【県議が語る】筑紫エリア未来のまちづくり構想(後)
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福岡県議会議員 原竹 岩海 氏
福岡県議会議員で、立憲民主党、民主県政県議団の原竹岩海氏は現在5期目。選出区の筑紫野市は1月22日に市長選挙の投開票があり、4月には統一地方選挙における県議会議員選挙が実施される。市政と県政が新たな局面を迎えつつあるなか、原竹氏に今後の筑紫野市のまちづくりと、未来を見据えた構想について語ってもらった。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役 児玉 直)
合併構想と未来の課題
──筑紫野市と太宰府市との、将来的な合併構想を訴えておられますね。
原竹 市境の存在は、まちづくりにおいてさまざまな障害になっています。たとえば先ほどの西鉄二日市駅についていえば、太宰府市と筑紫野市の市境に建っています。少し太宰府側に行った場所に西鉄が広大な土地を所有していますが、もしこの土地に急行・特急が停まる駅を新設することができれば、駅に商業施設などの複合施設をつくって駅前の開発につなげることができます。
しかし、その土地が太宰府側にあるため、「二日市駅」のままで移転することはできません。市の境界をなくせば、この問題は解決することができます。このように柔軟に都市計画を立て、さまざまな問題を解決するには、合併が有利であることは明らかなのです。
また、両市はともにすばらしい経済資源をもっています。太宰府の文化と歴史、二日市の温泉、多くの物流倉庫などの誘致が進んでいる筑紫野市を合わせて総合的なまちづくりを行えば、経済・生活・文化などさまざまな面で相乗効果を生み出すことができます。しかし、合併構想が意義をもつのはそればかりでなく、さらに重要な将来的課題に対処するためです。
──重要な将来的課題とは、何でしょう。
原竹 先ほど述べたように、これまで筑紫野市は順調に人口が増えてきました。しかし、2025年ごろをピークに減少に転じると考えられています。
筑紫野市にも少子高齢化の波がやって来ます。これからの都市計画は、この問題を抜きにしては考えられません。それは筑紫野市ばかりでなく、同じくベッドタウンとして発展してきた旧筑紫郡の太宰府市、大野城市、春日市、那珂川市も同様です。この少子高齢化という課題に対処するためには、この5市が合併してトータルに都市計画を推進することが、メリットがあると考えています。
たとえば、重複した施設の統廃合を行うことによって、財政的な余裕が生まれます。そして少子高齢化によって新たに必要となる施設やサービスの拠点を、全5市に対する全体的な視点から効率的に新設することができます。スマートシティの構想も取り入れて、効率的に必要なサービスを提供するための都市計画を立てていく必要があります。少子高齢化で財源も労働力も確保が難しくなる地方自治体にとって、重要なことです。
全5市の合併が最終的な目標ですが、その布石としてまず太宰府市と筑紫野市が合併します。それで合併による効果を示すことができれば、残り3市ともスムーズな合併の道が開けてきます。これは今の段階から率先してビジョンを示していかなければなりません。というのは、将来的に必ずもう一度、国が自治体の合併を促すときが来ます。そのために今から準備することが必要なのです。より良い合併を実現するには、言われてから準備をしていては遅いのです。
人口減少を見据えたスマートシティ構想
──考えられているスマートシティ構想とは、どのようなものですか。
原竹 国が推進するスマートシティ構想とは、ICTなどの新技術を応用した効率的なまちづくり構想ですが、ICTなどの技術的な問題はともかくとして、人口減少を見据えて、最新の技術などをできるだけ利用して、すべての人が必要なサービスにつながることができる都市を実現することは、とても重要であると思います。
人口減少が急速に進む郊外地域では、多くの施設が撤退していくことは避けられません。商業施設だけでなく、病院も学校も、必ずそうなります。それでも市民の皆さんが必要なサービスにつながり続けることができるように、都市計画をしていねばなりません。
たとえば、筑紫野市にはJR、西鉄合わせて9つの駅がありますが、これは交通の利便性のうえで大変有利なことです。郊外地域から撤退した施設も駅の周辺には残るでしょう。あるいはせめて駅の周辺には残ってもらえるように、重要な施設を駅の周囲に集めて集客効果を狙います。
そして駅と地域を結ぶ路線バス網を整備します。それによって郊外地域の住民がサービスにつながる手段を確保します。また、もうすでに民間がやっていることですが、駅の周辺地域に高齢者向けマンションを建設することなどがあります。西鉄二日市駅のすぐ近くに紫駅があります。この近くにある有料老人ホームは西鉄の不動産部がつくったものです。大変需要があるとのことです。
このようなことも踏まえて、自治体はより広く一般市民に対する公共サービスの観点から、将来的な需要を見越して都市計画を考えていかねばなりません。
過去を乗り越えて今こそ未来へ
──筑紫野市を構成している町村と、太宰府市との間では、過去にも合併話があったと聞いています。
原竹 筑紫野市と太宰府市の合併話は、今に始まったことではありません。もともと1950年代に昭和の大合併が進められた際、太宰府町と二日市町などとは合併の寸前まで話が進みました。
ところが、関係町村の議会や職員の間で紛糾したのは新自治体の名称でした。太宰府町は「太宰府」という名を残すことを希望して、他町村は古事記に由来する「筑紫野」という名称を提案しましたが、折り合いがつかず、二日市町、筑紫村、御笠村、山口村、山家村の5町村が合併して筑紫野町が発足しました。太宰府町は水城村と合併して、後に太宰府市になりました。
このときの遺恨が今もまだあります。しかし、そのとき合併話が持ち上がったように、これら旧筑紫郡の市町村が発展的なまちづくりを行うには、合併してトータルで都市計画に取り組むことが自然なんです。この失敗例をむしろ先人たちの経験として広く語り合って、今一度、未来を見て都市計画を考える段階にきています。
これからきたる高齢化社会に備えた都市計画とまちづくりを語り、ともに手を携えていかなければならない。私たち大人にはその責任があります。問題を先取りして取り組むべき政治家はとくにそうですが、市民の皆さんにもそのことを訴えて、皆さんで連携して未来に向かったまちづくりの実現に尽力することが私の使命だと考えています。
(了)
【文・構成:寺村 朋輝】
<プロフィール>
原竹 岩海(はらたけ・いわみ)
1953年7月筑紫野市生まれ。79年久留米大学商学部卒、91年筑紫野市議会議員に当選(3期12年)、2003年福岡県議会議員に当選(現在5期目)。15~16年県議会副議長。立憲民主党。民主県政県議団。
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