2024年05月07日( 火 )

22年下半期 福岡市の開発動向、中央区の計画戸数が復調(前)

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3区が1,000戸超を計画、エリア間格差が顕著に

 福岡市内に設置された標識情報を基に、市内における2022年下半期(7~12月)の開発動向を追った。その結果、共同住宅(木造を除く)の計画戸数は5,629戸で、22年上半期(1~6月)との比較で144戸減少した。総戸数100戸超の計画が10棟に満たなかった上半期に比べ、下半期は10棟以上計画されたものの、市内7区中4区の計画戸数が上半期比で減少。なかには計画戸数が30戸に満たないエリアもあり、改めてエリア間格差が浮き彫りとなった。上半期に計画戸数が1,000戸を超えたのは博多区と東区の2エリアのみだったが、下半期は中央区の計画数が1,000戸を超えるなど盛り返しを見せ、博多・中央・東の3エリアが1,000戸超えとなった(【表1】参照)。

 22年上半期は計画戸数2,000戸超と独走していた博多区だが、22年下半期は例年通りの規模感に落ち着いた。それでも1位の座を維持しており、九州の玄関口としての立地特性や、市内3位の人口(福岡市推計人口・22年12月1日現在)、博多コネクティッドに端を発した再開発の活性化などを背景としたエリアブランドの堅固さがうかがい知れる。JR博多駅から少し離れた美野島や堅粕でのマンション開発も上半期に続いて散見され、広域展開によるさらなる発展が見込まれる。

 計画戸数が1,000戸超に回復した中央区では、県外企業によるマンション開発が目立った。西鉄天神大牟田線や福岡市地下鉄七隈線などの交通網の充実に加え、スーパーや隠れ家的な飲食店・アパレルショップが集約された生活利便性の高さが人気の薬院では、(株)HIKコーポレーション(滋賀県大津市)の「(仮称)福岡薬院マンション」(RC造・地上10階建、延床面積1,303.53m2、ワンルーム36戸)や、(株)ラ・アトレ(東京都港区)の「(仮称) THE DOORS薬院二丁目プロジェクト」(RC造・地上10階建、延床面積1,580m2、ワンルーム外8戸)などが計画されている。

 共同住宅以外の計画件数は、老人ホームが0件だったこともあり、22年上半期比で減少。延床面積も同25万7,259.82m2減となった。一方で、(株)名給(愛知県名古屋市)の「(仮称)(株)名給九州支店」(S造・地上2階建、延床面積1,607.73m2)や(株)ジェネック(北九州市門司区)の「(仮称)香椎浜倉庫」(S造・地上3階建、延床面積12,812.64m2)など、上半期以上に市外企業による倉庫の計画件数が増加(【表2】参照)しており、市内に物流開発の波が押し寄せてきている。

表2

【博多区】計画戸数市内トップを維持

博多駅前四丁目計画

 22年下半期の計画戸数1,533戸で、上半期に続いて1位となった博多区。注目される物件は、JR博多駅から徒歩15分圏内の場所で進む「(仮称)福岡市博多区博多駅前四丁目計画」。建築物の概要はRC造・地上14階建、延床面積3,538.63m2のワンルーム26戸、ワンルーム外52戸の計78戸。建築主はENEOS不動産(株)(神奈川県横浜市)で、設計者は(株)エヌプラスアーキテクトデザインオフィスとなっている。

 また、福岡市地下鉄箱崎線・呉服町駅から徒歩5分程度の西門蒲鉾本店側では、福岡都市開発(株)の「(仮称)上呉服町368計画」が進む。(株)プレーリー設計(鹿児島市)が設計者のテナント付きのマンションで、建築物の概要はRC造・地上5階建、延床面積873.19m2のワンルーム20戸。

 このほか、(株)マリモ(広島)の「(仮称)アルティザ博多南リバーフロント」(RC造・地上12階建、延床面積978.54m2、ワンルーム30戸、ワンルーム外1戸)や、第一交通産業(株)の「(仮称)アーバンパレス銀天町」(RC造・地上14階建、延床面積7,694.65m2、ワンルーム外104戸)など、県内外の企業により、さまざまな物件開発が計画されている。

上呉服町368計画
上呉服町368計画

【東区】1,000戸超で安定推移

 21年以降、計画戸数が1,000~1,500戸の間で安定推移を見せている東区。22年下半期は1,293戸で上半期の2位から3位へと後退したものの、市内最多の人口32万9,265人(福岡市推計人口・22年12月1日現在)を抱えており、住宅需要は相応に高い。

 注目される物件は、福岡市地下鉄箱崎線・箱崎宮前駅から徒歩5分程度の、松田耳鼻咽喉科病院側で計画されている「(仮称)箱崎2丁目ビル」。建築主は(有)マルヤ不動産商事で、設計者は(株)東部産業。建築物の概要はRC造・地上11階建、延床面積1,120m2のワンルーム外20戸。

 東区ではほかにも、九電不動産(株)の「(仮称)東区千早2丁目マンション」(RC造・地上9階建、延床面積6,918.49m2、ワンルーム外76戸)のほか、穴吹興産(株)による「(仮称)アルファステイツ箱崎公園」(RC造・地上13階建、延床面積6,480m2、ワンルーム外81戸)など、複数の注目物件が計画されている。

箱崎2丁目ビル
箱崎2丁目ビル

【中央区】トップ3に返り咲く

 上半期は計画戸数が583戸にとどまった中央区だが、下半期は1,416戸まで回復。博多区に次ぐ2位となり、計画戸数上位3エリアに返り咲いた。牽引役となったのが、小笹で進められている(株)えんホールディングスの「(仮称)エンクレストガーデン福岡」。店舗付きのマンションで、RC造(一部S造)・地上14階地下1階建、延床面積37,510m2のワンルーム外364戸。

黒門マンション
黒門マンション

 そのほかの注目物件は、福岡市地下鉄空港線・唐人町駅から徒歩5分程度の黒門で計画されている「(仮称)黒門マンション」。建築主は(株)ピー・アイ・シー、設計者は(株)幸建築&環境設計。店舗付きのマンションで、RC造・地上12階建、延床面積1,279.07m2のワンルーム10戸、ワンルーム外11戸の計21戸。すぐ側ではライオンズ黒門解体工事も行われており、跡地の動向が注目される。

 マンション開発用地の取得は依然厳しい状況にあるものの、前述のエンクレストガーデン福岡のほか、積水ハウス(株)の「(仮称)グランドメゾン渡辺通2丁目計画」(RC造一部S造・地上18階建、延床面積1万7,003.65m2、ワンルーム外132戸)など、22年下半期は大型物件が存在感を示した。

ライオンズ黒門解体工事
ライオンズ黒門解体工事

(つづく)

【代 源太朗】

(後)

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