2024年04月26日( 金 )

3Dマップのさらなる進化を求めて目指すのは「ストーリーの創造」(前)

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(株)創造技術

工事現場の変化を3D動画化

 福岡を拠点に、九州から関西までをカバーする土木・橋梁工事設計のプロ集団、(株)創造技術。本来の設計業務と並行して、技術を駆使し、工事現場の住民へ施工工事のビフォー(施行前)、アフター(施工後)を3D化して説明することできる3Dマップサービスを提供している。この付加価値によって同社に注目する企業が増え、事業規模も拡大した。現在社員は、CADオペレーターなどパート社員を含めて17名。事務所フロアも増設し、設計技術者たちが業務に携わりやすいゆとりある環境を整えた。

 3Dマップサービスは、代表取締役の松藤忠大氏が本来業務の土木・橋梁設計技術者として業務に携わっていた頃から大切にしてきた自信作。3D動画と設計技術を組み合わせる構想を模索しはじめた発端は、工事を行うにあたって行われる事前説明会での地域住民の反応からだった。写真などを用いた説明は、専門家には理解されても地域住民にはわかりづらいことばかり。実際に工事が行われる間、環境がどのように変化し、生活にどのような影響をおよぼすのか、イメージできなければ不安は募る。つくり手側の視点では気づけない住民たちの戸惑いに着眼できたのは、松藤代表が常に「環境が変わることによって、そこに住む人々がどのような気持ちを抱くか」を考えていたからこそできたことであろう。

 昨今ではさまざまな3Dソフトが発売されているが、同社が提案する3Dマップサービスは土木設計技術のプロでしかできないものだ。同社が住民に示すのは、実際に工事を始め、完了するまでの、具体的な設計図の再現だ。他企業では、設計はできても3D技術に欠け、3D技術に長けていても本物の橋梁や道路の設計図は描けない。両方を兼ね備えるのは容易ではない。

広域を俯瞰して全体像を伝える

 「そもそも土木設計というものは、どこまで理解されているのでしょう」と松藤代表は語る。土木は建築工事とは基準が違い、力学的な考え方も異なる。また土木は地面を掘り下げる工事が主。地面の下は深く予想がつかないのでさまざまな場合を想定しながら最悪のパターンにも備えられるものが必要だ。地盤や土地のことを知らないと設計できない。

 しかも工事は広域におよぶ。例えば、1つの建築物であれば、立地敷地内に1つの箱ものが建つ。工事の始まりから終わりまで、作業はほぼ敷地内で完結する。しかし橋や道路という土木建造物は、地域のある地点から他の地点までを結ぶもの。地域住民にとって全体像が見えにくい。それでいて通勤、通学、物資の運搬、日常生活のありとあらゆるところで生活に影響が生じることが想定される。

 工事の間、環境がどのように変化していくのか、全体像としてわかりやすく説明できなければ、住民たちを安心させることはできない。橋を架け替えるのであれば、その間仮設する橋の設計も考える必要がある。設計にはさまざまな視点が必要であり、複数の技術者が協力しあう。大変な労力が必要だが、完成した時の達成感はひとしおだ。

 実際に2本の作品を見せてもらった。1つは橋の架け替え工事。まずは3D測量したものを元に動画をリアルに再現。その後、工事の間、現場を回避するようなかたちで仮の橋を架け、橋を架け替えていき、完了するまでを俯瞰して再現してみせる。

 もう1つは、漁港を整備する計画を説明するもので、漁港までの道路工事と漁港工事を併せて動画化した。海岸の風景を夕陽にし、美しさの面でも興味を引かせ、雨や雪など気象を場面に取り入れた。住民はもちろん、事前説明会を主催した役場の担当者からもわかりやすいと好評を博した。「専門家の人が見てもわかりやすく合意を得られる3Dマップづくりを目指しています」と松藤代表。その質は高く3D動画のコンテストでは常連入賞者として名が知られている。

(つづく)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:松藤 忠大
所在地:福岡市南区塩原3-8-28 ケイエスビル2F
設 立:1991年3月
資本金:500万円
TEL:092-554-6635

<プロフィール>
matuhuji_pr松藤 忠大
1991年、(株)創造技術を設立。当初より最新テクノロジーを用いてのサービス展開を視野に入れ、基本となるプログラミングを習得。慰霊の旅をライフワークとしており、遺跡周辺地域を3Dマッピング技術を用いて記録に残すことも考案中。

 
(後)

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