WF地区再開発における交通インフラの方向性とは(前)
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福岡大学 工学部社会デザイン工学科 教授 辰巳 浩 氏
福岡市では現在、MICEやクルーズなどの需要に対して供給力を向上し、さらなる都市の成長につなげるため、水辺地区の再整備構想である「ウォーターフロントネクスト」が進められている。今年6月に報告された検討状況では、都市計画道路などの整備や駐車場設置、公共交通アクセスの強化などの交通対策についても触れられていたが、今後この地区では、どのような部分に留意しながら交通インフラを整備していくべきか――。交通計画・都市開発を専門にしている福岡大学工学部社会デザイン工学科教授の辰巳浩氏に聞いた。
公共交通の先行的な整備が重要
――今年6月に、ウォーターフロント(WF)地区再整備の検討状況についての報告がありましたが、そのなかで交通対策パッケージ案の方向性が5つ示され、車線の増加や地下駐車場の整備などが提示されていました。今後、WFの交通インフラはどのように整えていくべきか、お考えをお聞かせください。
辰巳 まずは前提として、WFのふ頭のなかに車を入れると、その先は行き止まりですから、基本的にそれはやるべきではありません。とはいえ、車をまったく排除して、公共交通だけでこの地区に皆が集まるような再開発というのは、おそらく福岡では難しいでしょう。必要な人は車で来なければなりませんが、皆が車で来てしまうとパンクしてしまいますので、少しでも多くの人に公共交通を利用してもらえるようにすれば、皆がスムーズに来ることのできる状況になると思います。
そうしたときに、車で来られる方をどのように処理するかということを考えると、先ほど言ったように奥の方まで車で行くと袋小路になっていますから、なるべく手前の方で処理すべきです。なので、WFの周辺部あたりに駐車場などを整備して、そこからは徒歩を中心にした移動となるよう考えるでしょう。もちろん状況によっては、エリアのなかを巡回するようなピープルムーバー(People Mover / 人間移動機)が必要となるかもしれませんが、いずれにしても自動車に関してはあまり奥まで入れずに手前で止めるということが重要だと思います。
公共交通に関しては、ここが自動車だけでしか来ることができない地域だと、おそらくビジネスとしては成り立たないと思うんですね。今後、ホテルや商業施設などの誘致を進めていこうと思うと、やはりビジネスとしての採算性が見通せないといけません。そうすると、やはり自動車だけでなく、公共交通で多くの人にやって来てもらうことで、ビジネスが成り立つ状況ができるのではないかと思います。なので、いかに公共交通を先行的に整備するかが重要です。
そのときの手段として、今のところBRT(Bus Rapid Transit / バスを基盤とした大量輸送システム)を入れましょうという話があります。これは今のところ、実際に連節バスを購入して循環線を走らせるところまでは来ていますが、まだ一般の路線バスと対して変わらない状況です。本来のBRTというのは、鉄道と路線バスとの中間のような存在ですから、当然ながら路線バスよりも速く、できれば一般の自動車よりも速く移動できるようなシステムを導入しなければなりません。ここが、今のところなかなか実現が見通せていない部分で、それが課題としてまずあります。
(つづく)
【坂田 憲治】<プロフィール>
辰巳 浩(たつみ・ひろし)
1966年福岡県生まれ。九州大学工学部土木工学科卒業。博士(工学)。九州大学工学部助手、九州産業大学工学部講師、助教授、教授を経て2010年より福岡大学工学部教授を務める。専門は、交通計画・都市計画。関連記事
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