2024年05月20日( 月 )

コロナ禍で創出した新事業が急成長 組織改革が繋いだ社員の声を経営に活かす

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(株)ヒデトレーディング

新たな道を切り拓き続け、30年

(株)ヒデトレーディング 鈴木哲也 社長
(株)ヒデトレーディング
鈴木 哲也 社長

    2023年に創業30年を迎えた(株)ヒデトレーディング。福岡市東区に本社を構え、帽子とバッグをメインにさまざまなアイテムを手がける総合服飾雑貨メーカーである。大手量販店や有名セレクトショップを取引先として、OEM(受託生産)、ODM(受託設計・生産)を20年以上続けている。11年からはベトナムに設立した自社工場で、商品の企画・製造卸・輸入・販売までを一貫して行う。

 原材料の高騰や外国為替の変動に左右される日々を打開すべく、17年には自社ブランド「Schlaf(シュラフ)」「AMICLA(アミカル)」を立ち上げた(現在は「AMICAL.Schlaf」に統一)。納得できる価格で高品質な商品をユーザーに届けるために「自分たちで体験し、体験を通じて、新たな道を切り拓く」を理念を掲げ、ブランド展開をしている。トレンドに敏感な若い社員たちが、「かっこいい」「かわいい」と感じるものを企画、商品にも彼らの熱意と勢いが反映されている。ユーザーとともに成長をするブランドでありたいと、常にリアルな意見を取り入れており、「我々の仕事は、楽しくないとやっていけないですから」という同社の鈴木社長。社内が明るくなるよう、雰囲気づくりやシステム導入に時間を費やしてきたという。

コロナ禍を乗り越えた、新事業の成長

 同社は、コロナ禍で難しい経営判断を強いられるなか、大胆な対策により業績を伸ばした。行動制限が長期化することで、主力商品である帽子の需要が下がることを見越して、ベトナムの自社工場で布マスク製造を手がけることをいち早く決定する。航空便を利用して受注から5日で消費者に届けるようにした。これが爆発的な売上をもたらした。ただ、マスク生産は本業ではなく永続は不可能と判断してピーク時に撤退している。

 その後、キャンプ用品の製造販売に参入する。コロナ禍でも楽しめる遊びとしてソロキャンプやペットキャンプが大きなブームを巻き起こしており、キャンプを趣味にしている社員がいたことから立ち上げを決めたという。マスク販売時に開拓したECやB to C販売のチャンネルに乗せて事業化した。鈴木氏も社員とともにキャンプに行き、欲しいものや、あれば便利だと感じるものを商品開発し、現在アイテムは約100点に達する。帽子やバッグを展示していた本社のショールームには現在、主にキャンプ用品が置かれるようなっている。

本社ショールームの展示
本社ショールームの展示

 鈴木氏は、今後の見通しについて今がピークと冷静な分析を示す。キャンプ関連グッズは個人ブランドも含め急成長したが、そもそも需要が増えたのはコロナ禍で娯楽の選択肢が狭まったからであった。ただ、今後は市場として下降すると考えるのが自然としつつ、遊びとして定着したことでこの先は時代に合わせて変化すると予測する。女性キャンパーが増えたことや、インスタなどSNSでの映えが重視される傾向を踏まえ、鈴木氏は「最近は機能性より、ファッション的な価値が高くなる傾向にあります。よりデザイン力が必要で、「かっこいい」「かわいい」を強く意識しています。とはいえ、我々は流行をつくる側ではなく追う立場です。大手がつくっていく流行、新商品に付随するものを、これからも追いかけていきます」と語る。

1人ひとりの個性を尊重し、
基盤を固める

本社
本社

    同社では、社員がそれぞれの持ち味を発揮して活躍できるように、福利厚生の充実を始め、労働環境の整備に力を入れている。社員の平均年齢は20代と若く、女性の占める比率が50%を超える。釣りやキャンプ、バーベキューなどのアウトドアイベントも頻繁に開催されており、オフィスは明るく活気が溢れている。そんな同社だが、事業継承時には退職者が続出し、3年で人材が2回も完全に入れ替わるという組織崩壊の危機も経験したという。鈴木氏は時間をかけて、残業が当たり前という体制を変えるとともに、通常業務中の会話で社員が意見を自然と出せるような雰囲気づくりに取り組んだ。「実現できるかできないかはともかく、仕事にしろ福利厚生にしろ、まずは言葉にしてもらわなければ何もわからない」と積極的に発言をしてもらうそうだ。

 キャンプ用品のヒットはこうした組織改革の賜物だ。今では、アイデアをかたちにすることが追いつかないという。インスタグラムを活用し、一般ユーザーに意見を求めたり、インフルエンサーに使用感を発信してもらったりと、市場調査も怠らない。変化が早いSNSの活用に苦なく取り組めるのは、やはり若い社員が多いからだろう。

 「我々、昭和の世代とはだいぶ違う、と感じています。リーダーとなる人のタイプもさまざまです。成果がやりがいではない人も増えました。やる気のスイッチがどこなのかを見極め、個性にあったサポートが大事だと思います。もちろん、本人の意向通りに動くだけが育成ではないので、いつも試行錯誤しています」と鈴木氏。1人ひとりが、どこにやりがいを見出し、力を出せるかを注意深く見ている。そして、ヒーローのように大活躍する人よりも、地道に足場を固めて着実にステップアップしていくタイプの社員を増やしたいと考えている。能力以上に時間をかければそれなりに成果は出るが、それは維持できるものではない、常に良いパフォーマンスをするには余裕が必要で、余裕があれば仕事を楽しむことができ、アイデアも出やすいという。できる人間を集めると競争が激化し、退職者が出てくる。競争は悪ではないが、それでは組織としての成長は困難なのだ。

 鈴木氏も社長として多方面から学ぶ必要があると、福岡商工会議所や(一社)福岡県中小企業家同友会で学び、協同組合オロシアムFUKUOKAの理事を務めている。業種や年齢を越えて経営者同士で組織運営を勉強することで、気づくことがあったという。それらは同社の人材育成や不良在庫、営業に対する考えにも反映されている。

 現在、取り扱うアイテムは新作・定番・既存と合わせて約3,000点におよぶ。同社の時流を捉えた柔軟な経営と、若手の成長がもたらす展開に、今後も目が離せない。


<COMPANY INFORMATION> 
代 表:鈴木 哲也
所在地:福岡市東区多の津1-11-11
設 立:1993年5月
資本金:1,000万円
TEL:092-629-8850
URL:https://hides.co.jp

<RECRUIT> 
募集職種:営業、EC部
応募資格:高卒以上、学生不可
採用実績:2022年度/4人  採用予定:3人程度
問合せ先:https://hidetrading.work
採用担当:依田


<プロフィール> 
鈴木 哲也
(すずき・てつや)
1981年、福岡市出身。2002年9月に(株)ヒデトレーディング へ入社。12年11月、同社代表取締役社長に就任。趣味はバイク、アウトドア。福岡商工会議所や(一社)福岡県中小企業家同友会で学び、協同組合オロシアムFUKUOKAの理事を務める。

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