2024年05月19日( 日 )

福岡市営地下鉄の現状と課題(中)

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運輸評論家 堀内 重人

 福岡市の鉄道はJR、西鉄、地下鉄の3路線が担っているが、人口160万人を擁する日本有数の大都市にしては不足している感が否めない。地下鉄がもう2、3路線必要であるように思われるが、建設には莫大な費用と時間を要するうえ、需要が少ない地域では、費用対効果の観点から七隈線のようなリニア駆動のミニ地下鉄でも導入は難しい。そこで注目したいのが、建設費が安く工期が短いLRT(Light Rail transport)である。近年の軌道法の改正により、福岡市が建設を行い西鉄が運営するという「公設民営」による整備が可能となった。本稿では、地下鉄では採算性に問題の残る地域や補完輸送の手段として、このLRTの整備も視野に入れて考察する。

企画乗車券類の設定

 回数券は福岡市営地下鉄が開業した時から設定されていたが、企画乗車券として1995年5月8日に「えふカード」が導入された。このカードは、事前に運賃としてまとまった金額を支払い、自動改札を通過するたびに残金が表示されるという、現在のIC乗車券の前身であるストアードフェアシステムである。利用促進のため、1995年8月1日から「1日乗車券」が、1999年4月1日からは西鉄との共通乗車カード「よかネットカード」が導入された。

 2001年4月1日にはJR九州との共通乗車カード「ワイワイカード」が導入された。6月28日には、どこの駅で乗車しどこの駅で降車したのかが分かる入出場確認システムも導入。こんにちのIC乗車券の原型が確立した。

 これをふまえ、同年10月1日、回数券の販売が中止となる。IC乗車券の普及により、昨今では「回数券」を廃止する代わりにポイントを付与する交通事業者が増加しているが、福岡市交通局は他の事業者に先駆けて回数券の廃止を行ったわけである。回数券は発売に手間を要するが、IC乗車券は自動券売機で乗客がチャージすればよいため、事業者にとってメリットが大きい。

 同12月1日には地下鉄・福岡市営自転車駐車場共通定期券「乗っチャリパス」を導入。これにより、自転車と地下鉄のパーク&ライドが実現している。

 さらに2002年4月1日から西鉄天神大牟田線との連絡定期券導入を導入し、同年7月15日には「マイショットカード」をスタートさせた。そして2009年3月7日、IC乗車券「はやかけん」を導入。翌2010年3月13日からJR九州の「SUGOCA」、西鉄の「nimoca」、JR東日本の「Suica」との相互利用が開始され、利用価値がぐんと上がった。

 これに合わせて、同年3月31日、「よかネットカード」の発売を終了する。同時に「ワイワイカード」の発売も終了し、同年10月31日で両カードは利用できなくなった。2012年12月31日には「えふカード」の販売を終了した。

 「はやかけん」は、2013年3月23日からJR北海道の「Kitaca」、首都圏の民鉄系の「PASMO」、中京圏の民鉄系の「manaca」、JR東海の「TOICA」、JR西日本の「ICOCA」、関西の民鉄系の「PiTaPa」とも相互利用が開始されるようになり、利用価値がさらにアップした。それにともない、「えふカード」は同年10月31日で利用を終了している。

 福岡市の地下鉄はこのように、1980年代から1990年代の半ばまでは建設が主体であったが、1990年代の半ば以降は企画乗車券などを次々設定し、利用促進に重点を移していった。企画乗車券類も、最初は「回数券」から始まり、他社との連絡切符などへ移行したが、それらは紙媒体かプリペイド式のカード乗車券類であった。

 2009年に非接触式のICカードである「はやかけん」が導入され、徐々に他社との互換性を高めていった。相互利用が可能になると、従来型の紙媒体やプリペイド式の企画乗車券類は整理され、「はやかけん」が対応するようになる。このようにしてソフト面のバリアフリー化が進んでいったのである。

(つづく)

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