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2017年01月26日 09:51

中国経済新聞に学ぶ~アサヒ農業事業はなぜ中国で失敗したのか(前)

 2006年、アサヒビールと住友化学、伊藤忠商事の3社が、中国・山東省の莱陽市に「朝日緑源社」を設立し、農業生産に携わることになった。その年、朝日緑源は乳牛の飼養、トウモロコシ、小麦、イチゴなどの栽培を目的として、100haもの耕地を20年契約で借りている。しかし、それからわずか10年で、アサヒビールがこの会社を売却し、中国の農業事業から撤退するというニュースが伝わってきた。
 このニュースは中国社会を震かんさせ、また中国メディアの注目も集めた。かつて中国人が抱いた「アサヒ農業工場」のモデルが中国の農業革命に希望をもたらすという望みが潰えたからだ。
 「アサヒ農業工場」はなぜ中国から撤退することになったのだろうか?

「天価」の試験

komugi 10年前、朝日グループは中国である農業試験を開始した。
 これは中国初の外国企業による単独投資で経営される農場であり、そしてこの日本ビール業界の大御所が農業に足を踏み入れて初めての試みでもあった。

 10年前、中国農業の規模は大きかったが、水準は非常に遅れていた。そんななか、アサヒグループは率先して日本の先進的な農業理念、技術、管理及び運営モデルを導入してハイエンド農業のテンプレートを作り出した。壮大な計画を一度に設定し、この広い中国市場を独占しようと考えたのだ。

 「当時、アサヒグループはまず山東省の煙台市でビール産業の投資を行っていた。我々が日本の先進的な農業理念と技術を導入することで、中国の農業生産の問題を解決する手助けになることを山東省政府は望んでいた。」アサヒグループが中国農業へ参入したきっかけについて、孫英豪の紹介によれば、2006年にアサヒグループは煙台市蓬莱陽・沐浴店鎮に手本となる農業ベースを建設している。

 当時、日本の輸入食品に対する基準は非常に厳しく、「安全の砦」を築いていた。日本への農産物輸出が多い山東省の中でも、莱陽は中国の対日輸出トップの県である。

 当時の山東省委員会書記・張高麗(現在の中国共産党中央政治局常務委員)は、アサヒグループが日本の先進的な技術を利用して山東省で手本となる農業プロジェクトを展開することで、山東省の農産物の質の改善、化学肥料を使い続けた土壌の改善、農産物の輸出規模拡大、そして農家の収入増に寄与することを期待していた。

 しかし、アサヒグループの主力業務はソフトドリンクであって、農業生産の経験はない。2006年5月、アサヒビールと住友化学、伊藤忠商事の3社が共同で日本の単独投資による「朝日緑源」を設立することになった。野菜、果物、牛乳などのハイエンド農産物の生産・加工・販売を行う企業で総投資額は15億円にのぼる。「世界500強」に入るこの3社は、それぞれの強みを持っていた。株式の73%を保有するアサヒビールは農業技術の導入と日常的な経営管理を行う。17%の住友化学株式会は朝日緑源に農業物資や材料、農薬などを提供する。そして伊藤忠商事は日本最大の流通企業の1つとして、流通ルート関連のサポートを担当する。

 2006年、中国の農地はいまだ大きな変化を迎えておらず、農業生産はほぼ家庭ごとの分散経営で、一部の地区では未だに牛を用いた耕作方式を使っていた。それに比べて、朝日緑源の「農業工場」は新しい姿であった。

 緑源管理部のある人物が記者に語ったところによれば、企業の借りた土地は100ha、借入期間は20年で、栽培していたのは苺、スイートコーン、プチトマト、アスパラ、レタスなどの野菜だ。種、栽培技術、管理方法はいずれも日本から導入している。

 この外資プロジェクトは神秘的に見えた。100haの土地はフェンスで仕切られ、政府の関連部署及び企業の許可がなければ、入ることは許されないのだ。

 これは外の人間には理解されない農業工場であった。借りた土地に汚染が検出された際、朝日緑源は5年間かけて土地作りを行うことを決定したため、付近の農家で育てているトウモロコシよりも高く雑草が生い茂り。現地の農民から「農業がわかっていない」と皮肉られたこともある。普通の農家は10mほどの井戸を掘ってかんがいを行うが、この企業は汚染を防ぐために200mを超える深さの井戸を掘り、「レアアース目当て」の疑惑をかけられたこともある。栽培の家庭で作物に虫がついても農薬を使用せず、虫害が激化して付近の農地にまで影響し、賠償を要求されたことも一度ではない。朝日緑源は「飼育員は乳牛に触れてはいけない」、「牛に向かって大声を出してはいけない」といった常軌を逸した規定まで明文化しはじめた。また牝牛が死んだ際には、社員たちが黙祷を捧げることもあった。出産後の牝牛には食欲を増進するために味噌汁を振る舞ったという。

 農場全体が日本の循環型農業の理念に基づいて運営されているため、栽培したトウモロコシの茎は乳牛の飼料として利用し、乳牛の糞便は農作物の肥料にすることで、土壌の質を高め、農作物の品質を向上させてきた。生産プロセス全体で農薬も化学肥料も使用しなかった。

 そして、この神秘的な日本企業から生まれた農作物の質は人々を瞠目させることになった。

(つづく)


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