2024年05月20日( 月 )

地場中小事業者の味方として、地域経済の浮揚にも寄与

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佐賀商工会議所 会頭 陣内 芳博 氏

佐賀商工会議所 会頭 陣内 芳博 氏

事業承継への支援など、各種支援サービスを展開

 ──まず佐賀商工会議所の概要について、お聞かせください。

 陣内 当会議所は大隈重信侯が佐賀に帰郷した折の「佐賀と実業」という演説をきっかけとして、1896年9月に全国で43番目、九州で5番目の会議所となる「佐賀商業会議所」として誕生したのが始まりです。2年前の2021年に創立125周年の節目を迎えることができましたが、創立以来長きにわたって、佐賀の地場経済がより発展していくための手助けを行うべく、地場企業への経営支援はもちろんのこと、国や県・市に対する提言・要望活動や、まちづくりへの取り組みなど、地域の抱えるさまざまな課題解決に向けて取り組みながら、佐賀市の産業および企業の発展とともに歩み続けてきました。現在、会員数は2,561事業者(23年4月1日現在)となっており、会員事業者には商業、工業、建設、観光文化、金融・士業、不動産サービス、運輸、情報通信、福祉・医療の9つの部会のいずれかに属していただいて、さまざまな支援サービスの提供を行っております。

 ──会員事業者に向けては、どのような支援サービスを行っていますか。

 陣内 佐賀市の地場経済界においても、5類に移行したとはいえコロナ禍の影響がいまだ色濃く続く一方で、エネルギーや原材料の価格高騰の影響によって多くの事業者が厳しい経営環境に置かれており、予断を許さない状況にあります。併せて、働き方改革、DX対応、販路拡大、SDGs、脱炭素社会、災害対策など、多くの課題にも引き続き向き合っていかなければなりません。

 そうしたなか、我々商工会議所としては、多くの事業者への支援が最優先事項であるほか、人材確保支援も喫緊の課題であると認識しており、これらに主軸を置きながら、国などの行政の施策とともに、引き続き事業者に寄り添った「伴走型支援活動」に注力しているところです。当会議所の会員事業者に向けては、ビジネスチャンスを広げるための会員交流の場の提供のほか、中小企業の経営課題の解決や安定経営に向けた各種サポートや、税務支援や労務支援、情報提供、リスクマネジメントなど、さまざまな支援サービスを展開しています。

 そうしたなかでも、私が会頭になった1期目から取り組みたいことの1つとして掲げ、とくに力を入れて行っているのが事業承継に対する支援です。佐賀市においても、残念ながらコロナ禍の影響で個人事業者、とくに零細の飲食店などで廃業が相次いでいますし、後継者が見つからず、廃業の選択を余儀なくされるケースも多々あります。事業者がこれまで長年培ってきたノウハウはできるだけ残していただきたいですし、雇用の問題もあります。まずは可能な限り、親族や社員の方への承継を第一に考えて、それが難しければ第三者に引き継いでいただきたいと思っています。当会議所でも国からの委託を受けて「佐賀県事業承継・引き継ぎ支援センター」の運営を行っていますが、引き継いで事業をやってみようという意欲のある人を何とか支援していきたいと、県などとも協議を重ねているところです。

 やはり商工会議所は地場の中小企業の味方ということに軸足を置きつつ、行政や関係機関とも歩調を合わせて連携を強めながら、会員事業者に対して具体的かつ効率的、そして効果的な支援活動を行っていきたいと思います。

スポーツへの関心向上 国スポに期待

 ──今年5月に「SAGAサンライズパーク」が開業し、「SAGA2024 国スポ・全障スポ」の開催がいよいよ来年に迫ってきました。

 陣内 来年開催の佐賀大会より、これまでの国体(国民体育大会)から国スポ(国民スポーツ大会)へと名称が変更になりますが、佐賀の地で日本最大のスポーツの祭典が開かれるのは、1976年の若楠国体から数えて実に48年ぶりです。今回の国スポが国体と比べてどう変わるのかに非常に関心がありますし、国スポ開催を契機として相当数の人が佐賀にきてくれるのではないかと、期待しているところです。

