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2017年03月22日 16:17

DeNA問題が映し出した「売却屋」ベンチャー起業家の存在

 医療などの記事をまとめたキュレーション(まとめ)サイトに不正確な内容があった問題を調べていた第三者委員会の報告を受け、(株)ディー・エヌ・エー(DeNA)は3月13日、関係者の処分を発表した。創業者の南場智子会長が代表取締役に復帰、守安功・最高経営責任者(CEO)は月額報酬50%を6カ月間返上。サイト事業の責任者だった村田マリ執行役員ら20人超を処分した。この問題でもっとも注目を集めたのが村田マリ氏である。「売却屋」と呼ばれるニュータイプの女性起業家だったからだ。

実績のない2社を50億円で買収

 DeNAは2016年3月期までの3年間で営業利益は4分の1に減った。売上高の7割超を占めるゲーム事業の縮小が響いたためだ。そこで新規事業に注力する。

 14年10月1日、DeNAは、キュレーション(まとめ)サービスのベンチャー2社を50億円で買収したと発表した。キュレーションとはインターネット上の情報を、ある特定のテーマや切り口で、読みやすくまとめ、編集・共有・公開するウェブサイトのこと。記事を自分で探す時間がない人や、特定分野の情報だけを知りたい人に広がっている。既存事業が伸び悩むなか、新たな事業に取り組むため、この2社を買収した。

 iemo(イエモ)(株)(村田マリ氏が運営)を15億円、(株)ペロリ(中川綾太郎氏が運営)を35億円で買収。13年12月の設立のイエモは、住まい・インテリア分野、12年8月設立のペロリは女性向けファッションサイト「MERY」に特化している。

 2社合算で社員数は20人にもかかわらず、買収金額は総額50億円と、DeNAにとって国内では初となる大型案件だった。18年3月期にはサイト事業の営業利益は数10億円を見込んでいた。だが、医療情報サイト「WELQ(ウェルク)」で医学的に根拠のない記事が多数掲載されたことが分かり、第三者委員会が調査に乗り出した。

立ち上げたばかりのネット企業を売り込む

 『週刊文春』(17年1月5日・12日号)は「『WELQ問題』責任者・村田マリ氏とDeNA社長の密接な関係」と報じた。

〈IT企業関係者が守安社長と村田氏の関係についてこう証言する。
 「2014年7月の夜、福岡で行われたイベントの酒席で、守安社長と村マリ(村田氏の愛称)が一緒になったんです。(中略)守安社長に、村マリは『iemo』の凄さを売り込んでいた。その流れで、なんと守安社長にキスしたのです。守安社長はデレデレでした」
 それから数カ月後、村田氏は「iemo」と、ペロリ社が運営するサイト「MERY」をセットで50億円という高値でDeNAに売却、自身もDeNAに入社したのである。〉

 村田氏が色仕掛けで運営するサイト「イエモ」を売り込んだという内容だ。この記事を読んで驚いたのは、ベンチャー起業家像の変容だ。ネット企業を立ち上げたが、軌道に乗らず、大手IT企業に売却することは珍しくない。ところが、村田氏は転売目的でネット企業を立ち上げていた。「売却屋」と呼ばれるニュータイプのベンチャー起業家だった。

転売目的でベンチャー企業を立ち上げる

 興味が湧いて、村田マリ氏(39)について調べてみた。早稲田大学第二文学部を卒業。ネット広告会社の(株)サイバーエージェントに4年務めた後、27歳でウェブ制作会社を設立。ソーシャルゲーム事業に転換させ、12年に(株)gumiに売却した。

 この間、投資家の本間真彦氏と結婚。シンガポールに移住して日本でのビジネスを続けた。恋愛情報サイトを立ち上げて(株)チャンスイットに売却。13年12月にiemoを設立したが、1年もたたない14年10月に、iemoをDeNAに売却。村田氏はDeNAの執行役員に就任した。女性ベンチャー起業家の立身出世物語をメディアが放っておくわけがない。

 村田氏は、シリアルアントレプレナー(連続起業家)のスーパースターになり、『AERA』(2015年6月1日号)が特集した「日本を変える最強の人脈」に選ばれた。

 村田氏は、新しいアイデアのネットビジネスを立ち上げ、ネット関連の大手や同業者に売却し、リターンを得るビジネスモデルを描く。ベンチャー起業家というより、「転売」を目的とした投資家の行動だ。

社内から買収に懸念が出ていた

 第三者委員会の調査報告書は、最大2万本超の記事で著作権を侵害した可能性があると指摘し、事業拡大だけを目的とした企業体質を厳しく批判した。この一連の問題の起点と言える買収に際し、DeNA戦略投資推進室の室員が懸念を示していたことを明らかにした。調査報告書のそのくだりを引用する。

〈戦略投資推進室のM氏は、iemo社の買収について、(1)デューディリジェンス(引用者注:資産価値の査定)やバリュエーション(同:事業の経済性評価)を実施していない段階での15億円という買収価格の妥当性、(2)法務デューディリジェンスの過程で指摘された画像に関する著作権侵害のリスクがある中で、iemo社のサービスをDeNA内で横展開することのリスク、(3)A氏(同:村田マリ氏)がシンガポールに滞在したままiemo社買収後のオペレーションを行うことのPMI(同:買収後の統合プロセス)上のリスクについて、守安氏に懸念を示していた。

 しかしながら、(1)守安氏は、既にA氏(村田氏)と話していた買収価格15億円を減額することはなく、(2)買収後、iemoのサービスはキュレーション事業として横展開され、(3)A氏(村田氏)は、買収後もシンガポール在住のまま執務することとなった。〉

 創業者の南場智子氏からは、〈(1)買収直後に執行役員へ起用することについての社内の公平感、納得感が得られるか、(2)シンガポールにおいて勤務しながら執行役員として職務を全うできるかという懸念が示された。〉

 しかし、これらの警告に守安社長は耳を傾けようとはしなかった。守安氏はキュレーション事業をゲームに次ぐ「新たな収益の柱」とすることを決意していたからだ。14年10月1日、村田マリ氏はDeNAの執行役員に就任。メディア統括部長としてキュレーション事業のトップになった。

案の定だ。「M氏」が指摘していたリスク、特に著作権問題が顕在化し、大騒動になった。にもかかわらず、村田氏は日本に来て事業責任者として記者会見で説明することはなかった。3月12日、辞表を提出したという。“敵前逃亡”という恨み節が聞こえてくる。村田氏はタダ同然のiemoを売却して15億円を手にした。これぞ「売却屋」ベンチャー起業家の醍醐味だろう。

【森村 和男】

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