2024年05月21日( 火 )

『脊振の自然に魅せられて』脊振山でスキーを楽しむ(前)

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 山を歩いていると、20年前と冬景色が変わってきているのを肌で感じる。沢の水が凍ることも少なく、山でも積雪が少なくなった。

 脊振に雪が降るのは、大陸に近く朝鮮半島からやってきた寒気が脊振山系に吹き上げるからだ。

 気象庁の天気図を見ると、1月24日から26日にかけて西高東低の気圧配置となり、福岡市の最低気温はマイナス2.5から0.6度、最高気温は2.3度から5.5度である。このデータを見て脊振山に雪が降るのを予測した。

 脊振できっと雪が降っているだろうと思った1月29日(日)の天気は曇り。絶好の雪日の29日は用事もあり30日(月)に脊振山へ行くことにした。天気予報は晴れ一時曇り、脊振山では白銀の世界と青空のコントラストが楽しめると思ったのである。

 冬タイヤ装備の四輪駆動の愛車で出かける。いつもの通り、福岡市早良区の山間部の椎原集落から板谷峠に続く県道136号から、曲がりカーブが連続する積雪の自衛隊専用道路を慎重に上がる。

 標高1,000m近くになると自衛隊専用道路の雪も増えてきた。愛車は白銀のなかを快適に走ってくれる。雪の降り積もった路肩に車を停め、ダッシュボードに小型の動画撮影カメラをセットした。ここから5分も走ると航空自衛隊脊振駐屯地のゲートが見えてきた。ここから右折すると脊振山駐車場へ着いた。

 駐車場では車のタイヤ跡はあるが車は1台も駐まっていない。フロントガラス越しに一面の白銀の世界が広がっていた。駐車場の積雪は5㎝ほどであり、風もなく静かな光景だった。

 この日はスキー道具を車に積んできた。駐車場直下のキャンプ場まで100mほどの緩い坂道となっている。この坂でスキーを楽しもうという試みである。坂道には足跡もない、ふかふかの新雪であった。

白銀の脊振山頂駐車場 下がキャンプ場
白銀の脊振山頂駐車場 下がキャンプ場

 車からスキー板を下ろし、ヘルメットを付け、スキー靴を履き入念に準備体操をし、スキーブーツを板にセットする。「ガチっ」とスキー板にブーツをセットした音がする。そして、ふかふかの新雪の坂をゆっくりと滑り降りた。坂道はスキーで滑ったシュプールがついていた。緩い坂であるが、幅が狭いので安全第一の滑りで1回目は滑り終えた。

 滑り終えてスキー板を外し、滑ってきた坂道を、スキー板を担いでは登る。同じことを5回繰り返した。スキー場で初心者のインストラクターを15年ほどやってきたので、坂道でスキー板を担いでの登るのは苦にならない。子どもたちには滑っては登る、滑っては登ることを繰り返し、スキーの楽しさを教えてきた。雪が降り積もった休日には、この坂で子どもたちがソリ遊びをしている。この日は月曜日で子どもたちもおらず、私の専用ゲレンデとなっていた。

 スキーも堪能しスキー板を外していると、男性たちの声がした。

 朝起きたら自宅から脊振が雪で白く見えたので、雪景色を見にきたらしい。筆者が登山靴に履き替え積雪の九州自然歩道を歩き始めると、「ガイドしてください」と付いてきた。50代の男性2人で、自然活動をやっている仲間らしい。

 うち、1人がスマホで動画を撮り始めた。「顔が映っていいですか」と筆者に問う。ヘルメットとサングラスを着けているので、「いいよ」と返事した。

 ここはブナ林、この樹木はタンナサワフタギ、などと説明しながら、雪の遊歩道を歩いた。歩いてきた遊歩道から気象レーダー方面へ300mほど直線が続いている。青空と白銀の道のコントラストで別世界となり、太陽光線が反射して眩しくもあった。

 「ここは自然観察ができる道です」と2人に教えた。春には樹木の白い花で賑わう素敵な道である。2人は初めて見る白銀の世界に大はしゃぎであった。

(つづく)

2023年2月8日
脊振の自然を愛する会
代表 池田友行

(後)

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