 ただし、そうした“国スポ効果”を一過性のものとして終わらせてはいけないと思っております。現在、佐賀県では佐賀から世界に挑戦するトップアスリートを育成し、県民のスポーツ文化の裾野を広げることを目的とする「SAGAスポーツピラミッド構想(SSP構想)」に取り組んでおり、来年の国スポにおいて佐賀に競技力が根付く戦い方での天皇杯獲得を短期目標として掲げています。また、佐賀市を本拠とするプロバスケットボールチーム「佐賀バルーナーズ」が今年B1昇格をはたしたほか、J1で戦うプロサッカークラブ「サガン鳥栖」、女子バレーボールチーム「久光スプリングス」などの活躍もあって、スポーツに対する関心が佐賀県内でだいぶ高まってきているように思います。たとえば、私はバルーナーズが好きで、B1決定時の試合を観に行ったりしたのですが、佐賀市内・佐賀県内にこんなに若い人が大勢いて、みんなが必死になって応援している姿に少しびっくりしました。まだまだ佐賀も捨てたもんじゃない、と嬉しくなりましたし、スポーツ観戦に対するすごい盛り上がりを感じた次第です。いわゆる、スポーツをやる楽しさも大事ですけれど、観て、応援するという楽しさを、しっかりと県民に植え付けて定着するような、国スポ・全障スポになってくれることを期待しています。

 私自身、国スポ・全障スポの準備委員会では副委員長、SSP構想推進協議会では副会長を務めています。当会議所でも会員事業者の皆さんに「皆で一緒に盛り上げていきましょう!」といった呼びかけを行い、国スポ・全障スポを契機に佐賀がさらに活気づいていくような、そんな大会にしていきたいですね。

 ──国スポ関連以外で、商工会議所として行っているまちづくり・地域活性化への取り組みについてお聞かせください。

 陣内 当会議所でも、佐賀市の中心市街地活性化に向けた活動に対する支援や、県・市執行部とのまちづくりに関する継続的な意見交換会の開催などを行っておりますが、ことまちづくりに関しては、とくに青年部が中心となって取り組んでくれています。昨年度までは、あいにくのコロナ禍で思うように活動ができていなかったようですが、今年度からは柔軟なアイデアでの各種イベントや事業の開催などを期待していますし、我々もそれを後押ししながら、地域活性化やまちづくりへの貢献を行っていきたいと思います。

市の賑わい創出や、経済活性化に寄与

佐賀商工ビル
佐賀商工ビル

    ──佐賀市のポテンシャルについては、どう評価されていますか。

 陣内 現在の佐賀市は、平成の大合併で大和町、富士町、三瀬村、諸富町、川副町、東与賀町、久保田町と合併した結果、とても広大な市域を有しており、福岡市に隣接する北側は脊振山系の山々が連なるほか、市の中心部は広大な佐賀平野の真ん中に位置し、そして市の南側は有明海に面しています。こうした山から海までの豊かな自然環境に恵まれている田舎の良さをもつ一方で、大都市である福岡市に隣接しているという強みもあり、ポテンシャルはとても高いと感じます。また、有明海沿岸地域の福岡・熊本・佐賀・長崎の4県にまたがった自治体の商工会議所・商工会32団体で構成される「九州中部商工連合会」がありますが、九州全体を見渡したときに佐賀の位置づけというのは非常に良い場所だと感じています。これから有明海沿岸道路や九州佐賀国際空港の滑走路延長などの広域交通インフラの整備が進んでいけば、そうした立地的な優位性もますます高まっていくのではないでしょうか。

 残念ながら佐賀は、都道府県魅力度ランキングなどで常に最下位争いをしているイメージですが、その一方で「住みやすいまち」のランキングでは意外と上位に食い込んでいます。たとえば、全国大手企業の支店長などで佐賀に赴任してくると、皆さまなかなか佐賀から帰りたがろうとしません。私の知っている範囲でも、赴任してきて佐賀で家を建てた方が何人もいらっしゃいます。それくらい、実際に住んでみると住みやすく、非常に良いまちであることは間違いありません。現在、坂井英隆・佐賀市長がDX化の推進などによって、田舎の住みやすさと利便性の両方の良さを享受できる政策を進められていますが、こうした取り組みでもっとうまく強みを発揮できれば、今後日本において人口減が進んでいくなかでも、佐賀市の持続可能性を高めていけるのではないでしょうか。

 当会議所も佐賀市の地場経済団体として、行政などとの連携も強めながら、市内事業者への支援サービスの実施だけでなく、市全体の賑わい創出や経済活性化に向けて、もっと力となれるよう全力で取り組んでいきたいと思います。

【坂田 憲治】


<プロフィール>
陣内 芳博
(じんのうち・よしひろ)
1949年12月、佐賀市出身。早稲田大学政治経済学部を卒業後、72年4月に佐賀銀行に入行。常務取締役、専務取締役、取締役副頭取などを経て、2012年6月に取締役頭取に就任。18年4月から取締役会長を務める。19年11月に佐賀商工会議所の会頭に就任し、現在2期目。ほかに佐賀県商工会議所連合会会長や国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会佐賀県準備委員会の副委員長、SSP構想推進協議会の副会長などの数々の要職も務める。

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