムで構造計算をしながら意匠の決定が行えるようにしました」と普及への問題解決案を示した。

 なお、「価格に関しては全国へフランチャイズチェーン展開を行い、勇士を募ることでスケールメリットを生かし、今後価格を下げていくよう活動を行っています」とのことだ。

 また、柱と梁が基本の「線設計」とCLTなどの「面設計」になるとすべてが根底から変わってしまうため、設計・施工の熟練度も大きく関わる。構造計算する際によく使われる材質の性能を表す「断面二次モーメント」や「断面係数」などの数値は、鉄についてはよく見るが、木材については調べたことすらないという設計士も少なくないだろう。

 最後に丹原氏は、「日本の街並みを変えていきたい。新幹線から見える街並みはどこも同じで、高度成長期に建てられた質より量の建物が多い。統一されたヨーロッパの街並みのように都市のなかに木造を普及していきたい」と意気込みを語ってくれた。

【外部ライター・奥野 晃市】

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